「欧米で販売台数シェアNo.1」というオーディオテクニカのレコードプレーヤーに、透明すぎる新モデル誕生&カートリッジ刷新で示すアナログ本気度!

おそらく誰もこんなことになるとは想像だにしなかった。そう、レコードの復権である。コロナ以降直近でも欧米日ともに伸び続けているアナログレコード売上げだが、そんな追い風を受けて絶好調なオーディオテクニカから、VM型カートリッジの刷新&同社史上最高額レコードプレーヤー発売の知らせが届いた!

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「弊社はコンポーネントターンテーブルカテゴリーにおいて欧米でトップシェアを頂いております。しかしながら主力製品は$500以下の価格帯であり、中~上級者向けとしては競合ブランドに販売機会を譲ってしまっておりました」。

そう語るのはオーディオテクニカでターンテーブルほかアクセサリー類の開発を担当する由良志之房さん(下写真)。自身ドラム演奏を趣味とする、まことに福々しいお顔立ちをした音楽人間である。

氏の言う「欧米でトップシェア」という発言に意表を突かれたというのが正直なところ。なぜならテクニカはカートリッジメーカーであり、フォノイコライザーを内蔵したエントリー向けプレーヤーも手掛けていると思っていたためだ。現状ラインナップを見るともっとも高額な「AT-LP8X」で13万円+税(公式オンラインストア価格/下写真)となる。

 

「レコード復権は2010年頃、アメリカ発と言われていますが、その前後から弊社のレコードプレーヤーは右肩上がりで売れ続けており、欧州でも広く支持されています。台数を稼いでいるのが$150程度のエントリーモデルであり、Z世代のレコード体験のファーストステップとして愛用いただいています」と、同社ホームリスニング開発課マネージャーの小泉洋介さん(下写真)。

日本の型番でいえば「AT-LP60X」(下写真)といったフォノイコ内蔵、カートリッジ付属、フルオートで実売1万6000円前後のエントリーモデルが売れるのはわかる。つまり「好きなアーティストがレコードでリリースしているから手に入れた。そのレコードを聴きたいからプレーヤーを買う」というニーズに適うのがこのゾーンの製品だからだ。

それゆえオーディオテクニカが狙うべきはこれまで手薄だった中~上級者向け。つまりレコードリスニングこだわり層だと読めるが、どうやらオーディオマニアではなく、音楽とオーディオ製品選びにおいてデザインも重視したいハイセンスこだわり層らしい。

「オーディテクニカ創業60周年記念モデルとして限定リリースした「AT-LP2022」においてアクリル筐体による高いデザイン性を打ち出しました。プライスタグは当社では過去最高額となる$1200をつけましたがこれが大変な好評を得たことで、より高価格な製品に挑戦する手応えを得ました」と由良さん。

なるほど2022年頃の$1200といえば日本円17万円程度($1=約141円換算)。オーディテクニカにとって挑戦的ともいうべき値付けだったことがわかる。そして分厚いアクリルを主素材としたことがオンリーワンの価値につながっただろうことも確かだ。

▲「AT-LPA2」価格オープン(税込実勢33万円前後)。ダストカバー付属。熱心なファンからの「カーボン製トーンアーム単体でも売ってほしい!」なんて声も聞こえてきそうだ

「今回発表する新作「AT-LPA2」は、「AT-LP2022」で好評を得たアクリル筐体をベースとしていますが、電源回路/制御回路の分離別体化、プラッター(レコードを乗せるターンテーブル部)の厚みを16㎜から20㎜として安定性を向上させるなど各所グレードアップしています」。(由良さん)

▲本体、プラッターの厚みがわかる側面カット

▲アームの横滑りを調整するアンチスケーティング機構に糸吊り式を採用

▲別体の電源・制御部

このモデルを見た瞬間から心奪われた。つまり恋をした! 30㎜という分厚い透明アクリルシャーシと20㎜厚プラッターの醸し出すエレガンス、別体電源・制御回路がもつ精緻なメカらしさに。「このプレーヤーを家に迎えたい! このプレーヤーでレコードを思う存分楽しみたい!」そんな気にさせられた。

またこのクラスにしてはめずらしく、というよりオーディオテクニカらしいと言えるのが、MCカートリッジの標準装備だ。MC(ムービングコイル)方式はより一般的なMM(ムービングマグネット)方式より電流が微弱=繊細ゆえ、より高精度なメカトロニクス設計が求められることから、本格クラスにのみに採用されるカートリッジ方式として知られている。

▲高級MCカートリッジを標準装備というのもオーディテクニカらしいサプライズ⁉

そのMC方式のカートリッジが付属するというのだから「AT-LPA2」に与えられた実勢33万円というタグが、いかにバーゲンか分かろうというもの。レコードプレーヤーは数年で調子が悪くなったり、サポートが終了して使えなくなるようなシロモノではない。10年単位で使えるロングライフ製品だ。仮に10年使ったとして3650日。日割りで90円。わたしなら即決だ!

【次ページ】カートリッジ刷新の大胆不敵

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