プロが選んだ愛用イヤホン&ヘッドホンは何だろう? 男気啓蒙アーティスト・掟ポルシェの相棒とは

■さまざまな音楽を聴くようになったのは、あるアーティストがきっかけ

――スピーカーで聴く日が来ることを祈っています(笑)。掟さんはかなりこだわってヘッドホンを探したようですが、どう選べば良いかアドバイスはありますか?

:そうですね…。ヘッドホンって難しいのが“慣れていく”みたいなところもあると思うんです。ちょっと良いかもって思ったら長く使えば使うほど耳に馴染んでくるというか。例えば、「エアポッズ」とパナソニックを比べてみると全然違うわけですよ。各メーカー、ほかのところと差別化しようとしているでしょうし。だから、こういうのって正解はないんじゃないかとも思うんですよね。みなさん一人ひとり耳が全然違うだろうし、ということは当然鳴っている音楽も違うように聴こえるわけで。答えになっていないと思いますが、試してみて自分が直感的に良いと思ったものを使うのがベターだと思いますよ。

――なるほど。少し話が戻るのですが、先程「カーカス」が好きだと仰っていました。そこからなぜご自身はニュー・ウェイヴのユニットを作ろうと思ったのでしょうか?

:ずっと高校時代にニュー・ウェイヴというか、1980年代の海外とか日本の変な音楽を聴いていて。気持ちの悪い音階のニュー・ウェイヴミュージックの方がもともと好きなんですよ。ヘヴィメタルは高校卒業するぐらいまでまったく聴いていなかったし、それどころかもともとは好きじゃないんです。メタルを聴いている友達を少しバカにしていましたし。むさ苦しいおっさんが金切り声出しているのが好きになれなくて。

▲耳のプラスチックのところがどのヘッドホンを使っていても壊れてしまうそう

――そこからどうして好きになったんですか?

:子供の頃に映画『ゾンビ』を観て、そのサントラをやっていた「ゴブリン」というイタリアのプログレッシブ・ロックバンドの薄気味悪い音楽が大好きになって。それがきっかけになったのか、自分が好きになるものは明るくポップな音楽ではなく、気持ちの悪いメロディやディストーションが利いたかなり潰れた音楽だった。そういうものがニュー・ウェイヴの中にもたくさんあったし、あとはポジティブ・パンクって顔面を白塗りにして歌ったりするジャンルの音楽とかが高校時代好きでよく聴いていて。それで当時読んでいた音楽雑誌「フールズメイト」の編集長が自身でバンドを始めたんです、「YBO²」っていう。それがノイズ的な音楽とパンクを足したみたいな感じでとても好みだったんですよね。

そういった気持ちの悪いメロディのバンドを好んで聴いていたんですけど、1989年に「カーカス」のセカンドアルバムが出たんです。そのタイミングで友達の家で聴かせてもらって、「YBO²」みたいな音楽で良いなと思うようになって。で、「カーカス」というのがアルバムごとに音楽性が変わる人たちだったんですよね。最初聴いたときはグラインドコアだったんですけど、どんどん音楽性が変わっていって1993年の4thアルバム「Heartwork」では、メロディック・デスメタルと言われるかなりヘヴィメタル要素の強い音楽になっていきました。なのでメタルが好きになったというか、「カーカス」がメタルになったので行きがかり上メタルファンになってしまったんですね。

――それではメタルから入ったわけではなく、「カーカス」が好きで彼らの変遷によって聴く音楽ジャンルも半ば強制的に変えられたという感じなんですね。

:そうですね。自分は「カーカス」というバンド自体のファンなので。最初は戸惑ったものの、3日くらい聴いているとむしろこれが1番良いんじゃないか、みたいに思えてきて。ファンというのは不思議ですよね。それで上京後、普通にTVでメタルの番組を観るようになって、メタルも好んで聴くようになっていったわけです。

――それでご自身でもメタルプロジェクト「ド・ロドロシテル」を始めたと。

:はい。自分の場合、ジャンル全体が好きって感じではないですね。どの音楽も。ニュー・ウェイヴもそうで、ニュー・ウェイヴだったら何でも良いかと言うとそうではなくて。そもそもニュー・ウェイヴ自体がすごく曖昧で、80年代にちょっと変わったことをやっていれば何でもニュー・ウェイヴだとか、シンセサイザーが入っていれば、とかいろいろと言われているんですけど、厳密な定義って存在しない音楽なんです。なのでジャンル丸ごと好きっていうのはなくて、自分が好きなバンドが各ジャンルにひとつはある、という感じですね。逆にそういう感じなのでいろんなジャンルが聴けるというか。

――それでニュー・ウェイヴのみならずメタル、そしてJ-POPまで、聴く音楽が幅広いんですね。最後に、掟さんがイヤホン・ヘッドホンに求めることとは何でしょうか?

:堅牢性ですね。やっぱ壊れにくさが1番。あとはDJ用で買うのであればカールコードであること。カールコードじゃないとやっぱり邪魔ですね。今日持ってきたオーディオテクニカも一時期DJでも使用していたのですが、やっぱりそれには向いていないというか。DJブースや会場内を動き回る自分のDJスタイルだと、足で踏んじゃうし危なくてしょうがない。

あとはパーツに金属をやたらと使っていると、音も金属的になるのでそれも個人的には避けたいですね。堅牢性は欲しいけど、音質にいらない変化が加わるのは避けたい。だからヘッドホンの筐体がプラスチックでできているのって、それなりに理由があるんだなと思っていて。壊れにくい強化プラスチック製ヘッドホンがあればそれがベストなんですけど、そうなるとお値段もお高くなるでしょうし。そういう意味でもお手頃価格の「ATH-M20x」が自分にはあっているんだと思います。

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<文/手柴太一(GoodsPress Web) 写真/高橋絵里奈>

 

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