富士フイルム「GFX100RF」で広がる撮影の幅。構図が変われば写真がもっと面白くなる!

■構図の自由度がグッとと広がる「デジタルテレコン」のススメ

シャッターボタンのすぐ下には、焦点距離を切り替えるためのレバーが付いています。35・45・63・80mm(35mm判換算で28・36・50・63mm)というラインナップで、広角から標準域までカバーできるので、いろんな被写体にちょうどよく対応してくれます。

このデジタルテレコンも、最初は「あとからトリミングすればいいんじゃない?」と思ってたんですけど、実際に使ってみると印象が変わりました。最初から“この画角で撮るぞ”と意識して構図を決めると、写真がすっきりまとまりやすいんです。

トリミングって、なんとなく「いらないところをあとから切る」みたいな、ちょっとネガティブな感じがあるじゃないですか。でも、最初から画角をコントロールするつもりで撮ると、その写真に向き合う感じもちょっと変わってくるというか。なんだか、撮るのがまたちょっと楽しくなるんですよね。

ちなみに、「サラウンドビュー」という機能を使うと、画角やアスペクト比を切り替えたときの表示を自分好みに変えることができます。

たとえば、白い枠で記録範囲を表示して、その外側も見ながら構図を決めたり、逆に枠の中だけに絞って表示させたり。そのときの気分や被写体に合わせて、見え方を切り替えられるのがうれしいポイントです。

画角を切り替えて撮影しても、RAWデータにはフルサイズでしっかり記録されています。RAW現像ソフトで開いてみると、撮影時に設定していた画角が「この範囲を使いますよ〜」という感じでクロップ表示されるんです。そのまま使ってもいいし、あとからちょっとだけ微調整することもできます。

一方で、JPEGは撮ったときの画角がそのまま保存される仕組みなので、「あとで編集したくなるかも」と思ったら、RAWも一緒に記録しておくのがおすすめです。自由度がぐっと上がって、仕上げの楽しみも広がります。

▲ シャッタースピード1/30秒、F8、ISO80、フィルムシミュレーション:ブリーチバイパス

80mm(35mm判換算で63mm)で撮影してみました。このときはデジタルテレコンで最大までズームしてるんですが、それでも約2000万画素あるので、サイズ的にはもう十分すぎるくらいです。

そういえば前回、「広角ってちょっと苦手かも…」なんて話をしたんですが、テレコンを使えば標準画角に近づけるので、だいぶ撮りやすくなりました。

このモデルのすごいところは、1億200万画素というとんでもない高画素を活かして、デジタルテレコンもどんどん使っていけるところ。うまく取り入れれば、「あれも撮れそう」「これもいけるかも」と、撮れるものの幅がグッと広がる気がします。

▲ シャッタースピード1/250秒、F8、ISO100、フィルムシミュレーション:クラシックネガ

個人的な好みなんですが、63mm(35mm判換算で50mm)の画角がいちばんしっくりきます。このくらいまでクロップしても、約3100万画素もあります。

センサーに余裕があるぶん、下手したらフルサイズの3000万画素クラスよりも高精細なんじゃないかな…なんて思ったりもします。水面にできた細かい波紋まで、くっきりリアルに写っていて、ちょっと感動しました。

▲ シャッタースピード1/200秒、F4、ISO3200、フィルムシミュレーション:ASTIA

45mm(35mm判換算で36mm)は、まわりの空気感もちゃんと写し込めるので、ポートレートにぴったりの画角です。広すぎず、狭すぎず。屋内でも構図を整理しやすくて、背景にも意味を持たせやすいのがいいところ。

ちなみにこの45mmで撮っても、画素数は約6000万画素以上。いわゆる“フルサイズの高画素機”と同じくらいなんです。なんだかすごいですよね。35〜80mmの画角は、広角から標準域までしっかりカバーしてくれるので、街歩きのスナップからポートレートまで幅広く活躍してくれます。

それに、高画素センサーってクロップとの相性もすごくいいんですよね。もちろん、「せっかくだし1億200万画素ぜんぶ使いたい…」って気持ちもあるけれど、大判プリントでもしないかぎり、クロップしても画質は十分すぎるほど。

むしろ、テレコンで“撮りたい構図に合わせて画角を変える”という楽しみ方のほうが、撮影の自由度も上がって、より気軽に楽しめる気がしています。

■高画素センサー×フィルムシミュレーションで、写真がもっと味わい深くなる

本連載でも紹介した「X-M5」など、最近の富士フイルムのカメラには、フィルムシミュレーションを手軽に切り替えられるように、専用のダイヤルが付いているモデルもあります。

このモデルにはそのダイヤルはありませんが、ファンクションボタンに機能を割り当てておけば、撮影中でもサッと切り替えることができます。自分の撮り方に合わせてカスタマイズすれば、いろんな雰囲気を気軽に試せるのが楽しいところです。

さらに、フォーカスリングは、実は“コントロールリング”としての機能も備えています。ここには「ホワイトバランス」「フィルムシミュレーション」「OFF」のいずれかを割り当てることができて、前面のコントロールレバーから設定を変更し、レンズ側のボタンを長押しすることで登録も可能です。

ファンクションボタンとあわせて活用すれば、よりスムーズに自分好みの操作感に仕上げられます。

▲ シャッタースピード1/80秒、F8、ISO500、フィルムシミュレーション:クラシックネガ

▲ シャッタースピード1/200秒、F4、ISO80、フィルムシミュレーション:クラシックネガ

クラシックネガのしっかりとしたコントラストと、このカメラの高精細なセンサーは、相性ばっちり。少しアンダーめに仕上げてみたら、ローファイな雰囲気の中にもちゃんと階調が残っていて、立体感のある写真になりました。

▲ シャッタースピード1/80秒、F5.6、ISO640、フィルムシミュレーション:クラシッククローム

日が落ちはじめて、あたりがだんだん暗くなってきた時間帯。どこか懐かしさを感じる看板やタクシーに、ドキュメンタリーっぽいクラシッククロームが、クールで渋い味付けをしてくれました。

▲ シャッタースピード1/400秒、F8、ISO80、フィルムシミュレーション:ベルビア

ベルビアで鮮やかに切り取られた街並みに、屋内のシャドウとのコントラストが加わって、印象的な1枚になりました。

しっかり彩度はあるけれど、決してうるさくなりすぎない。そんな絶妙なバランスが、なんでもない日常のひとコマを、ちょっと華やかに見せてくれます。

▲ シャッタースピード1/400秒、F8、ISO80、カラークロームエフェクト:ブルー、フィルムシミュレーション:REALA ACE

忠実な色再現と、しっかりメリハリのある階調表現で、いろんなシーンにしっかり応えてくれる「REALA ACE」。器が大きいというか、懐の深いフィルムシミュレーションです。

豊かな階調を描けるラージフォーマットのセンサーとの相性もばっちりで、その場の空気ごと、写真に閉じ込めてくれるような感覚があります。

実際に撮っていて改めて感じたのは、このカメラの階調の豊かさと、高コントラストなフィルムシミュレーションとの相性の良さ。色の乗りもいいから、ちょっと絞って背景までしっかり写したくなるし、あえて暗めに撮って静かな雰囲気を出したくなることも。

レンズ一体型とは思えないくらいの濃密な描写で、なんだか撮ったときの気持ちまでも、そっと写してくれているような感触でした。

■“構図で遊ぶ”という贅沢。「GFX100RF」が教えてくれた撮影の自由さ

「GFX100RF」は、ラージフォーマットならではの豊かな描写力を活かして、アスペクト比の切り替えやデジタルテレコンで、撮影の幅をぐっと広げてくれます。専用ダイヤルでアスペクト比を直感的に変えられるのも、いつもの風景を新鮮に切り取るのにぴったりでした。

そして、1億200万画素というとんでもないセンサーとデジタルテレコンの組み合わせは、ただのトリミングじゃなくて、“新しい視点を手に入れる”ための強力なツールなんだなと実感。こういう機能をうまく取り入れながら、このカメラともう少し仲良くなっていけたら、写真の楽しみ方も、もっと広がっていきそうな気がしています。

次回も引き続き、「GFX100RF」の魅力をじっくり深掘りしていきますので、どうぞお楽しみに。

>> 富士フイルム「GFX100RF」

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<取材・文・写真/田中利幸 モデル田淵瑚都(@tako_ism)  取材協力/富士フイルムイメージングシステムズ>

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