■独特だけどクセになる。シンプル設計が生む“撮ること”への没入感

操作まわりも、見た目に負けずちょっと個性的。ボタンの数はほんとうに最小限で、一般的な一眼カメラと比べると、「こんなに少なくて大丈夫なのか」と心配になるほど。
私は普段、使っているカメラにあれこれとカスタマイズを加えて、自分仕様に設定しているタイプなので、最初はこの“ボタンの少なさ”にちょっと戸惑いました。

ただ、シャッターを半押しすると露出補正ができるのはとても便利で、今回の撮影は、基本的にシャッタースピードをその都度調整しながら、ISO感度はオート、絞りはレンズ側のリングで設定。そして、半押し状態で露出補正をして好みの明るさに仕上げる、というスタイルに落ち着きました。

最初はちょっとクセがあるなと思っていた操作性も、数日使ってみると、これが実に合理的。むしろ、撮影の流れがスムーズになるくらいで、「これでいいじゃん」と自然に馴染んできました。
もちろん、すべてをマニュアルで細かく操作しようとすると、ボタンの少なさがネックになって、ちょっと手間に感じることもあります。けれど、ISOはオートにして、あとはその場の明るさや気分に合わせて、ゆるっと調整しながら撮る。そんな“少し肩の力を抜いた使い方”が、このカメラには合っているのかもしれません。

撮影中は、写真のように背面液晶の情報表示をオフにして、右上の小さな液晶に必要な情報だけを表示させていました。
全体的に操作には少しクセがありますが、慣れてくると「写真に集中できる環境が整っている」と感じます。むしろ、これまで一般的なカメラに触れてこなかった人や、スマホから写真を始めた人にとっては、こちらのほうが自然に感じられるかもしれません。
複雑なメニューに煩わされることなく、構えて、撮る。それだけに集中できる感覚は、新鮮でありながら、どこか心地よさもありました。
■ミニマルな外観に隠された、最新カメラとしての性能

デザインのことばかり話してきましたが、中身だってちゃんと今どきのカメラです。起動の速さやオートフォーカスの精度、シャッターを切るときの反応のよさなど、どれを取ってもとても優秀で、使っていてストレスを感じることはほとんどありません。
「撮りたいな」と思った瞬間に、サッと構えてすぐに撮れる。この気軽さは、スナップ撮影にぴったりだなと感じました。

ボディはまさに“金属の塊”という感じで、手に取るとしっかりとした重みがあります。しかし、実はバッテリー込みでも重量は500g未満。フルサイズセンサーを搭載したカメラとしては、かなり軽い部類に入ると思います。

バッテリーは450枚ほど撮影した時点で残量約12%。1日撮り歩くくらいなら、ひとまず安心といった印象です。
バッテリー自体はスティック型でとても軽く(約58g)、予備を1本バッグに入れておいてもまったく気にならないので、荷物を増やしたくない人にも優しい仕様です。

カメラ本体にUSBケーブルをつないで充電できるのはもちろん、別売のバッテリーチャージャーを使えば、バッテリーを2本同時に充電することもできます。

背面液晶は表示がとてもキレイで、タッチ操作の反応もスムーズ。操作感としてはかなり快適です。
ただ、気になるところがないわけではありません。まず、液晶の輝度がやや控えめなので、晴れた日の屋外では少し見づらいと感じる場面もありました。それから、液晶は固定式で、チルトもバリアングルもできないため、ローアングルや自撮りには少々不向きかもしれません。

最近の一眼カメラは、液晶が動かせるタイプが主流なので、固定式の背面液晶はちょっと珍しい存在かもしれません。実際に使ってみると、ローアングルなどでは工夫が必要になる場面もありましたが、そのぶん構造がシンプルなので、安心感があるなとも感じました。
それに、可動部を省いたことで、ボディがとてもスリムに仕上がっているのも魅力のひとつ。横から見たときの薄さは、フルサイズセンサー搭載とは思えないほどでした。

バッテリーの底面には、カメラ底部と同じ素材の滑り止めが使われていて、見た目にも手触りにも一体感があります。細かいところまでしっかりデザインされていて、ちょっと感心してしまいました。
そして、もうひとつの大きな特徴が「内蔵メモリー搭載」という点。SDカードなどの外部メディアには対応しておらず、保存はすべて本体内に行うスタイルです。その分、カードスロットもなく、ボディのミニマルな佇まいがさらに際立って見えます。
「うっかりメモリーカードを忘れた…」なんていう、ありがちなミスとも無縁。カメラをひとつ手にして、ふらっと出かけて、気軽に撮る。そんな“原点回帰”のような楽しみ方ができるのも、このカメラの魅力だと思います。





































