■渋谷のカルチャーをミックスした小さな拠点
「渋谷PARCO」5階といえばファッションやアート、サブカルチャーがごちゃ混ぜになったようなフロア。その一角に小さなポップアップのような顔をしながら確かな存在感で並んでいるのが「ODD TAPE DUPLICATION(オッドテープ デュプリケーション)」です。
▲「ODD TAPE DUPLICATION 渋谷PARCO店」/東京都渋谷区宇田川町15 渋谷PARCO 5F

店に近付くと、まず目に入るのは“色”。赤や青、透明、蛍光カラーのカセットテープが棚いっぱいに並び、隣には洋服や雑貨、ZINE、アートピースが自然に混ざり合っています。
新旧入り混じるカセットの存在感とアイテムごとに異なる色のリズムが重なって、空間全体がひとつのコラージュのように見えます。

“ODD(奇妙)”の名の通り、ここにジャンルの境界はありません。新品の作品も90年代の中古テープも、オリジナルのアパレルも小物も、整然とはしていないのに不思議と調和しています。いわば渋谷に漂う“ごった煮カルチャー”を凝縮したような店と言えるでしょう。

同じ「オッドテープ」でも戸田本店はより音楽寄りでアーカイブ色の強い雰囲気。一方で渋谷店は観光客や買い物ついでの若い人もふらっと入ってくる“開けたムード”があります。
「ODD TAPE」スタッフのりさこさんは、その違いをこう話します。
▲「ODD TAPE DUPLICATION 渋谷PARCO店」スタッフ りさこさん
「渋谷店はまさに“カルチャーの入口”のような存在で、スケーターやアーティストなどさまざまな背景を持つ人がふらっと立ち寄ってくれます」
カセットの仕組みを知らずに買っていく人も珍しくないそう。しかし、それを否定するような空気はまったくなく、むしろ“知らないものに触れられるワクワク感”が店全体に漂っています。
■そもそも、なぜ今「カセット」なのか
店内を眺めているとカセットに手を伸ばす人の動機は大きく2つに分かれる、とりさこさんは言います。

ひとつは “懐かしい”世代。学生時代に自分だけのミックステープを作っていた記憶がふと蘇り、またあの感触を味わいたくなる人たち。
もうひとつは “新しい”世代。カセットをリアルタイムで知らない人たちが「スケルトンがかわいい」「この色めっちゃ良くない?」と純粋にビジュアルから入ってくるそう。どちらも正解で、どちらも間違いじゃない。店内には、その“二方向の熱量”が自然に混ざり合っているように見えます。

そんな盛り上がりの理由についてりさこさんはこう説明します。
「カセットってモノとしての楽しさがあるんですよね。ケースを開ける動作、ボタンを押したときの“カチッ”という音、リールが回る様子…再生までの一つひとつの手順すら愛おしいんです」

そして、カセットは1本ずつ“経年の個性”が異なるのも魅力のひとつだと教えてくれました。
「古いカセットって音の曇り具合が微妙に違うんです。低音だけ妙に太かったり、高音が急に落ちたり。そういうのも面白いですよね」
デジタルの均質な音とは対照的に、アナログにはある種“不完全さと向き合う楽しさ”があるとのこと。その揺らぎごと味わう感覚が今の若い世代には新鮮に映っているのでしょう。
■眺めるだけでもテンションが上がる注目のラジカセ5選
カセットを楽しむなら、まず欠かせないのがラジカセ。今や音楽を楽しむだけでなく、部屋に置くだけで空気を変えてくれるインテリアとしての魅力も大きいのではないでしょうか。
りさこさん曰く、選ぶときはまず家でじっくり聴くための「置き型」にするのか、外に気軽に持ち出せる「ポータブル」にするのかを決めるのが良いとのこと。どこで、どんなふうにカセットテープと過ごしたいかを思い浮かべると自分にしっくりくる1台が自然と見えてくるはずです。
【1台目】SEMIER「SM-336」(1万4800円)

最初に名前が挙がったのはコンパクトながら“ラジカセらしさ”をしっかり味わえるこちら。大きめのスピーカーと、押すたびにカチッと鳴る物理ボタン。見た目以上に軽く、テープを入れて再生する“あの感じ”を気軽に楽しめるのが魅力です。
「置き型なんですが、軽いのでポータブルとしても使えます。スピーカーが付いているので家でも外でも“ラジカセっぽい感じ”がすぐ楽しめるんです。防災用としても有用ですね」
【2台目】RALEDY「Retro Boombox Casstte Tape Player」(2万8900円)

“ザ・ラジカセ”と言いたくなる存在感のある見た目で、棚に置くだけで部屋の主役になる1台。フロントの大きなスピーカーや太い操作ボタン、重厚なブラックの筐体など90年代カルチャーをそのまま引き戻したような雰囲気があります。
「これは “音で遊べる” んですよ。つまみを回して低音や高音の出方を微調整できるのでテープによって鳴りが違うのも楽しめる。ちょっと曇ったテープでも自分好みに仕上げられるのがいいんです」
Bluetoothを搭載しているため、スマホの音を飛ばして普通のスピーカーとして使うことも可能。録音機能もあり、昔と同じように“自分だけの1本”を作る楽しみ方もできます。
【3台目】We Are Rewind「Bluetooth Cassette Player」(2万4800円)

今回のラインナップ中でもりさこさんが「これは本当にかわいいんですよ」とすすめてくれたのがこちら。マットなアルミボディに挿し色ボタンがあしらわれているなど、どこか“北欧の家電”のような佇まいがあり、手に取るだけでテンションが上がるデザインです。
「特にイエローのRecボタンがお気に入り。ちょっとしたアクセントがあるだけで道具としての愛着が全然違うんですよ。機能は現代的なのに見た目は80〜90年代の『ウォークマン』っぽさも残っていて、そのバランスが絶妙なんです」
Bluetooth 5.0を搭載しているためワイヤレスイヤホンやスピーカーとも接続可能。有線派のための3.5mmジャックも備えており、どんな環境でもすぐ聴ける安心感があります。USB Type-C充電に対応し、最大10時間の連続再生ができる点も日常的に使ううえでは大きなメリットと言えるでしょう。
【4台目】FiiO「CP13」(2万2980円)

スケルトンの筐体から内部のメカが覗くデザインは、どこか「ゲームボーイ」の透明モデルを思い出させるルックスです。
「この“中身が見える感じ”、やっぱりテンション上がるんですよ。回転するリールとかボタン機構がそのまま覗けて、カセットの“動き”まで楽しめるんです」と、りさこさんも絶賛。
完全アナログ回路で構成されており、Bluetoothなどのデジタル機能はなし。そのぶん “アナログそのものの音” をダイレクトに味わえます。USB Type-C充電に対応し、最大13時間の再生が可能です。
【5台目】SONY SPORTS 「CFS-902」(5万5800円)

最後は「オッドテープ」の“宝物ゾーン”からの1台。新品だけでなくビンテージのラジカセも取り扱う同店には時代を象徴する名機が並んでいます。その中でもひときわ存在感を放っていたのがこちら。
鮮やかなイエローの筐体に、防滴仕様らしい武骨な作り。1980年代後半に登場したモデルで、当時を知る人には“懐かしい!”と刺さる1台です。もちろん1点物で、現物がこのコンディションで出てくること自体がかなりレア。
「置いておくだけで部屋がパッと明るくなるんですよ。オブジェとして買っていく人も多いです」とりさこさんが言うように、ただ棚に置くだけでインテリアの主役になる存在感があります。
機能を追うというより“モノそのものを楽しむ”タイプのラジカセ。当時の空気ごと持ち帰れる、ビンテージならではの魅力が詰まっています。
■アナログなモノでしか味わえない“趣”がある

今回の取材で改めて感じたのは、カセットもレコードも“所有する楽しさ”が体験の核にあるということ。デジタルが主流になって忘れかけていた感覚が、アナログを手に取ることでパチっと戻ってくるようです。再生までの所作や手の中に残る質感が、それぞれに唯一無二の時間を作ってくれます。
スマホは便利ですが、時間を浪費するばかりで気付けば何も残っていない瞬間も多いーー。だからこそ、レコードやラジカセの“少し手間のかかる感じ”がむしろ心地良く感じられるのではないでしょうか。
>> ギンザレコード クラマエ
<取材・文/若澤 創(GoodsPress Web) 写真/高橋絵里奈>
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