■“文具離れ”は大人に起こったこと
現在は文具王・高畑さんや古川さん、『すごい文房具』『グッとくる文房具』を手掛けた編集者など少人数で運営されているという「OKB48」。全国各地の文具店などで開催され“握手会”と呼ばれる書き比べて投票できるイベントやWeb投票(票の比重は握手会より低く設定)などでボールペンの1位が決められ、その結果はWebサイトのほか、ラジオ「アフター6ジャンクション2」内でも発表されています。ではこの握手会にはどんな人が参加しているのでしょうか。
ーー近年はデジタル化が進み、文房具離れが進んでいるように感じます。そんな中、握手会に訪れ書き比べる人というのは、やっぱり文房具好きになるのでしょうか。
古川 参加者には3パターンあると思っています。ひとつは「アフター6ジャンクション2」のリスナーさん。番組内で告知することもあるので。もうひとつはやはり文房具ファンです。2010年に『すごい文房具』が発売されて、文房具好きが実はめちゃくちゃいたというのが可視化された気がします。当時は奇異な視線で見られていた存在が、「文房具好きです、趣味です」と言っても違和感を持たれなくなった。
▲文房具好きの中でもかなりマニアックな古川さん
今や文具女子博などの文房具の展示会や即売会はたくさん人が集まるイベントですから。そして3つめが学生さんですね。握手会は学園祭のイベントとしても行われることがあるので。
ーーたしかに学生さんは現役文房具ユーザーですしね。
古川 そうなんです。学生さんはものすごい熱意を持って握手会に参加してくれるんですよ。塾や高校、大学の学園祭とかでやったら、それなりに票は集まるし、現役世代の中高生もボールペンは使っているので。
ーーえ、中学生や高校生もボールペンって使うんですか?
古川 中高生も普通に使ってますよ。なんなら小学生も結構使っていたりします。
ーーそうなんだ、知りませんでした。
古川 色つけたりとかで使っているのではないかと。
ーーGIGAスクール構想でデジタル化が進んでいるとはいえ、まだまだ学生さんにとって文房具は、なくてはならないものですよね。
古川 デジタル化が急速に進み、一度“文具離れ”みたいなものはあったと思います。ただし、それって大人に起こったことなんですよね。そして学生さんのように普段から使っていると愛着も湧く。だから「文房具が趣味です」という学生さんはおそらく以前と比べて圧倒的に増えたと思います。SNSやYouTubeでは「勉強垢」というものがあり、自分の勉強環境や文房具を紹介したり解説したりする子も結構いますよ。
ーーYouTubeで高級シャープペンを紹介しているショート動画を観たことあります。
古川 おそらくこれまでで一番活況なんじゃないかなと思います。デジタル機器が浸透したことで、アナログの道具や手書きの良さに向き合うフェーズに入ったのではないでしょうか。アナログレコードが復権した時のような感じです。サブスクとCDとレコード、実際の本と電子書籍など、ソフト界隈で起こったことがすべて文房具というハードの世界でも起こっている。なんなら今、手書きの手帳は復権の兆しがあるんです。
ーー手帳、売れてるんですね。
古川 売り上げが伸びているって話もあります。デジタルが主流になったからこそ、あえて文房具、あえてアナログな道具を使いたいという人たちはいます。デジタルから切り替えるために、手書きの時間や、手で何か作業する時間を残したほうがいいという人たちがいて、ペンやノート、手帳を選んでいる。そうすると、ある種ホビーとして文房具を使うので、多少値が張るものでも買うんです。
▲普段からノートを複数持ち歩き使っている古川さん
ーーそして所有欲が満たされたり満足感を得られたりする。まさにホビーですね。
古川 だから文房具の高級化も進んでいて、それが学生にも起こっている。高級シャープペンはまさにその流れかもしれません。
ーーでは文房具はブームが終わって、寂しい状況ではまったくない、と。
古川 今はもう、線引きができた、身の丈がちゃんと分かった、という気がします。落ちて上がったというのではなく、ちょうどいいところに落ち着いている感じですね。
ーーとはいえ、原材料費の高騰や少子化など、今後もいろいろ大変そうではあります。
古川 たしかに安くてたくさん買えるというのは、ホビーとして見た場合、すごく有利ではありました。安くて高品質は日本のボールペンの良さではありますから。ただ少子化については、子どもひとりにかけられる単価が上がってくるという面もあるのかもしれません。男子学生を中心とした高級シャープペン界の活況はすごいですから。メカニカルなものって男子学生は好きですしね。それに、勉強に使える道具という意味では親の出資のハードルも下がりますし。
ーーたしかに!
古川 つくづくすごい時代になったと思います。文具イベントで男子中学生がオープン待ちしてるんですよ。これまで文房具ファンって女性が多かったんですが、今までほとんどいなかった男子中学生や高校生のグループが順番待ちして、始まったらお目当ての限定シャープペンに飛びつく。「こういう子たちって10年前にはいなかったな」って。大人のニッチな趣味だったものが、今は若い子たちのホビーになっているんだなというのは実感しています。




























