“ボケ感頼り”にならない。富士フイルム「GFX100RF」で描く、空気をまとうポートレート

■やわらかく、くっきり。「F4」で表現する“ちょうどいい”ポートレート

▲ シャッタースピード1/200秒、F4、ISO3200、フィルムシミュレーション:ASTIA

被写体にちょっと寄って、背景との距離をしっかり取ってあげれば、F4のちょっと暗めなレンズでも、ちゃんとボケてくれます。ただ、ここまで近づいて撮ると、顔の丸みがちょっと強調されてしまうこともあるので…そのへんは少し気になるかもしれません。

そんなときは、デジタルテレコンで“少しだけズーム”してあげるのもおすすめ。画質はしっかり残っているし、構図もまとめやすくなって、撮りやすさもアップします。

髪の毛の一本一本までくっきり写る描写力は、さすがラージフォーマット。「おぉ〜」と思わず声が出ちゃうくらい、見ごたえがあります。

▲ シャッタースピード1/200秒、F5.6、ISO3200、フィルムシミュレーション:ノスタルジックネガ

このカットは、デジタルテレコンで80mmの画角にして撮っています。望遠寄りになることで被写体との距離がしっかり取れるので、顔のゆがみも少なくなって自然な仕上がりに。

第2回の記事でも触れましたが、ここまでクロップしても約2000万画素あるので、画質的にはまったく問題なし。たとえば、トーストの焦げ目の質感なんかも、しっかり描写されていて「やっぱり高画素ってすごいな〜」と感じました。

▲ シャッタースピード1/200秒、F4、ISO3200、フィルムシミュレーション:リアラエース

手前にカラフルなグラスを置いて、前ボケをつくってみました。色が多めの小物だったのでちょっと心配だったんですが、うるさくなりすぎず、ボケの質感もなめらかで、いい感じにまとまってくれました。

ちなみに、ちょっとした余談なんですが、このモデルには手ブレ補正が付いていません。なので、念のためシャッタースピードは気持ち速めに設定して撮影しています。

そのぶん室内では感度を上げることが多くて、ISO3200で撮ったカットもけっこうあったのですが、ノイズはほぼ気にならないレベル。高感度への強さにも「おおっ」と思わず声が出てしまいました。

■ストロボ撮影のハードルがぐっと下がる。「日中シンクロ」を気軽に楽しめるカメラ

ちょっと応用編になりますが、「GFX100RF」の小型&軽量化にひと役買っている「レンズシャッター」は、実はストロボ撮影でも大活躍なんです。

たとえば「日中シンクロ」と呼ばれる、自然光を活かしつつストロボを使う撮影方法。ふつうは明るい時間にストロボを使うのって、シャッタースピードの制限があったりして、なかなか難しいものなんですが、このカメラならそのあたりもスムーズ。

すべてのストロボで動作が保証されているわけではありませんが、手持ちのストロボでも気軽に試せるのがうれしいポイントです。

▲ シャッタースピード1/1600秒、F5.6、ISO200、フィルムシミュレーション:リアラエース

ストロボなしだと、ここまで背景を暗く落とそうとすると、どうしても人物まで暗くなってしまいがち。でも、ストロボを顔に当ててあげれば、背景は落としつつ、人物の顔を明るく写すことができます。なので、ちょっとドラマチックな雰囲気を出したいときにぴったりです。

本来なら、機材の準備や設定などでハードルが高めな日中シンクロですが、本機ならそれも気軽に試せるのがうれしいところです。

■背景も主役に。「GFX100RF」で広がるポートレート写真の選択肢

街でスナップを撮っていたときにも感じたのですが、このカメラは本当にいろんな場面で活躍してくれるカメラだと思います。

1億200万画素のラージフォーマットセンサーに、キレのある描写をしてくれる広角レンズ。そこにデジタルテレコンも組み合わせれば、被写体やシチュエーションに合わせて柔軟に対応できる、懐の深さを感じました。

▲ シャッタースピード1/200秒、F5.6、ISO2500、フィルムシミュレーション:ASTIA

▲ シャッタースピード1/200秒、F4、ISO1600、フィルムシミュレーション:リアラエース

▲ シャッタースピード1/500秒、F4、ISO400、フィルムシミュレーション:クラシックネガ

▲ シャッタースピード1/400秒、F5.6、ISO640、フィルムシミュレーション:クラシッククローム

▲ シャッタースピード1/500秒、F4、ISO320、フィルムシミュレーション:リアラエース

▲ シャッタースピード1/400秒、F4、ISO160、フィルムシミュレーション:クラシックネガ

今回ポートレートを撮ってみて感じたのは、「ちょっと引き気味で、広い画角で撮るのがすごくしっくりくるなぁ」ということでした。

スナップのときにも思ったのですが、キレのある広角レンズとラージフォーマットセンサーの精細さや立体感があるからか、つい引きの画を撮りたくなっちゃうんですよね。

もともと私は、背景やシチュエーションも写し込んだポートレートが好きなこともあって、このカメラはそのスタイルにぴったり。気持ちよく撮影できました。

■ポートレートの固定観念を変える。「GFX100RF」で見つけた“らしさ”の切り取り方

「GFX100RF」でポートレート撮影を試してみて、改めて感じたのは、「ただ背景をぼかすだけじゃない」楽しさでした。

F4というスペックだけを見ると、「あまりボケないんじゃ?」と思うかもしれませんが、ラージフォーマットのセンサーが生み出す豊かな階調と解像感が、被写体の存在感をしっかりと引き立ててくれます。

デジタルテレコンを活用すれば、歪みを抑えながらモデルに寄った撮影も可能で、背景を自然にぼかした“王道ポートレート”もしっかりこなせます。

スナップも、ポートレートも、シーンを選ばず頼れる本機。ラージフォーマットならではの描写力を活かして、自分なりのポートレート表現を楽しんでみたくなる、そんな一台でした。

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<取材・文・写真/田中利幸 モデル/田淵瑚都(@tako_ism)  取材協力/富士フイルムイメージングシステムズ>

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