脳はアルコールが好き? 専門家に聞いた「なぜ、こんなにもお酒は我々を虜にするのか?」

── さらに飲み進めてしまうと、体や脳にはどのような変化が起きるのでしょうか?

浅部:お酒を飲み続けると大脳皮質だけでなく、さらに脳のほかの部分(“海馬”や“小脳”)も麻痺します。 例えば、短期記憶を司る海馬が麻痺すると新しいことが覚えられなくなることも。海馬は一旦パソコンのRAMのようにメモリーとして記録し、寝ている間に深い記憶に書き換える役割を担っているからです。また、筋肉の運動調節を無意識に行っていられるのは小脳のおかげなのですが、麻痺するとうまく歩けなくなってしまうんです。大脳皮質が麻痺してその奥にある、本能を司る“大脳辺縁系”の働きが表に出てくると理性が飛んで本性がむき出しになってしまいます。

葉石:飲みすぎると飲んでいるときの記憶がなくなったり千鳥足になってしまったり、泣上戸や笑上戸になってしまうのはこの脳機能の麻痺に原因があるんです。

── ちなみに、酔っていると味覚も変わるのでしょうか?

葉石:味覚だけではなく嗅覚の働きも落ちます。実は、嗅覚というのは鼻から大脳皮質に直接上がっているんです。そのため、大脳皮質の働きが落ちるとともに嗅覚も鈍くなり、お酒や料理の複雑な美味しさがわかりにくくなってしまいがち。それで比較的感覚が残っている味覚に執着するようになり、しょっぱいものや濃い味付けのものが欲しくなるのです。

── なるほど。つい飲みすぎてしまうこともあるのですが、なぜでしょうか?

浅部:ドーパミンが出てハッピーになっている間はなかなかやめられない、という理由に加えてやはり理性的な判断を行う脳の部分がアルコールによって麻痺してしまっているからでしょうね。肝臓がお酒を“代謝・分解”するには結構な時間が必要で、1合飲んだとすると3時間くらいは体内に残りますし、意外と酔いは長く続くものなんですけどね。

葉石:なので、個人差はありますが“たくさん飲まないと酔えない、楽しめない”わけではなく、本来であれば適量でも十分楽しめるんです。

── 飲みすぎを防ぐ秘訣はあるのでしょうか?

葉石:やはり1番手っ取り早いのは物理的に飲む量を制限してしまうこと。ケースで買ってストックを作らず、“飲むときだけ買う”。あと、例えばビールなら“飲むと決めた本数だけ冷やす”、と工夫してみてください。また、アルコールには利尿作用があって体内の水分がどんどん出てしまうため、必ずチェイサー(和らぎ水)を合間に挟んで水分補給をすることも大事ですね。

浅部:アルコールとそうでないものを交互に飲む“ゼブラ飲み”という飲み方が海外でも流行り出しています。水を飲んでもすぐに酔いが飛ぶわけじゃありませんし、気持ちの良い具合が長く続くのでぜひ試してみてほしいですね。

── 何でも、長くお酒を楽しみ続けるための秘訣をまとめた書籍を出されたそうですね。

葉石:そうなんです。『お酒がいつまでも飲める「100年肝臓」になる秘訣を教えてください!』(主婦と生活社刊)という本を出しました。お酒を飲み続けながら丈夫な肝臓を自分で作る方法をインタビュー形式でまとめていたり、漫画も入っていたりで読みやすい内容になっていると思います。健康書でありながら“お酒を飲むな”とは一言も言っていないのが最大の特徴なので、お酒好きの皆さんにぜひ読んでいただきたいですね。

* * *

今回、お酒の“美味しい”、“楽しい”という感覚はアルコールによる脳への直接的な作用やホルモン分泌によってもたらされる、ということを科学的見地から教えてもらいました。アルコールが入ると脳の理性が麻痺してしまうため、つい飲みすぎてしまいがちですが、きちんと飲む量をある程度制限し、途中必ずお水を挟むといった工夫次第でお酒ともっと長く健やかに付き合っていけます。まずは買い溜めを止めること、ここからスタートしてみませんか?

<取材・文/山口健壱手柴太一(GoodsPress Web編集部) 協力/浅部伸一葉石かおり

 

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