■グリルプレートができるまで

加藤さん:私どもは、基本的にはいろんな航空機とか自動車関係のお客様からオーダーをいただいてモノづくりをするという会社で、皆さんの目に届くためにの商品というのは基本的にはなかったんですね。でも、そういったものづくりの中から、弊社ならではの技術を活かして自社のオリジナルの商品を作れないかという思いがあったのです。
そんなオリジナルの商品を作っていきたいという思いで立ち上げたのがこの「フィールドメイク」です。うちの社員数名がキャンプが好きで、キャンプにまつわる商品を作っていきたいということになり、まず第1弾を作ったわけです。
フィールドメイクというブランドの名前は、会社の2つの頭文字F(utaba)M(odel)は使うということで、Field Makeとなりました。ちなみにフィールドとは、キャンプフィールドというだけでなく、さまざまなフィールドのモノづくりをしていくという思いが込められているのです。
&GP:今回作られた「グリルプレート」にはどんな特性があるんのでしょうか? また聞き馴染みのないカーボングラファイトという材料についても教えてください。
加藤さん:まずグリルプレートの元の素材であるカーボングラファイトですが、日本語でいうところの黒鉛です。鉛筆の芯をイメージしてもらったらいいと思うんですけど、簡単にいうと、カーボン(原子番号6元素記号C=炭素)を高温で熱して不純物を取りさった、純度99.9%の炭になります。

加藤さん:これを加工するわけですが、カーボングラファイトの特性として鉄よりも軽くて、熱伝導率が高くて、遠赤外線効果が期待でき、炭で焼いているようなものになります。しかもカーボンは基本的に錆びないので、いわゆる鉄板を使う際に必要なシーズニングというのが不要です。また難しい話になりますが、熱膨張係数が低いため、熱による反り、歪み変形が少ないというのもメリットに挙げられます。
▲熱伝導率が高いため、グリルプレートに氷を置くと、グリルプレート自体の温度でみるみる氷が溶けていく。つまり隅々まで熱が行き渡り、隅でも食材を焼けるのだ
加藤さん:ちなみに熱伝導というと温かいものばかりをイメージされると思うんですけど、熱は温かい方から冷たい方に伝わります。なのでグリルプレートの上に氷を置いても、カーボン自体の温度で溶けますよ。
&GP:氷の溶け具合は想像以上に早いですね。これは実際に見てみないと分からないですね。
■グリルプレートに活かされた技術と苦労した点


&GP:カーボングラファイトを使ってグリルプレートを開発するにあたり、苦労した点はどんなところですか?
加藤さん:カーボングラファイトはまず3D CADで設計します。その上でマシニングセンタという3軸方向に動かせる切削機械で削っていくのですが、加工面よりもデザイン面で苦労しましたね。
▲切削加工を行うマシニングセンタ
▲元となるカーボンプレートをセットすると自動で切削が行われる
▲切削が完了した状態。ここから仕上げ加工が施される
加藤さん:アウトドアで使われている鉄板のグリルプレートは裏にまったく溝が入っておらず、五徳に置いたときに滑っちゃうんです。これを解消するために放射状の溝をデザインしたのですが、特許を調べると、福井県の金属加工の会社さんが先に登録特許申請をされていたんです。もうそれを見てすぐに電話をして「何とかOKいただけませんか?」ということでお願いしました。
結果、快諾いただきロイヤリティ契約という形でホルダーデザインが実現したというという苦労はありましたね。この溝も何度か調整しました。もう少し溝を深くした方が安定するとか、溝の幅を変えた方がいろんな五徳に合うとか。ちなみにこの溝には熱の伝わり方を加速させるという機能面もあるのです。

あとは表面にある油の溜まる溝も、どれぐらいの深さがちょうどいいのか試行錯誤。結局、目安として小さじ1杯分がちょうど受けられるように設計しました。
▲底面の放射状デザインにより、3本五徳にも4本五徳にもぴったりと合うため安定性は高い
&GP:加工そのものは苦労した点というのはなかったのでしょうか。
加藤さん:そうですね。加工自体は専門分野なので慣れているため、このグリルプレートだから苦心したということはありませんが、カーボングラファイトを扱う上で注意しなければならない点はあります。
まずこの素材は電気を通す上に、削ると粉になるので電気回路の中に入ってしまうとショートしてしまいます。また炭素とダイヤモンドは基本的には物質的には一緒なので、刃物の持ちが非常に悪いんですね。また金属のように粘りがないので、注意して加工しないと欠けが発生しますので、その辺の注意が必要ですね。
&GP:グリルプレートは厚さ7.5mmと比較的薄いように感じますが、この厚さはどのように決められたのでしょうか?
加藤さん:カーボンを使う以上はできるだけ軽くしたいのですが、薄くしすぎるとチープ感が出たり、遠赤効果が薄まったりします。また強度のあるカーボンといえども落とすと欠けが発生しますので、その辺の強度のバランスを考えた上で7.5mmという今の厚みに設計しました。もちろん厚い方が遠赤効果は高いのですが、当然、厚ければ重く高価になってしまいますので、コストとのバランスという面もあります。
&GP:ちなみにカーボングラファイトの塊を触ると手が真っ黒になりますが、製品化したものは黒くなりませんか?
加藤さん:カーボングラファイトの素材そのものを触ると手が黒くなりますが、グリルプレートは表面にフッ素コーティング、裏面に耐熱コーティングが施されていますので、もちろん触っても問題ありません。
■カーボングラファイトのグリルプレートはどんな焼きものに向く?

&GP:ということで色々お聞きしたいんですが、結局のところグリルプレートはどんな焼きものに合うんでしょうか?
加藤さん:牛肉はレアでも食べられますけど、チキンとか豚肉というのはやはりちゃんと火を通さなければなりません。どうしても長時間火を通さないと硬くなるのですが、グリルプレートではちゃんと中まで火が通ります。もしかすると遠赤効果で中にじんわり熱を伝えるというので、水分の飛び方が変わるような気がしますね。なので野菜にしてもチキンにしても、不必要に水分を失わないというイメージはあります。やっぱり熱伝導がいいイコール弱火で十分調理ができるので省エネです。
ちなみに私が美味しいと思うのは茄子ですね。焼き茄子も下手な火加減だと結構水分飛んでしまってあんまり美味しくないのですが、グリルプレートで焼くと熱が通って、適度に中に水分が残った状態で焼けますので。
ちなみにキャンプで使うガスバーナーやカセットコンロだけでなく、実はIHでも使えますので自宅で一人でちょっと晩酌をする際につまみを炙るとか、そういうのにも使っていただければなと思っています。
>>フィールドメイク
<写真/yOU 文/澤村尚徳(&GP)>
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