失敗すらも愛おしい。FUJIFILM「X half」は“写真って楽しい”を思い出させてくれるカメラだ

■デジタルだからこそ。2枚の“あと合わせ”が生む、「X half」のユニークさ

もうひとつ、「X half」ならではの楽しみといえるのが「2-in-1」機能です。通常モードで1枚撮影し、フレーム切り替えレバーを引いてからもう1枚撮ると、縦構図の写真を左右に並べた1枚として記録されます。以前この連載で紹介した「PENTAX 17」のように、いわゆる“ハーフカメラ”的な遊び方ができるわけです。

フィルムのハーフカメラでは、組み合わせを想定しながら枚数を計算して撮影する必要がありましたが、このカメラでは撮影後に組み合わせを選ぶことができます。

偶然性は少なくなりますが、そのぶん「次は何と並べようかな」と考えながら撮れるのが、デジタルならではの良さ。ちょっとした遊び心を添えた写真が残せます。

2枚の組み合わせにちょっとした動きをつけてみたり、あえて似たようなものを並べてみたり。そこにストーリーを込めるのも、なんとなくの直感で遊んでみるのも自由です。

楽しみ方は、まさに無限大! つい夢中になって、もう1枚、もう1枚…と撮りたくなってしまいます。

さらに、専用アプリの「X half」を使えば、あとから好きな2枚を選んで1枚に仕上げることもできます。分割線の太さやスタイルも変更できるので、ちょっとしたデザイン気分も味わえます。

その場で続けて2枚撮るという“縛り”の面白さもありますが、あとからじっくり組み合わせを考えるのも、また別の楽しさがありました。

■失敗も想定外も、そのまま受け止めてくれるカメラ

日常的にスマートフォンで写真を撮っていると、どうしても“結果ありき”での撮影になりがち。シャッターを切ってすぐ確認し、気に入らなければ撮り直す。とても効率的ではありますが、そこには「余白」があまり残っていない気がします。

その点、「X half」は、いい意味でその“現代的な即時性”を断ち切ってくれます。ピントが甘かったり、ちょっと構図がズレていたり、うっかり露出オーバーで真っ白になっていても、フィルムモードでは撮り終えるまで確認できません。

でも、撮り終えてからコンタクトシートで一気に見返すと、その失敗さえもなんだか愛おしく感じるのです。思い通りにいかなかった写真たちが、思いがけず記憶をやさしくゆさぶってくるような気がしました。

フィルムカメラでは当たり前だった“結果を待つ時間”。それを、ちゃんと今の時代に合うかたちでよみがえらせてくれるのが、この「X half」というカメラなのかもしれません。

もちろん、通常モードで撮ればその場で確認もできるし、機能的にはしっかり現代のカメラです。けれどこのカメラの「ハーフ」という名前は、縦構図や2-in-1のことだけじゃなくて、デジタルとアナログ、それぞれの“ちょうどいい半分ずつ”を持っている、という意味にも感じられました。

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