
先述のとおり、那須エリアは、福島県白河市を中心に同心円状に広がるご当地麺「白河ラーメン」の勢力圏。
一例を挙げるだけでも、『手打焔』、『手打ちラーメンふくべ』、『白河中華そばよし川家』、『とらや分店』といったラーメン好きなら必食の名店から、2022年5月に開業した新星『白河手打中華そば緑川 とら食堂 那須塩原分店』、本場・白河市からの移転組である『中華そば葵』に至るまで、枚挙にいとまがないほどの白河ラーメン提供店が存在する。
そんな中、2023年2月に産声を上げ、ラーメン好きの間で瞬く間に評判となった店が、『白河手打中華 玲』。店主は、福島県白河市のレジェンド級名店『やたべ』で麺打ちを学んだ腕利きだ。
『白河手打中華~』という屋号からも一目瞭然だが、『玲』が提供する麺メニューは、もちろん白河ラーメン。現在、基本メニューの「手打中華」、及び、そのバリエーションである「ワンタン麺」、「チャーシュー麺」、「チャーシューワンタン麺」の計4種を用意。オススメは、チュルンとなめらかな衣が触覚を通じて快楽中枢へと訴えかけるワンタンが堪能できる「ワンタン麺」だ。
▲ワンタン麺
油断すると舌に火傷を負ってしまいそうになるほど熱々の状態で提供されるスープは、鶏をはじめとする動物系素材の“粋”が余白なく切り出され、終始、上質なうま味が味覚中枢を心地良くくすぐり続ける、会心の出来映え。カエシの風味も、色気のある香気が鼻腔に長時間とどまり続ける、「白河系」の王道。スープに香りを添える油の分量も絶妙な塩梅で、思わず感嘆の声が漏れ出してしまうほど高い完成度を誇る。
このスープとコンビを組む自家製手打ち麺も、コシの強さと舌触りの良さを兼ね備えた、『やたべ』の教えが十二分に活かされた逸品。当然のことながら、スープとの相性も申し分ない。
開業してから1年少々とは思えないほどの貫禄とオーラをまとった優良杯。こんな1杯を出されたら、スープの最後の一滴まで飲み干さざるを得ないだろう。
●SHOP INFO
店名:白河手打中華 玲
住:栃木県那須塩原市新南163-942
■宇都宮でもトップクラスの人気店『らあめん厨房 どる屋』

続いてご紹介するのは、県央エリアの宇都宮にあるお店『らあめん厨房 どる屋』。
冒頭で書いたように、宇都宮は「各店舗が提供するラーメンのジャンルが多種多様」という特徴がある。
例えば、栃木県で最初に訪問すべきラーメン店として名前が必ず挙がる『花の季』、箸が立つほどスープが濃厚なつけ麺が人気の『村岡屋』、神奈川県の淡麗ラーメンの名店『支那そばや』にルーツを有する『心麺』、創作色の強いハイレベルな1杯を安定的に提供する『麺藏藏』など、上位人気店の顔ぶれを見ても、各々が繰り出す1杯の味わいは千差万別だ。
また、宇都宮市は北関東最大の都市で、人口に比例するかのようにラーメン店の数も多い。当然のことながら、店舗間の生存競争も熾烈を極める。他のエリアであれば十分営業していけるだけの実力があっても、営業場所に宇都宮を選んだばかりに、他店に競り負け閉店の憂き目に遭う店舗も少なくない。
そんな宇都宮において、1996年の開業以来、一度も脱落することなくトップクラスの人気店として君臨し続けるのが『らあめん厨房 どる屋』である。同店を切り盛りする落合店主は、独学でこの店を開業し、その腕一本で同店をスターダムにまで押し上げたスゴ腕だ。
▲黄金の鯛塩バターらーめん
イチオシは「黄金の鯛塩バターらーめん」。「鯛らーめん」シリーズは、以前から「限定商品」として提供されていたが、2022年、晴れてレギュラー商品へと昇格。「黄金の鯛塩バターらーめん」も、そのバリエーションのひとつ。「ラーメンに西洋料理のエッセンスを採り入れたい」と、かつて辻調理師専門学校の門を叩いた店主が、試行錯誤を経てたどり着いた研鑽のたまものだ。
鳥取県境港で獲れた天然の鯛を一夜干しし、素材が有する等身大のうま味だけをクローズアップ。熱気球のようにふんわり膨らみ、軽やかに宙を舞う鯛の芳香は、その匂いを嗅いだだけで忘我の境地へと陥ってしまうほど魅惑的。
エシレの発酵バターがスープへと溶け出すにつれて、スープのコクとうま味が右肩上がりに増幅していく点もドラマティックだ。鯛のクセや生臭さを、ここまで綺麗に取り除くことに成功した“鮮魚ラーメン”は珍しい。「百聞は一食に如かず」。未訪の方はぜひ一度足を運んでみてもらいたい。
●SHOP INFO
店名:らあめん厨房 どる屋
住:栃木県宇都宮市中央2-8-6
■絶品スープと自家製麺が織りなす『岳乃屋』の「佐野ラーメン」

お次は、栃木県南エリアにおけるラーメンのまち・佐野市に店を構える実力店『青竹手打麺 餃子 岳乃屋(がくのや)』。佐野市は、言わずと知れた「佐野ラーメン」のお膝元。「佐野ラーメン」を提供する店舗だけでも、老舗から新店に至るまで100軒を優に上回る。
そのなかでも、『岳乃屋』の「ラーメン」は1、2を争う優良杯。「佐野ラーメン」の枠を超えて、広く「手打麺を用いた醤油ラーメン」というカテゴリーで捉えても、全国屈指の1杯だと考えて差し支えないだろう。さっそくその魅力をご紹介していこう。
栃木県南エリアにおけるラーメンのまち・佐野市に店を構える岳乃屋はの看板メニューはもちろん「佐野ラーメン」だ。提供する麺メニューは、「ラーメン」、「塩ラーメン」及びそれらのバリエーションと、「味噌ラーメン」もある。
歴戦のラーメンマニアをして「飛び上がるほど美味い!」とまで言わしめる「塩ラーメン」も傑作の誉れ高いが、初めてなら、実食すべきはやはりメニューリスト筆頭を飾る「ラーメン」だろう。
豚ガラと鶏ガラをじっくりと丁寧に炊き上げて紡ぎ出すスープは、口内へと飛び込んだ瞬間、スープの雫から放たれる上質で滋味深い味わいが、味覚中枢を幸福感で充たし、頬(ほっぺた)がベコっと落ちる感覚がまざまざと実感できるほどハイレベル。
▲ラーメン
そのあっさりした見た目とは裏腹に、飲み干した後、口腔に張り付くスープのうま味の余韻が、この上なく甘美かつ濃密であることも、驚嘆に値する。気を緩めると、あっと言う間に丼を空けてしまい、後悔するおそれアリだ。
このスープに合わせる麺も、秀逸のひと言に尽きる。不揃いな形状が朴訥なハンドメイド感を醸し出す、青竹手打ち仕様の自家製。麺の奥底から湧き上がる麦香も麗しく、いつまでもすすり続けていたい衝動に駆られること必至。
店舗のロケーションは、比較的至便。クルマで行くのがベストだが、最寄りの田沼駅(東武鉄道佐野線)から5分程度歩いてもアクセスできる。
●SHOP INFO
店名:青竹手打麺 餃子 岳乃屋(がくのや)
住:栃木県佐野市栃本町1492-2
■栃木・淡麗ラーメン界の名店 『中華そば とちの葉』

最後にご紹介するのは、2023年8月8日にオープンした栃木市の『中華そば とちの葉』。駐車場もあるが、最寄りの新栃木駅(東武鉄道)から徒歩約10分程度と、車がなくてもアクセス可能なロケーション。
先述のとおり、栃木県においては、県庁所在地である宇都宮市のみならず、小山市や栃木市でも多彩なラーメンが食べられる環境が構築されており、名のある店舗も複数存在する。『中華そば とちの葉』は、同じく栃木市内を代表する実力店『麺堂HOME』の2ndブランドであり、まさに、上記の要件に該当する店のひとつだ。
店舗外観は、ファザードを目にしただけで、類まれなセンスの良さが実感できるもの。蔵のまち・栃木市らしく、蔵をリノベーションして造られたスポットの一角を活用。ほど良い非日常感が訪問客の気分を高揚させてくれる。
カウンター8席のみの店内は、和の趣に満ちあふれ、着席した段階でテンションは最高潮に。提供される麺メニューは、「熟成醤油そば」、「純鶏出汁中華そば」など複数に及ぶが、最初に実食すべきは、メニューリスト筆頭を飾る「熟成醤油そば」だ。
▲熟成醤油そば
スープは、国産鶏の鶏ガラ・丸鶏・モミジのリッチな味わいが余白なく切り出された清湯出汁に、厳選し全国各地から取り寄せた醤油を贅沢に使用したカエシを重ね合わせたもの。鶏の骨太なコクを支えとしてグッと背筋を伸ばすカエシの芳醇な風味が、ダイレクトに快楽中枢へと訴えかける、繊細さと雄々しさを兼ね備えた盤石の構成。一度口を付けたが最後、レンゲを持つ手を止めることは困難だ。
地元・栃木市の製麺所『磯屋商店』へと特注したストレート麺のすすり心地も、この上なく滑らか。「栃木・淡麗ラーメン界の名手、ここにあり」。非の打ちどころが全くないその味わいから、店主のラーメンに懸ける情熱が垣間見えるような気がする。
●SHOP INFO
店名:中華そば とちの葉
住:栃木県栃木市嘉右衛門町2-11
●著者プロフィール
田中一明
「フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。47都道府県のラーメン店を制覇し、現在は各市町村に根付く優良店を精力的に発掘中。
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