■35年前のベスパがキック一発でエンジン始動!
しかし、このバジャジ製ベスパ、「新車」とはいえ35年以上昔のものです。
個体としての経年劣化、真価のほどがイマイチわからないインド製であること、この35年間であらゆるバイクが進化していることを前に満足な乗り味を感じさせてくれるのか……不安がないと言えばウソになります。そこでさっそく試乗をさせてもらうことにしました。
▲山本さんにエンジンをかけてもらうと…
▲キック一発でエンジン始動
バジャジ製ベスパはバッテリーがないため、始動はキック一発です。山本さんが軽くキックすると、タカタンタンタン……と、2サイクルの小気味良いエンジン音が鳴り響きます。近年では街中でも目にする機会が少なくなったベスパの「鉄スクーター」モデルですが、この音、2サイクルオイルの香りがなんとも懐かしい。そして、実にトルクフルでもあり、回転数が極めて安定しているのもまさしく「新車」ならでは! とも思いました。
■オシャレというより「無骨な実用車」。安心して維持できそう
▲ベスパの「鉄スクーター」モデルは、ほとんどが左側のハンドルでシフトチェンジする仕組みです
▲メーター部分。走行距離数は「226km」
▲右側のハンドル部分。アクセルと合わせて、灯火スイッチ、エンジンのキルスイッチが集合
さっそくまたがり運転してみました。
実は筆者、このバジャジ製ベスパのモチーフとなったであろう、ベスパ150リント・ヴェローチェというピアジオ社のオリジナルモデルを数年乗った経験があり、なかなか親しみやすいフィーリングです。
それでいて、ピアジオ社よりも走行中のブレがなく、低高速でのレスポンスも抜群。現在では乗る機会が少なくなった2サイクル特有の加速力も十分で、なんだか泣けてくるほどの乗り味です。
そして、細部を見ても塗装なども厚塗りな印象で、この点もベスパをよく知る人であれば特に好印象を抱くはずだとも思いました。
総じて見ると、オシャレな印象が強くあるピアジオ社のオリジナルモデルよりも、“無骨な実用車"という感じで、言い換えればより安心して維持できる鉄スクーターのようにも感じました。
このバジャジ製ベスパ、山本さんによればベスパの「鉄スクーター」モデルの後期型で、流通量が多かった「PX」というモデルとの共用部品も多く、機構面でのパーツ供給の不安はそうないとのことでした。
▲フロントの足回り。ベスパの「鉄スクーター」モデルに共通する片持ち式です
▲リアの足回り。こちらももちろん片持ち式。万一のパンクの際などでも簡単にタイヤを交換できます
▲極めてシンプルなエンジン部分。流通量が多かったモデル「PX」との共用部品が多く、パーツ供給の面でもそう不安はないようです
■随所のアジアンな雰囲気のデザインもまたヨシ!
▲随所のデザインに、アジアンな雰囲気を感じるのも筆者個人的にはかなりシビれます
▲リアのサイドカバー左には、タンデム用のステップも装備
このバジャジ製ベスパ、人によって好みが分かれるのは、随所に感じるアジアンな雰囲気のデザインだと思います。
しかし、筆者的にはオリジナルのピアジオ社製よりも、むしろこのバジャジ製のほうが親近感を抱きます。80年代の、インドのカオスな交通状況を、このバジャジ製ベスパがガツガツ走り抜いている絵を想像すれば、「オシャレというより、無骨でカッコ良いなぁ」とも感じるからです。
▲シートを開いたガソリンタンク部分。実際に納車される個体はさらに綺麗なものになると山本さん
また、本車両はあくまでも「試乗用」のもの。年代を考えれば十分綺麗ですが、山本さんによれば実際に納車される個体はもっと綺麗なものだとのことです。
■バジャジが教えてくれる「バイク本来の楽しさ」
▲山本さん個人所有のバジャジ(非売品)。バーハンドル仕様にしたモデルで、随所に最新パーツなどを組み込んでいるそう
▲「バイク本来の楽しさを、このバジャジが教えてくれるような感じがある」と山本さん
大満足の試乗を終え、山本さんに「最新のバイクにはない味がありますね」と伝えると、「まさにそう」とこう返してくれました。
「バイクは年々進化し続けていますけど、バジャジに乗ると『バイクの本来の楽しさ』を自ずと教えてくれるように思います。いろんなバイクに乗ってきた人なら、きっとこの感覚をわかっていただけると思いますよ」(山本さん)
▲「納車までは1ヶ月ほど時間が欲しい」と山本さん
気になる価格は車両本体は税込で98万6700円。125ccのバイクの価格としては最新の国産バイクの倍以上になるので、「高い」と思う人もいるかもしれませんが、冒頭で触れた通り、近年のベスパの「鉄スクーター」モデルの高騰ぶりを思えば、むしろお手頃価格だろう、というのが個人的感想です。
山本さんは「オーダーを受けても、納車までは1ヶ月ほど時間が欲しい」とも言います。現状でもキック一発で始動するバジャジ製ベスパですが、長く乗っていただく以上、細部を念入りに調整して納めたいから、とのことでした。
あらゆるバイクに乗ってきた人にこそわかるはずのバジャジ製ベスパ。気になる方は、ぜひモト・ビート シフトアップに問い合わせしてみてはいかがでしょうか。
<取材・文/松田義人(deco)>

松田義人|編集プロダクション・deco代表。趣味は旅行、酒、料理(調理・食べる)、キャンプ、温泉、クルマ・バイクなど。クルマ・バイクはちょっと足りないような小型のものが好き。台湾に詳しく『台北以外の台湾ガイド』(亜紀書房)、『パワースポット・オブ・台湾』(玄光社)をはじめ著書多数
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