時計ジャーナリスト・篠田哲生が語る。今、「SATELLITE WAVE GPS F990」を買うべき理由【前編】

2011年に誕生し、世界限定990本が瞬く間に完売したシチズン「SATELLITE WAVE」。鮮やかなグリーンのインサートカラーと独創のフォルムが織り成すフューチャリスティックな意匠もさることながら、その魅力はやはり、人工衛星から時刻情報を受信して正確な情報を享受できるようになった世界初の革新的なシステムであろう。

あれから7年。シチズンはこの画期的なモデルを「SATELLITE WAVE GPS F990」として蘇らせた。その初代モデルが誕生した当時の時代背景や、最新モデルの魅力について、時計ジャーナリストの篠田哲生さんに話を聞くと、「SATELLITE WAVE GPS F990」を今買うべき理由が見えてきた。

 

■時間に対する日本の特殊な文化が生んだGPS衛星電波時計

▲時計専門誌からビジネス誌、ファッション誌、Webまで、幅広い媒体で腕時計の記事を執筆し、数多くの講演も行う時計ジャーナリストの篠田哲生さん。時計学校を修了した実践派でもある

「機械式時計の精度って、もはや正確に時を刻むというよりも“正確に動くこと”の指標になっている。つまりスマートフォンがある以上、時計が正しいかどうかはそれほど重要ではない。大切なのは精密にモノが動いていることであって、その証として精度がある。実際にヨーロッパに行くと分かりますが、電車は時間どおりに来ないし、お店も適当な時間にオープンします。要するに、そこまで正確な時間は求められていないというのが現実ですよね」

開口一番、このように説明する篠田さん。とはいえ、もちろんそれは海外の話。日本での事情は全く異なってくる。

「以前ニュースにもなりましたが、日本は電車やバスが3分早く出発してしまうだけで謝罪することになってしまう……。それくらい、日本では正確な時間に価値がある。世界的に見れば、本当の意味での“精度”が重要視されている特殊な国なんですよね」

それゆえ、正確な時間を求める日本において電波時計が支持されたのは必然だったといえよう。2000年以降、電波時計の進化は急速に進み、2000年代中盤以降になると日本国内の基地局のみならず、アメリカや中国、欧州でも電波を取得できる電波時計が誕生した。

「もちろん、電波時計は非常に便利なものです。しかし、その一方でエリアが限定されていたのも事実。エリアとは北半球の主要国だったわけですが、日本的な精度で考えると北半球という限られた地域だけではなく、世界中のあらゆる場所で高精度である必要があった。では、グローバル時代における高精度技術とは何か? その答えを求めたとき、衛星を用いることは必然であり、それが2011年の『SATELLITE WAVE』に結実したのだと考えています」

 

■「SATELLITE WAVE」は日本的高精度時計のマイルストーン

▲初代「SATELLITE WAVE」のコンセプトを継承しながら、機能、デザインともに大幅にブラッシュアップした「SATELLITE WAVE GPS F990」。写真は初代モデル同様、オーロラを想起させるグリーンを施したメインカラーのCC7005-16E(価格:34万円+税、世界限定1,500本)

こうして2011年のバーゼルワールドで発表されたのが初代「SATELLITE WAVE」。このモデルは、世界で初めて衛星からの時刻受信を実現して大いに話題となった。篠田さんもこのモデルを最初に見たときは衝撃を受けたという。

「アンテナや回路などの問題をクリアにしつつ、腕時計のサイズに収めているのは画期的でしたよね。しかも実用面では、電波受信に要する時間を約6秒に抑えている。人間って、便利になればなるほどわずかな許容量もなくなってしまうわがままな生き物なので、こうしたユーザビリティまで意識していたのはすごかったと思いますね」

▲初代モデル(左)と、「SATELLITE WAVE GPS F990」(右)。ダイヤルの表現はもちろん、ケースサイドの意匠やプッシュボタンの形状など、細かなデザインも進化を遂げていることが分かる

それまで、電波時計の進化を追い続けてきた篠田さんにとっては、まず世界初となる衛星電波のテクノロジーに目が向いたようだが、もちろん、デザインに対しても興味深いポイントがあったという。

「『SATELLITE WAVE』って、コンセプトモデルからスタートしているところに興味があったんです。コンセプトモデルって、ほとんどが絵に描いた餅で終わってしまうもの。とりわけいろんな技術が必要とされる時計は、最終的な形に落とし込むのが難しいはずなのに、それをやってしまったところに驚きがありましたね」

コンセプトモデルを製品化するにあたり、新規ムーブメントの開発や、セラミックケースの採用、そして時計のサイズなど、このモデルを完成させるために行われた工夫は単なる工夫で終わることなく、デザインとして非常に完成度の高いものになった。

「そういったパッケージングの妙に興味があったし、同時に技術にも興味があったからこそ、ロジカルな進化が見えて面白かったんです。結果的に世の中が一斉にGPSへと舵を切ったわけですから、『SATELLITE WAVE』は、今の、そして今後の日本的高精度時計におけるマイルストーンになったのではないかと思いますね」

 

■“らしさ”を残しつつ、大幅に進化した「SATELLITE WAVE GPS F990」

▲ロケットのエンジンに着想を得たという「SATELLITE WAVE GPS F990」のダイヤルは何枚ものディスクを配すことによって奥行きを感じさせるデザインに仕上がっている

 

そして、初代「SATELLITE WAVE」の登場から7年後の2018年。バーゼルワールドで突如発表されたのが「SATELLITE WAVE GPS F990」である。

「シチズンは復刻をしない……というか、常に前進していくイメージがあったので、最初にこのモデルを見たときは驚きましたね。とはいえ復刻ではない。このモデルはムーブメントも違うし、ケースも変えているんです。ムーブメントがF系になった時から金属ケースでも電波受信ができるようになり、ケースにはチタンを採用できるようになった。そしてケースをチタンにしたことで軽くなり、サイズバランスも良化し、結果、時計としての完成度が上がった。つまり正常進化をしているんですよね」

▲初代モデルではセラミックケースを採用していたために重く、装着時のバランスが悪かったが、「SATELLITE WAVE GPS F990」ではケースをチタンにしたことで軽量化を実現。装着感を大幅に向上させた

正常進化を最も感じさせるのが、篠田さんが語るようにムーブメントの変更と、それに伴うケース素材の変更だろう。

「初代モデルのH990のときは電波を受信する都合上、セラミックケースを採用して、そのためケースが厚かったりとか、重いとか、手首に巻いたときのバランスが良くないといったユーザーの声があったと聞いています。今回はムーブメントをF990にすることでチタンケースを使えるようになった。そのおかげで軽くなり、装着感がよくなったというのもあるし、また『シチズンといえばチタン』というイメージもあるので、このモデルで“らしさ”を出しているのもいいですよね」

▲2時位置と4時位置のプッシュボタンを同時に押すことで、ホームタイムとローカルタイムの入れ替えを可能にしている。入れ替え時における6時位置の針とディスクのスピーディかつダイナミックな動きは、視覚的な楽しさも

「また、GPSウォッチは他社でも展開していますが、そんななか、シチズンはずっとスピードを追求してきて、それは今回のモデルでも継承し、さらに高めています。電波取得の時間も、前作の6秒でもけっこう速かったと思うんです。それを今回は3秒に縮めているので、ユーザーの気持ちよさを理解しているんだと思います」

▲「SATELLITE WAVE GPS F990」は、キーカラーのグリーンCC7005-16Eに加え、宇宙空間を周回する人工衛星に着想を得たモノトーンカラーのCC7005-16Fと、ゴールド×ブラックの上品な佇まいが印象的な100周年記念モデル、CC7005-16G(価格はともに34万円+税、世界限定各1,500本)もラインナップ

「シチズンは『ザ・シチズン』のような製品に代表されるように真面目なイメージがありますが、一方で大胆なコンセプトモデルを具現してしまう面白さもある。だからユーザーには『真面目だけれども、これもシチズン』だっていう見方をしてほしいですよね。変わったものが登場したのではなく、こういうこともする会社だっていう……。伊達に100年やっていませんよね」

 

>> さらに詳しい篠田さんスペシャルトークの内容は、インタビュー【後編にて】
>> CITIZEN「SATELLITE WAVE GPS F990」

(取材・文/竹石祐三 写真:江藤義典)

 

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