オーディオ通が本音で語る。フラッグシップイヤホン&ヘッドホン10機種徹底聴き比べ

■音は言わずもがな。ヘッドホンは装着感とデザインもチェック

▲左から:ゼンハイザー「HDB 630」(実勢価格:9万5700円前後) アップル「AirPods Max」(実勢価格:8万4800円前後) Bowers & Wilkins(バウワース&ウィルキンズ)「Px8 S2」(実勢価格:12万9800円前後) ボーズ「QuietComfort Ultra Headphones」(実勢価格:5万9400円前後) ソニー「WH-1000XM6」(実勢価格:5万9400円前後)

円道:続いてヘッドホンですが、イヤホンよりはるかに“装着感”の影響の大きさを感じました。これは各モデルでかなり違いが出るところかと思いますね。

折原:イヤーパッドの厚みや、耳の前側と後ろ側の当たり方もメーカーごとに違いますからね。ヘッドバンドの当たり方や側圧もかなり重要で、ヘッドホンは“長くつけた時どうか”まで含めて見ておきたいです。

ゆーでぃ:あとは、イヤーパッドの厚さもポイントです。モノによっては薄いため耳に触れることもあり、その分音は近く感じますが、人によっては疲れやすいので、好みが分かれる部分だと思います。この辺りはメーカー各社がかなり細かい調整をして「これが最適だろう」というのは出してきていると思うので、自分にピッタリのモノを探したいですよね。

円道:あとは“重さ”が大事かなと思いました。首や頭頂部への負担にも直結するので、軽いに越したことはないですが、ただ難しいのは“重厚感”も重要じゃないですか。

折原:そうですね。重さについては、どちらかと言えば所有欲を満たしてくれる高級感につながる要素なので、そこをどう捉えるか難しいところですね。

円道:装着感で言えば、「AirPods Max」は想像以上に良かったですね。他のヘッドホンと比べると重量級ではありますが、ヘッドバンドとイヤーパッドの作りが工夫されていて、装着感は素直に良いと感じました。

一方、ソニーの「WH-1000XM6」は着けた瞬間から「あ、軽いわ」と思うくらい。

折原:ソニーについては今回の5モデルの中でも軽さがはっきり分かるモデルでしたね。ヘッドバンドの当たりもマイルドで、長時間つけても負担が少ない印象です。

円道:分かる気がします。音についてはどうですか?

折原:『Beat It』のような'80年代の音源でも、音場の広がりをきれいに感じられましたね。低音に寄りすぎず、高域もしっかり見えるようになっていて、“誰が聴いても分かりやすい良さ”を狙ったチューニングという印象です。オールマイティに曲を楽しめる。

ゆーでぃ:そうですね。前2モデルが低音が強めの味付けだったところから、バランスを整えてきて高音域もしっかり聴ける音になった感じがあります。あとは映画やドラマ向けの空間系モードも用意されていて、音の広がり方はかなり特徴的。音楽専用というより“音楽+映像”をまとめてカバーするヘッドホンとしてかなり良い選択肢と言えるのではないでしょうか。

円道:なるほど。最近は電車の中でもドラマや映画、動画など映像コンテンツを観る人も多くなってきているので、その需要を満たすという点ではこの方向性というのはかなり大事そうですね。

ゆーでぃ:音の広がりで言えば、イヤホンもそうですけど、ボーズが立体音響にかなり力を入れてきている印象があります。イマーシブオーディオという名前なんですが、映像コンテンツに合わせてきているというのは、顕著に感じるところです。シネマモードだとセリフが聴きやすくなっているけど、臨場感もちゃんとある、みたいな。

円道:なるほど、そっちの方向に進化してるんですね。その、ライフスタイル寄りの機能性については、「AirPods Max」の印象が強いですが、そのあたりはどうでしょうか?

折原:もともと、空間の広がりのような方向性の火付け役がアップルで、空間オーディオで仕掛けていたんですね。それが音楽だけでなく映像でも使えるんですよ。

円道:「AirPods Max」の登場で、これまで“音楽を聴くためのモノだった時代の個性”というものが、かなりマイルドになったな、という感じはしますよね。

折原:しかも音はアップデートを重ねてきたことで、低域に適度な厚みを持たせつつ、全体のバランスを整えた方向に落ち着いているので、音楽もしっかり楽しめるように進化してきてますね。

円道:あと特徴的に感じたのは先程話に出たボーズなんですが、そこそこ前のモデルから歴代を聴いてきた経験を持って聴くと、これまでの“ボーズ”とはかなり変わってきた印象なんです。音もデザインも洗練されてきていて、かなり進化をしているような気がします。

折原:そうなんですよ。ただ、興味深いのがモデルを重ねる毎に全体的に繊細な音を出すようになってきた中で、でもどこか昔のボーズを感じさせるような低音の聴こえ方もするんです。

円道:なるほど分かる気がしますね。音質についてだと、みなさんに聴きたいんですが、ゼンハイザー「HDB 630」はどうでした?

ゆーでぃ:良いですね。“ゼンハイザーの音”ではありますけど、(モデル名が)“MOMENTUM”ではなく、“HD”Bなんですよ。わざわざ“HD”の名を冠してきたというところに、その心意気を感じるといいますか。

折原:MOMENTUMシリーズがライフスタイル寄りのシリーズだとすると、今日の「HDB 630」は“ヘッドホン本流のHD系”を名乗るモデルですね。

ゆーでぃ:そうなんです。だからゼンハイザーらしい音の中でも、「しっかり音を追求したな」と思える作り込みと完成度を感じますね。高域の繊細さを大事にしながら、帯域全体のつながりもきれいに整えられている。

円道:分かる気がします。個人的にはヘッドホンはゼンハイザーが好きですね。広がっていく音がよく分かるという、“ゼンハイザー”らしさをしっかり味わえますし、ピュアオーディオ好きにとって分かりやすい選択肢だと思いました。

それと、最初に「重厚感」も大事という話がありましたが、ヘッドホンはイヤホンよりも存在感があるので、ビジュアルもかなり気になるアイテムかなと思っています。

ゆーでぃ:そうですね。今ヘッドホンって若い人達の中ではファッションアイテムとして機能している印象があります。首から下げるのはもちろんですが、例えばバッグのハンドルに吊り下げて持ち運ぶ、みたいな見せ方をしている。なので、デザイン性もヘッドホン選びでは重要かなと思います。

円道:え、そうなんだ。首からぶら下げるだけかと思ってました。

ゆーでぃ:デザイン面で個人的にやっぱり素敵だなと感じるのはバウワース&ウィルキンズ「Px8 S2」です。ハウジングの薄さやパーツの曲線の取り方、ケーブルの見せ方まで“プロダクトとしてどう見せたいか”がはっきりしています。実際に装着してみても、側面の薄さが効いていてシルエットがすっきり見えます。パッドの前後幅がスマートなので、ぴったり耳にハマる感じもあります。

円道:単純な装着感だけじゃなくて、見え方まで考えられているってことですね。音はどうですか?

折原:音は情報量が多く、高域までしっかり伸びるタイプですね。すごく良い音のヘッドホンなので、音源そのものの特徴までそのまま見えてきます。音源によっては繊細に聴こえ過ぎちゃうくらい(笑)。なので最近の高解像な音源と合わせると魅力が分かりやすいヘッドホンだと感じました。

円道:ヘッドホンについてまとめると、高音域の伸びや細やかさはゼンハイザーやバウワース&ウィルキンス。ソニーやボーズは空間的な音の広がりを感じられる。映像コンテンツを中心に楽しみやすいのがアップルといったところでしょうか。それに加えて、所有欲を満たしてくれるのか、とにかく着け心地重視なのかといったところで選んでいくと良さそうですね。

*  *  *

円道:ここまでイヤホン、ヘッドホンのフラッグシップを全10モデル試してきました。最後に、フラッグシップ選びのアドバイスをお聞きして良いでしょうか?

折原:現行フラッグシップはどれも一定以上に良い。そのうえで、どの音の方向性が好きか、どの機能を最優先するか、そして装着感が自分に合うか。この3つをお店で確認してから決めるのが、1番後悔の少ない選び方だと思います。

ゆーでぃ:好みの音を探すことはとても楽しいんです! 実機を試し尽くして、お気に入りのモデルを見つけて欲しいですね。実機が試せるお店がなくて困っている方がいれば、ぜひe☆イヤホンで実機を試してみて欲しいです(笑)。

円道:今回聴いたイヤホンもヘッドホンも、音の良質さと言う点では大きな差がないと言っても良いほど良いものばかりでした。なので、あとは自分が好きかどうかが大事なかなと思います!

【次ページ】注目のフラッグシップを一気見せ!

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