ぼくらの“カコ”に逆回転。懐かしくも新しい「レコード」と「カセット」が、なぜか今また気になる

■これからレコードを始めるなら。新川さんが選ぶ“間違いない3台”

レコード人気が盛り上がる中で「初めての1台」を探す人は年齢を問わず増えています。10代の学生もいれば、しばらく離れていた大人が“また始めたい”と訪れることもあるとのこと。

では、今レコードを手にするならどんなプレーヤーを選ぶべきなのでしょう。「ギンザレコード」が“最初の一歩”としてすすめる3台を新川さんに聞きました。

「蔵前店は銀座本店のように1000万円クラスのモデルを並べる空間ではないんです。ここでは“手が届きやすい価格帯の中で長く使えるもの”を選んでいます。安さだけを優先したモデルだとレコードが本来持つ良さが伝わりにくくなってしまうので」

ということで、新川さんにおすすめのレコードプレーヤーを3台ピックアップしてもらいました。

【1台目】Rega「Planar1 mk2」(4万9500円)

▲駆動方式:ベルトドライブ、回転数:33 1/3、45、トーンアーム:Rega RB110(自動バイアス調整機構つき)、カートリッジ:Rega Carbon(標準装着)、プラッター:フェノール樹脂

最初に挙がったのはイギリス・Regaの「Planar1 mk2」。黒一色でまとめた端正なデザインはもちろん、音の“素直さ”で多くのファンを持つブランドです。

「Regaのいいところって“必要なものだけで勝負している”ところなんですよ。余計な装飾がなくて盤に刻まれた情報がそのまま出てくる。派手に持ち上げないぶん、ボーカルの距離感やアコースティックの空気感が自然に立ち上がるんです」

独自設計のトーンアーム「RB110」がブレを抑え、ベルトドライブならではの静けさと安定感が相まって初めてでも扱いやすい。“レコードの生っぽさ”をまっすぐ受け取りたい人にはまさに理想的な1台と言えます。

【2台目】House of Marley「Stir It Up Lux」(4万2980円)

▲駆動方式:ベルトドライブ、回転数:33 1/3、45、78、内蔵フォノイコライザー:あり(オン/オフ切替可)、接続:RCA出力、Bluetooth 5.3(ワイヤレス再生対応)、カートリッジ:Audio-Technica AT-95E 付属

竹素材×ブラックパーツの組み合わせが印象的なこちら。プレーヤーでありながら家具の一部のように空間へ溶け込むのが魅力です。

「これ、見た目が良いだけじゃなくて扱いやすいんですよ。竹の天板って軽くて丈夫だし、触れたときの質感も気持ち良い。回転数もダイヤルひとつで変えられるので古い盤を買ってきてもすぐにかけられるのが便利なんです」

オーディオテクニカ製カートリッジを標準装備しているため、音の輪郭が見えやすくボーカルはクリアに、低音は控えめに締まる傾向。Bluetooth再生にも対応しているのでスピーカーの配置を自由に楽しみたい人、インテリアと音の両方を大事にしたい人にちょうど良い1台です。

【3台目】 Denon「DP‑400」(6万6000円)

▲駆動方式:ベルトドライブ(サーボコントロール)、回転数:33 1/3、45、78、内蔵フォノイコライザー:あり(MM対応・オン/オフ切替)、自動機能:オートリフトアップ/ストップ、カートリッジ:MMカートリッジ付属

安定感と“音のまとまり”で選ばれたのがDenonの「DP-400」。

「レコードプレーヤーって黒が多いんですけど、白が基調の『DP-400』って珍しいんです。インテリアとして選ぶ人も多くて、そういう相談があればまずこれをすすめますね」

音の傾向はクセが少なく、どんなジャンルでも破綻しないバランス型。サーボコントロールによる安定した回転でピッチの揺れが少なく、ボーカル帯域の見通しも良好。また、ストップ時に自動でトーンアームが上がるオートリフトアップは、初心者はもちろん玄人でもありがたい機能。“長く付き合える実直な1台”として選ばれる理由がよくわかります。

■レコードの“深み”を味わうなら良いスピーカーも視野に入れたい

「Bluetoothで飛ばしてイヤホンやヘッドホンで聴くのももちろん良いんですが、専門家の間では“長時間・大音量のイヤホンは耳の奥で音を感じ取る細かな毛のような組織に負担がかかる”という話もあるそうです。そういう意味でも、レコードをきっかけにスピーカーで音楽を楽しむ習慣を始めてみるのも良いかもしれません」

そんな話の延長で紹介してくれたのがSonus faberの「Lumina I」(17万9300円)です。

「コンパクトなんですが音に芯があって情報量も多い。レコード特有の“厚み”をしっかり出しつつ、ボーカルの輪郭や楽器の細かいニュアンスも丁寧に拾ってくれるんですよ。サイズ以上に鳴りっぷりが良いので初めてのスピーカーとしても安心してすすめられますね」

■レコードが今、再び響く理由。そして、もうひとつの“アナログ”へ

レコードが再び注目されているのは、音を聞くだけでなく手に取る・針を落とす・回転を眺めるといった一連の行為そのものが楽しみになるからです。アナログならではの奥行きある音と、自分のペースで向き合える“自由さ”が世代を問わず支持される理由なのでしょう。

そして今、同じくアナログの代表格である「カセット」も存在感を増しています。レコードと共通する魅力があるのか、あるいはまったく別の楽しみ方が広がっているのか。次項ではその辺りについても紹介していきます。

【次ページ】カセットテープの奥深き世界

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