■街ごとに“必ず違うもの”を見ると、歩くのが楽しくなる
ヤマケン:さっきから歩いていて、確かに通りごとに空気感が違うのが分かってきたがします。他にどんなところを見ればもっと楽しくなりますか?
平岩さん:街ごとに“必ず違うもの”を見るのもおすすめです。例えば街灯ですね。商店街が変わると街灯の形やデザインが全然違うんです。「ここは丸いな」「ここは角ばっているな」「ここは妙に凝っているな」とか。いいか悪いかじゃなくて、違いがあること自体が面白くないですか。

ヤマケン:あ、ほんとだ。通りによって街灯が違うなんて初めて知ったかも。
平岩さん:それから長く続いているお店の看板。今みたいに既製のフォントではないオリジナルな文字は時代の記録ですよね。そういうものを見つけるとつい立ち止まってしまいますね。
▲蒲田本町にある美容院「ヘアーショップ oneすてっぷ」。まさに店名を表すような軽やかなフォントがかわいらしい
ヤマケン:昔からある看板ってフォントからデザイナーさんがゼロから作ってることもありますもんね。なんだかノスタルジー感じてきたぞ。
平岩さん:歩いていると「この通りだけ雰囲気が違うな」とか、「この看板だけ時代が違うな」とか、細かい違いが自然と目に入ってくる。そういう違いが積み重なって「この街はどういうふうにできてきたんだろう」と想像してみたり。車や自転車だと通り過ぎてしまうようなものが歩いているとちゃんと見えてきて、意外な発見に繋がったりするんです。そういうところも魅力なんだと思います。
■ 持ち物は「ボトル」と「手ぬぐい」、時々「バックナンバー」
ヤマケン:私の場合街の不動産屋さんに張り出されている家賃や間取り図をつい見ちゃってるかも。街によって全然違くて面白いんですよねぇ。ところで、必需品はありますか?
平岩さん:必需品というほどではないのですがよく歩くので、まずは飲料水用のボトルですね。そして重要なのが“手ぬぐい”です。
▲古くから地元民に親しまれる天然温泉「蒲田温泉」。手ぶらセット(800円)もあるのでふらっと立ち寄れるのが嬉しい
蒲田のように昔ながらの風情が残る街では、銭湯や温泉に出合うことが意外と多かったりします。今回であれば、ここ「蒲田温泉」。こんな街中にありますが、天然温泉で地元の人以外にもわざわざ入りに来る人が多い温泉施設です。
歩いていると自然と吸い寄せられるので(笑)、困らないように手ぬぐいは常にバッグに入れています。荷物になりませんし、すぐに乾いて便利なんですよ。
ヤマケン:住宅街のど真ん中で温泉! これは確かに入らずにいられないかも。取材でなければ入って帰るのに…! ぐぬぬ。

平岩さん:本当にそうですよね(笑)。ちなみに、手ぬぐいはプリントより“染めもの”がこだわりです。プリントは使うほどボロくなりがちですが、染めはやわらかくなり、ほつれが落ち着き、少しずつ“自分の手ぬぐい”に育っていくのがいいんですよ。ご当地手ぬぐいがあるとつい買っちゃいます(笑)
ヤマケン:私地方の温泉巡りが趣味なんですが、ご当地手ぬぐいってなんで買っちゃうんでしょうね。ほかに持ち歩くものはありますか?
▲バックナンバーの地図を開いて今との違いを見るのも楽しい
平岩さん:宣伝というわけでは決してないんですが(笑)。たまに『散歩の達人』の“バックナンバー”を持ち歩くことがあります。昔の記事を片手に今の街を歩くと、「当時と変わらないもの」「変わったもの」が見えてくるんです。『散歩の達人』に限らず、古い旅行雑誌があるとこういう楽しみ方もできるんです。
ヤマケン:あ、それ面白いかも。
■ 散歩は“脳のキャッシュ”を消してくれる
ヤマケン:“まち歩き”が楽しいのは分かってきた気がしますけど、他にも何か良いことってあるんですか? 平岩さんはどういうときに歩きたくなりますか?
平岩さん:私は疲れている時ほど歩きます。なんというか、歩く一定のリズムの中で余計な思考が削れていき、“脳のキャッシュがクリアになる”ような感覚とでも言うんでしょうか。

歩いているとふと忘れていたタスクを思い出したり、新しいアイデアが浮かんだりもします。もしかしたら“散歩=高齢者の趣味”というイメージがあるかもしれませんが、老いも若きも良いところがたくさんあるんです。
ヤマケン:なるほどなぁ。クリエイターは煮詰まったら歩く、みたいな話を聞くことがありますけど、そういうものなのかも。ちなみに、“まち歩き”って痩せるものですか? 歩くから健康にも良さそうですけど。
平岩さん:うーん…むしろ逆かも。歩いてて雰囲気の良い喫茶店やお菓子やさんを見つけてしまうと、寄らないわけには行かないので(笑)。お風呂といい、なんでこんなに引力があるんでしょうね。
ヤマケン:(笑)。私もお肉屋さんにコロッケあったら必ず食べちゃうもんなぁ。一旦“痩せ”は忘れましょう(笑)
■ “まち歩き”ビギナーにおすすめエリア:谷根千と中央線沿線
ヤマケン:ほかにビギナー向けの街はありますか?
平岩さん:ベタですが、谷根千(谷中・根津・千駄木)はやっぱり歩いていて楽しいですね。古い店と新しい店がすごく近い距離で混ざり合っているので、「“まち歩き”ってこういうことか」と感覚的に分かりやすいんです。
昔ながらの商店や路地が残っている一方で、リノベーションしたカフェや新しいお店も自然に溶け込んでいて、少し歩くだけで景色が切り替わるようなイメージですね。その変化が歩く楽しさにつながっています。
ヤマケン:あ、大昔に谷中銀座は行ったことあります。当時上京したててで、あんまり良さが分からなかったけど、今行けばもっと楽しめそう。
平岩さん:今日みたいに肩肘はらずに、ふら~っとゆったり歩いてみたら良いと思いますよ。同じ理由で、中央線沿線もおすすめですね。西荻や吉祥寺のあたりは昔からの店と今の店が同じ通りに並んでいて、レトロと今が無理なく共存している印象があります。目的地を決めて歩いてもいいし、特に決めずに路地に入っても発見があるので、慣れていない人でも楽しみやすいと思います。
* * *
目的地へまっすぐ向かう移動を“まち歩き”に変えるのは、実はとても簡単と平岩さんは言います。気になった店に入ってみる、知らない路地に通ってみる、街のちょっとした部分を観察してみる。そんな小さな寄り道や視点の変化が、街の楽しさを一気に広げてくれます。ボトルと手ぬぐい、時々バックナンバーをバッグに入れて、今日は少しだけ遠回りして帰ってみませんか。

1月21日発売の大人のための首都圏散策マガジン『散歩の達人』2月号では、今回歩いた蒲田を含む「蒲田・大森・池上」エリアを特集。誌面では今回訪れたスポットをはじめ、実際に歩いてこそ分かる街の魅力がより詳しく紹介されています。まち歩きをきっかけにもう少し深掘りしてみたくなった人はあわせてチェックしてみると、次に歩くときの楽しみがさらに広がるはずです。
<取材・文/山口健壱(GoodsPress Web) 写真/高橋絵里奈 協力/散歩の達人>

山口健壱(ヤマケン)|キャンプ・アウトドアと動画担当。2年半ほどキャンプ場をぐるぐる回って、回り回ってGoodsPress Web編集部所属。“キャンプの何でも屋”としてキャンプを中心にライティング、動画製作、イベントMCなどを行う。田舎住まいで我まち歩きを知らぬ。これを機に近く学生時代を過ごした街を歩いてみようかな。
【関連記事】
◆「歩く靴」と「走る靴」の違いとは。アシックスの“ウォーキングシューズ”に詰まった機能を知る
◆正月太り解消、ダイエット、健康維持etc. 効果的なウォーキング法を知ろう
◆ご近所散歩から旅行の長距離歩行まで。ウォーキングシューズで歩くのがラク&楽しくなる
- 1
- 2































