1906年創業の老舗スポーツメーカーが“後発”で挑んだ!意外と知らない人工芝の進化と未来の話

■人工芝の未来

▲充填材として使用されるField Chip R(Resin)と呼ばれるゴムチップ(ミズノ提供)

 

─ ちょうど環境問題のお話が出てきましたが、例えば、今後どのような素材に変わるなどの予定はありますか?

太田さん 直近ですと、ミズノでは海洋で分解する樹脂、カネカ生分解性バイオポリマー「Green Planet」を使用した人工芝を、日本の総合化学メーカーであるカネカさんと共同開発しました。これは調べた限りでは世界初なんですよ。

─海で分解するというのは、つまり微生物が食べられる素材になっているということですか?

太田さん そうです。最近、大手コーヒーショップのストローも作っていたりしまして、それと同じ素材なんですよ。

現状、世の中の流れでいうと、まずヨーロッパにおいては2031年以降、人工芝の充填材において5mm以下の非生分解性の樹脂製チップが使用禁止になります。だから、ヨーロッパでは今後充填材のない人工芝、もしくは充填材として天然素材を入れるものになる方向になりそうです。

ただ日本やアメリカに関しては、まだ法律はできていないのですが、やはり環境対策は各社ともにしていかないといけない状況にはなってきていますので、その中で弊社が取り組んでいるのが、海に流れても問題がない素材に変えようと。そういう感じになっています。

▲コチラも充填材として使用されるField Chip R(Resin)と呼ばれるゴムチップ。日本国内製造で、ゴム臭がなく、温度抑制効果がある(ミズノ提供)

─ 例えば、飲料系メーカーの「伊藤園」とで茶がらでつくったチップの共同開発のお話もそうですが、やはりそういった環境対策の流れみたいなもので共同開発的な案件は今後増えてくる、もしくは現状増えている状況なのでしょうか?

太田さん 伊藤園さんとは共同開発した茶がらを再利用した充填材を展開しましたが、人工芝の分野でいうと現状はまだまだこれからという感じかと思いますね。ただミズノとしての他のアイテム、例えばシューズや用具などでいうと、新幹線の廃棄アルミニウムを再利用した野球用バットなどがあります。

SDGsはもう流れというか、会社として取り組まないといけないCSR(Corporate Social Responsibility)としての部分はかなり大きくなっていまして、リサイクルやリユースだったり、石油由来のものをなくす、ということは重要なミッションになってきている状況ですよね。

▲コチラがField Chip G(GreenTea)と呼ばれる、伊藤園と共同開発した茶殻リサイクルシステムを活用し製造している茶殻配合の充填材。サッカー場1面全量使用の場合約43万本(おーいお茶緑茶525ml PET換算)の茶殻をリサイクル活用(ミズノ提供)

─ ちなみに「Green Planet」の人工芝というのは、ナニからつくられているのでしょうか?

太田さん PHBH(ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート))というカネカさんの開発したバイオプラスチック樹脂になりますが、基本的に微生物から抽出しているものですので、石油来の樹脂を使用していないという部分が一番のメリットなんです。

─ これは個人的妄想になるのですが、例えば人工芝内に二酸化炭素を吸収するような生物自身を組み込んだり、水分を含めるような素材を使用した人工芝で現状の砂漠化問題を抑制できる、なんてことは未来的には可能なのでしょうか。

太田さん 現状、そこまで大きな問題の部分は考えてはいないのですが、サステナブルやリユースという部分は、最終的にそういうところに繋がっていくのかなと思っています。ただ、それらがすぐに「砂漠化抑制になるか?」と言われたら、難しいとは言いたくないのですが。社内においては深刻な砂漠化対策みたいな大きな問題というよりもうすこし細かい部分に注力している状況です。

─ まずは現実的な部分ということですね。今後のミズノの人工芝としての展望を教えてください。

太田さん 現状、注力している部分は、「Green Planet」の屋外での展開に関してですね。太陽光や雨が当たらない屋内は問題がないことは確認できているのですが、屋外だとどうしても分解してしまうんですよ。

─ それは紫外線に弱いということですか?

太田さん いえ! 微生物が食べてしまうんですね。屋外に置くとどうしても微生物が繁殖してしまう。それをなんとかなくすというか、微生物が育たない環境をつくるしかないのですが、そんなことをやっています。

─そうすると「Green Planet」の耐久性が増すということですか?

太田さん 屋外の人工芝の方がシェアが多い状況ということもありますし、人工芝のパイルが抜けて、それが海まで行ってマイクロプラスティックになりうるという問題は、屋内より屋外の方が圧倒的に多いというのもあります。

だから、「Green Planet」の屋外での展開がゴール、環境問題への対策することがゴールではあるのですが、現状は屋外での耐久年数が足りていないというのが現状なんですよね。

─ 「Green Planet」の耐久性を上げることで屋外でも使用が可能であるものを作る、それが今後の展望という感じですか。

太田さん いま僕らがやろうとしているのはそこになっていますね。

─ ありがとうございました!

▲ミズノ コーポレーション(Mizuno Corporation)で人工芝開発をおこなっている、グローバルイクイップメントプロダクト部 用具開発課の太田昂貴さん(ミズノ提供)

■人工芝と環境問題が密接だなんて

という感じで、老舗スポーツメーカー・ミズノの人工芝の深〜いおハナシ。そして、「Green Planet」を使用したサステナブルな人工芝への挑戦。人工芝と環境問題がつながっているって、知っていましたか?

昨日テレビで見たあのスポーツ、実際に応援に行ったあのスポーツ、はたまたライブに行ったあの会場、普段に敷かれている人工芝が、実はミズノの人工芝だったのかもしれませんよね。

しかも、それが昨今の環境問題に対応したものだったら…と思ったりして、なんだかニンマリしちゃうのはワタクシだけでしょうか。

>> ミズノ

<写真&文/カネコヒデシ(BonVoyage)>

カネコヒデシ|メディアディレクター、エディター&ライター、ジャーナリスト、DJ。編集プロダクション「BonVoyage」主宰。WEBマガジン「TYO magazine / トーキョーマガジン」編集長&発行人。ニッポンのいい音楽を紹介するプロジェクト「Japanese Soul」主宰。 バーチャルとリアル、楽しいモノゴトを提案する仕掛人。http://tyo-m.jp/

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