プランターと土さえあればいい。ホムセンで聞いた「ベランダ菜園」のはじめ方と失敗しない育て方

<準備編>はじめてのプランター栽培、基本セットはこれだけ

「難しそうに見えますが、畑での栽培と違って、実はたった2つの道具だけ準備すればはじめられるんです」

大木さんがそう言いながら持ってきたのが、プランターと野菜用の培養土。

▲支柱を支えるフレームとインナー付きで名前の通り楽々

プランターのおすすめはアップルウェアーの「楽々菜園丸型380支柱用フレーム付」(1078円)。インナー付きなのでそのまま培養土をいれるだけでも水はけがよく、支柱を固定できるホルダーが備わっているので、背の高い作物も安定して育てられます。

▲「楽々菜園」はインナー付きで赤玉土なしでも水はけバッチリ。支柱を立てやすいフレーム付きなのでビギナーに関わらず人気のプランター

土については、例えばグリーンテックの「プランターで育てる野菜の土 15L」(503円)のように、「野菜用」や「プランター用」と明記されている培養土を選べば、排水性や栄養のバランスも問題ナシ。「楽々菜園丸型380支柱用フレーム付」にピッタリな容量です。あとは好きな野菜の苗を買えばOK。意外と簡単じゃない?

▲プランターで育てる野菜の土プランター向けに配合された培養土で手間知らず

「あとは成長に応じて液体または粒状の肥料を追加することで野菜の勢いを保ったり、野菜によっては茎を支える支柱などを追加で購入していきます。水やりを行いやすくするためのジョウロなどはお好みで」(大木さん)

▲ミニトマトやナスなどを栽培するなら支柱も3〜4本ほど必要。プランターや野菜によって直径や長さを選ぼう

他には、ミニトマトなどの背が高くなる野菜を育てるなら、第一ビニール「くき止めクリップ 10個入」(426円)があると便利。茎を痛めること無く支柱に固定できるので、大きく育っても倒れにくくできます。

▲支柱と野菜の茎を簡単に止めてくれるクリップ。背の高い野菜を作るなら必須級の便利さ

▼苗選びの基本は「小さく元気なもの」

次に苗を選んでいきますが、苗の選び方は野菜ごとに少し異なります。ナスやピーマンは、あまり大きくなっていない若い苗の方が、植え替えたあとに土になじみやすく、育ちはじめがスムーズ。一方、ミニトマトの苗は、花が咲いているくらいのものを選ぶと、生育が安定していて植え替え後も順調に育ちやすく、早く実がつきやすいというメリットが。

▲茎の下部分と上部分が異なる品種の接ぎ木苗。病気に強い品種と実なりの良い品種のハイブリッド

また、“接ぎ木苗”かどうかも、苗選びの重要な判断材料になります。接ぎ木苗はたいていラベルにその旨が記載されているため、表示を確認すればすぐに見分けられます。

<栽培編>“1プランター1株”が鉄則

ここまで揃えたらあとは植えるだけ! とその前に。プランターひとつに対して、何株植えるかがとても重要。大木さんによれば、「ナスやピーマンは、特に根がよく張る野菜です。同じプランターに2株入れてしまうと、土の中で根がぶつかって、どうしても養分や水を奪い合ってしまいます」とのこと。

野菜の根は思っている以上に広がりを持ち、見えないところで競争をはじめます。特にスペースが限られたプランターでは、1株ごとに十分な余白をとっておくことが、すこやかな育ち方につながります。

▲プランターではないが適当に育てすぎて混みに混み合った筆者のミニトマト。このあと隣のミニトマトと合体した

「葉が混み合ってくると、風通しも悪くなりますからね。湿気がこもると病気や虫も寄ってきやすくなるんです」(大木さん)

実際に筆者も、過去にミニトマトを2株並べて植えたことがありました。最初は問題なく見えたのですが、成長が進むうちに片方の根がもう一方のスペースに入り込み、茎も絡み合って手がつけられなくなった経験があります。

一見もったいなく思えても、“1プランター、1株”が基本。ゆとりをもって植えることで、育ち方も管理のしやすさも、ぐっと変わってきます。

<日当たりは“午前中だけ”で十分>

野菜の成長に大事な日当たりですが、「うち、朝しか陽が入らないんだけど大丈夫?」とか、「西日しか当たらないんだよね」なんて声もよく聞きます。

植物にとっていちばん大事なのは、実は“朝の光”。光合成がいちばん活発になるのが午前中なので、朝の数時間だけでもちゃんと育ってくれるんです。大木さんによれば「植物は朝日が上がってから11時ぐらいまでが成長時間なんです。西日は嫌うので、実は朝日が入れば午後は日陰でいいんですよ」とのこと。

西日は刺激が強すぎて、かえってストレスになることもあるので、朝日が入る場所にプランターを置ければ、それでOK。「一日中日が当たらなくても大丈夫」というのは、ベランダ栽培の大きな気楽さのひとつです。

▼水と肥料は、控えめすぎず、多すぎず

植物を栽培するうえで日々行わなければいけないことといえば、水やり。そして肥料の追加もあります。水やりは「毎日」と決めつけず、天候や土の乾き具合に応じて判断するのが基本。ただし夏場は蒸発が早いため、毎日朝か夕方にたっぷり水を与えてあげましょう。

▲野菜には「窒素」「リン酸」「カリウム」、PHを整える石灰が必要になるが、専用ブレンドの土や肥料なら悩まず使える

また、定期的に肥料を追加してあげると実つきや味が良くなります。液状の“液肥”は実がつきはじめた時期や、葉の色が薄くなってきたときに有効。一方、“粒状”は長持ちしやすいので定期的に撒いてベースを整えるのに最適。なので、基本的には粒状を使用し、状況に応じて液肥を使っていくのが良いでしょう。

ちなみに「夏場は水と一緒に肥料もどんどん抜けちゃうんですよ。“粒状”がベースで“液肥”で補うイメージです。葉の色が薄くなったら、肥料を足すタイミングです」と大木さん。

▲追肥で使う肥料にも色々あるが、野菜ごとに最適化されたモノも多いためビギナーでも安心

通常時の目安としては粒状肥料を2週間に1回ほどですが、夏場は葉の色や実のつき具合を見ながら、液肥でこまめに調整すると安心です。

<有機肥料と化成肥料の違いは即効性と持続性>

余談ですが、肥料には“有機”と“化成”があります。有機肥料はゆっくりと効いて持続性がありますが、比較的においが出やすいため、ベランダではやや気を遣う場面も。一方、化成肥料はにおいがなく、効果も比較的早く出ます。量の調整もしやすく、初心者が扱いやすい。

ベランダ栽培では、まず化成肥料からはじめ、慣れてきたら有機肥料を部分的に取り入れていくのも良さそうです。

▼虫対策は「寄せつけない」が基本

▲虫を寄せ付けないための忌避剤とついてしまった虫を取り除く殺虫剤がある

ベランダ栽培って、虫、気になりますよね。残念ながら多かれ少なかれ虫対策は必要不可欠。ただ事前に対策しておけば、被害はぐっと抑えられます。

「虫って、いったんつくと厄介なんですよ。だから入れないのがいちばんです。ネットをかけておけばかなり防げますし、ベランダなら小さいもので十分ですからね。スプレーの忌避剤と組み合わせるとなお良しです」(大木さん)

防虫ネットで虫の侵入を防ぐのが基本。ベランダでも扱いやすいサイズ選べば、設置のハードルも高くありません。また、忌避剤は天然成分ベースのものなど、初心者でも使いやすいタイプが市販されています。

▲殺虫剤を使用する際はパッケージにある用法用量をしっかり守ろう

また、殺虫剤もありますが、「野菜ごとの用法用量がパッケージに記載されているので、正しく使えば効果的です。とは言え、ネットと忌避剤で対策したあとの最終手段として考えておくといいでしょう」と大木さんは言います。

どうしても虫がついてしまったときだけ、殺虫剤を検討するのが無理のないやり方。スペースが限られたベランダ栽培では、まず「寄せつけないこと」を意識するだけでも、十分な効果が期待できます。

* * *

「ズボラでも、実はちゃんと育ちますよ! 面倒そうかもしれませんが、水をやって、支柱立てて、最低限でOKなのがプランター栽培のいいところなんですよ」と大木さん。今年こそは家庭菜園を! と思っているならこの機会にぜひチャレンジを。

ちなみに今回取材をしていて思った、ホームセンターで購入する一番のメリットは“その場で何でも聞ける”ということ。はじめ方もそうですが、育てているうちに出てくる疑問をまるっと解決してくれるのはビギナーとしてはかなり嬉しい。店舗によって、育て方をまとめた資料が置いてあったりもするので、興味があるならまずは足を運んでみるのが良さそうです。

 

<取材・文/山口健壱(&GP)>

山口健壱|キャンプ・アウトドアと動画担当。2年半ほどキャンプ場をぐるぐる回って、回り回って&GP編集部所属。“キャンプの何でも屋”としてキャンプを中心にライティング、動画製作、イベントMCなどを行う。家庭菜園2年生ですが、なぁんにも準備できてない…。

 

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