レーサーレプリカ世代におすすめ! ヤマハの新型「MT-09」は軽快な運動性が大きな魅力です

新設計のフレームはCFアルミダイキャスト製で、リアフレーム・リアアームまで含めて約2.3kgの軽量化を達成。剛性バランスを最適化する過程で、前モデルに比べて横剛性は約50%アップしているとのこと。レーサーレプリカを知る世代なら、形状を見てFZRシリーズなどに採用されていたデルタボックスフレームに似ていることにグッと来るかもしれません。

初めて目にした人が違和感をおぼえそうなのはマフラー。一瞬「排気口はどこ?」と探してしまいました。答えは、膨張室の下に2つ穴が開けられています。

サイレンサーが伸びていない形状を採用することで、マスの集中化と約1.7kgの軽量化を実現。左右シンメトリーな排気口とすることで、路面に反射した排気音が左右の耳に均等に届くという効果もあるそう。楽器メーカーをルーツに持ち、昔から排気音にもこだわってきたヤマハらしい工夫といえるでしょう。

足回りの構成も一新されています。インナーチューブ径41mmの倒立式フロントフォークはマウント位置が下げられ、従来に比べてピッチングを抑えた設定に。前モデルまではサスペンションを大きくストロークさせて曲がるようなスーパーモタード的セッティングでしたが、新型では通常のロードスポーツに近い動き方になっています。また、フロントに伸び・圧双方の減衰調整機構が追加されているのもうれしい進化です。

 

■刺激的な加速はそのままに安心感と軽快感が大きく向上

走らせてみると、フレームを新設計とした効果をすぐに感じられました。従来からの最大の魅力である加速力はさらに磨き上げられ、軽く右手をひねるだけで俊敏な加速を味わえますが、その際の安心感が段違いに高められています。試乗はサーキットと公道で行いましたが、従来モデルにあった乗り手を選ぶ感じは薄れ、安心してアクセルを開けられました。

もうひとつ感じたのが、軽快感が向上していること。コーナーで車体をバンクさせたり、左右に切り返す挙動が明らかに軽くなっています。車重が189kgと前モデルから4kg軽量化されていますが、それ以上に軽快感はアップしていました。これは重量物を中央に集めるマスの集中化が図られていることと、新開発の“SPINFORGED”ホイールが効いているようです。

ヤマハ独自開発の工法で、鋳造ホイールでありながら鍛造ホイールに匹敵する強度と靭性のバランスを実現した“SPINFORGED”ホイール。前後で約700gの軽量化を果たしているほか、ホイールの円周に近いリム部分を特に薄く・軽く作ることで慣性モーメントを約11%低減しています。

正直なところ、700g程度でどのくらい変わるのか? と思っていましたが、乗ってみると効果は明らか。試乗後に回転させた状態で左右に傾ける実験を体験させてもらいましたが、新しいホイールは明確に軽い力で傾けられることを実感させられました。

従来モデルより「MT-09」の魅力は、刺激的な加速感と、中型バイクかと思えるほど軽快な運動性能でしたが、新型ではその魅力を磨き上げただけでなく、安心してアクセルを開けられる特性となっていました。この安心感の高さには電子制御機構の進化も大きく貢献しています。

6軸の角速度・加速度センサーを備え、トラクションコントロール機構やブレーキコントロール機構がバンク角や加速度に応じて効くようになっているので、コーナーリング中やアプローチでの安心感が飛躍的に向上。サーキット試乗ではコーナー入口でリアタイヤを少し滑らせてしまったりもしましたが、何事もなかったかのように走り続けられたことには驚きました。全方位的に進化し、魅力を増しながら110万円(税込)という価格は非常にお得感が高いと感じます。

 

【次ページ】SPに乗ることでスタンダードモデルの完成度の高さを感じた

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