【ようこそ、オーディオの“沼”へ】
世の中にはさまざまなイヤホン&ヘッドホンが溢れ返っています。技術やデザインは日々更新され、その選択肢は最早無限に等しいと言っても過言ではありません。これから新しく購入しようと思った際、何を選ぶべきか悩む人も多いはずです。そこでひとつの指標として、音楽のプロ=アーティストたちに取材を敢行しました。果たして彼らは何を愛用し、そしてなぜそのアイテムを使っているのでしょうか。今回出演するのは、かせきさいだぁさん。愛用のイヤホン・ヘッドホン、さらに音楽に対する姿勢などについて伺いました。
■安いモノを選ぶ、その理由とは?
かせきさいだぁ/9月26日生まれ、静岡県出身。桑沢デザイン研究所卒業。1990年から1993年までHIP-HOPユニット「TONEPAYS」として活動後、1994年にソロで「かせきさいだぁ(当時の表記は『かせきさいだぁ≡』)」をスタート。ラッパーの枠を超え、文筆業やイラスト業など多岐にわたり活躍中。X:@kasekicider_OA、Instagram:@kasekicider、公式HP:http://kasekicider.com/
日本のHIP-HOP黎明期、最もカオスで楽しかった1990年台に活動を開始し、現在までシーンを支え続けているうちのひとり、かせきさいだぁさん。ラッパーとしてだけではなくイラストや文筆などでも活躍し、マルチに才能を発揮し続けているかせきさいだぁさんが愛用しているイヤホン・ヘッドホンとは? なぜ選んだか、さらには自身の音楽制作の際に気を付けていることなど、あらゆることを語ってもらっています。
――まず、かせきさいだぁさんが愛用しているイヤホン・ヘッドホンから伺いたいのですが、3台ありますね?
かせきさいだぁ(以下、かせき):そうです、イヤホン2つとヘッドホン1つ。1番長く使っているのがゼンハイザーで、確か購入当時は2~3000円くらいだったと思います。15年くらい前かな。これはね、TOKYO No.1 SOUL SETの川辺(ヒロシ)くんに教えてもらったんです。「かせき、これ安いのにすごく良いよ、十分だよ」って。ぼくも気に入ってずっと使い続けているんですけど、このモデルがもうなくなっちゃったみたいで。それで同じくらいのイヤホンを探していたところに、これまたほかのミュージシャンがオーディオテクニカも良いよって教えてくれて。
▲愛用中のゼンハイザーとオーディオテクニカのイヤホン。いずれも2、3000円程で購入
――手に取りやすい価格帯のイヤホンですよね。
かせき:仕事で地方に行くことも多いんですけど、うっかり忘れることもあるじゃないですか。そんなとき、これくらいの価格帯のアイテムって大抵、駅近くの量販店に行けば買えるんで。しかも結構イヤホンをポケットに入れたまま洗濯しちゃったりするんですよね。それで乾かして、また使ってみたいな。
――イヤホン、洗濯して壊れないんですか?
かせき:それが壊れないんですよ。もうダメだ、と思ってもしっかりちゃんと乾かしたら全然問題ない。全然、平気。強者のイヤホンと呼んでいますよ(笑)。

――確かにそれは強者ですね。最初に購入したきっかけは教えてもらったからとのことですが、使い続けている理由は何でしょうか?
かせき:やっぱり若い頃は1、2万円のヘッドホンを使っていたんですけど、外に持って出るとコードをどこかに引っ掛けて断線させてしまったりすることもあるじゃないですか。こんなに高いモノが一瞬で壊れてしまった、と毎回ショックだったんですよね。それで安くてそこそこ音が良ければ、まあいいかと思うようになったというか。
あと、実は20代の頃、ナムコ(現在のバンダイナムコエンターテインメントの前身)ってゲーム会社で働いていたんですよ。ゲームに出てくるドット絵を描く仕事をしていて、それで土日はラップやってデビューしたあとは退社したんですけど。
▲自宅でもこのゴジラにイヤホン・ヘッドホンを掛けているそう
――そうだったんですね。でも、それとイヤホンに関係が?
かせき:5年くらいドット絵を描く仕事をしていたんですけど、当時すごく性能が良いPCを使っていて。当然、とてもきれいにぼくが描いたドット絵が映るんですよね。それで確認用のきれいなモニターで見て、みたいな感じだったんですけど上司に「ブラウン管だともっと色が滲むからこんなにきれいには映らないから」って言われて。それでブラウン管のテレビで見てみたら、本当だ、全然色が違うってなって。とにかく色が滲んでぼやけちゃう。わざとぼやけさせて色を増やして見せる、みたいな技もあったりはするんですけど。
90年代初頭って大体ゲームをやっている世代って子供で。もう使わなくなったお古のボロボロのテレビでプレーしてたりするんですよね。だから、すごいボロいブラウン管のテレビであえてチェックしたりもしましたね。
そしてミュージシャンとして活動し始めたら、今度は当然スタジオで良い音でチェックしてひとまず曲を完成させますよね。それでOKってなるわけではなく、今度は一度カセットテープに録音するんです。それで当時はまだカーオーディオってカセットが多かったので、友達のクルマに乗せてもらって聴いてみて。みんなが聴く環境でどんな風に聴こえているのかをチェックしたかったんですよ。それでちょっと低音がうるさいかな、とか高音がキツいなとか調整して。あえてヘボい環境でチェックするっていう。
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