■容量は250〜310ml
シェラカップ(写真中央)の容量は深さによって微妙に異なり250〜310ml。
1980年代、シェラカップの容量に不満をもったバックパッカーが、縁の直径は同じで容量1パイント(約500ml)のシェラカップを作り、ロッキーカップと名付けました。シェラカップ同様、ロッキーカップもオマージュ製品(写真左)が広まっていて、サイズは本家ロッキーカップとほぼ同サイズ。
現在は、シェラカップ、ロッキーカップ、そしてビッグサイズのシェラカップ(写真右、約630ml)ほかいろいろな容量のものでにぎわっています。
■食器として優秀
浅めの広口ですから、調味料や下ごしらえした食材の一時置き場として、そして取り皿としてかなり優秀です。
バターをちょっと溶かしたいときは、わざわざフライパンを使わなくてもシェラカップごと焚き火の脇に置くだけ。スープの温め直しだってできますよ。
ただし、温め直しのときはゴトクのサイズに注意。シェラカップは底が小さいので小型ストーブは問題ないのですが、大鍋対応のストーブではゴトクに載せられない場合があります。
そして、広口なのでドリッパーを載せられないことも。そんなときは箸や小枝をカップの縁に渡して対応しましょう。
ちなみに、取り皿、食器としては優秀なシェラカップですが、コーヒーは冷めやすく、勢いよく持ち上げるとこぼしやすいなど「カップ」としてはちょっと使いづらい面もあります。
■炊飯の仕方は2種類
米0.5合であれば、炊飯も可能。ちょっとだけごはんを食べたいソロキャンパー向きです。
シェラカップはふたがないので別のシェラカップをふた代わりにして、その上に石を載せて炊きます。シェラカップが1個しかない場合は、アルミホイルで代用。
通常、1〜2合は沸騰後弱火12分程度で炊き上がりますが、シェラカップの場合沸騰後、ごく弱火で6分程度。どうしてもふきこぼれるので硬めのごはんになりましたが十分おいしい!
ふきこぼれが嫌なら、ふたをせずパエリア風に米を煮るという方法もあります。
よく吸水させた米と、同量の水を入れて沸騰させます。沸騰したら中火のまま加熱し、水分が少なくなったら湯を加えてちょうどいいかたさになるまで加熱します。ねばりが出るのであまりいじりたくありませんが、どうも一部が芯メシになりそうだったので途中で何度か米全体を混ぜたところ、ムラなく加熱できました。
* * *
そもそもシエラクラブは、ジョン・ミューアが1892年に発足した団体です。ジョン・ミューアは、アメリカ・ヨセミテ渓谷からマウントホイットニーにかけて伸びる約340kmの世界屈指の人気トレイル、ジョン・ミューア・トレイルに名が残る、自然保護の父でもあります。そう、シエラカップには優に100年を超す歴史があるということです。
カップとしては微妙な面もありますが、食器、鍋などマルチに使える道具は、まさにアウトドア向き。シンプルな美しさに加え、ハンドルや容量など各社で工夫を凝らし、今なお新しい工夫が生まれている懐の深さも持ち合わせています。
ひとつ持っているのに、ふたつ、みっつ……と増えていくのも納得です。
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取材・文/大森弘恵
大森弘恵|フリーランスのライター、編集者。記事のテーマはアウトドア、旅行、ときどき料理。Twitter