開発陣に直撃!待望の“G-SHOCKカスタマイズサービス”はこうして誕生した!

ついに登場したカスタムオーダーメイドの「MY G-SHOCK」。豊富なバリエーションを持つG-SHOCKだからこそ、待ち望んでいたファンも多かったはず。そこで開発陣に本プロジェクト誕生の経緯から、開発時の裏話まで直撃インタビューし魅力を解き明かします。

■いかにしてMY G-SHOCKは生まれたのか?

▲上段が「シングル」、下段が「トリプル」の遊環

今回新たにローンチされた画期的なサービス「MY G-SHOCK」は、ベゼル19色、バンド19色、美錠2色、シングル遊環20色、トリプル遊環19色、フェイス7種から自由に選んで組み合わせ、「1本だけの、自分だけのG-SHOCK」を作ることができるというもの。その組み合わせは“シングル遊環”なら190万通り、“トリプル遊環”なら実に6億5800万通りに及びます。

▲バンドとベゼルが付け替え可能になった新シリーズ。本プロジェクトのきっかけとなった「DWE-5600CC-3JR」

サービスが生まれたきっかけは、2020年10月に発売された「DW5600CCシリーズ」で採用された“カーボンコアガード構造”。耐衝撃性・剛性という特性をもつカーボンを活かしたカーボンファイバー強化樹脂を用いた耐衝撃構造により、高強度でありながら軽量という優れものなのです。

MY G-SHOCKのプロジェクトを立ち上げた泉潤一さんは、こう話します。

▲泉潤一さん(カシオ計算機株式会社 羽村技術センター 開発本部 開発推進統轄部 プロデュース部 第一企画室 リーダー)

「『DWE-5600CC-3JR』を発売した際に、プロダクトだけではなくて、もう少しお客様に拡張したサービスとして届けられないか、と考えたところからスタートしました。G-SHOCKは基本的に、年間数百万個をグローバルにお届けするという生産方法になるんですが、このMY G-SHOCKは、1人の方のために1本のG-SHOCKを作ってお届けするという、従来とは対極にあるサービスとして誕生したんです」

▲左から、池津早人さん(カシオ計算機株式会社 技術本部 デザイン開発統轄部 Gデザイン室 リーダー)、泉潤一さん(同社 羽村技術センター 開発本部 開発推進統轄部 プロデュース部 第一企画室 リーダー)、丸 憲太郎さん(同社 技術本部 開発推進統轄部 第一開発推進部 11開発推進室 兼 デジタル統轄部 デジタル共創推進部 室長)

 

■最大6億5800万通りという膨大なバリエーションのカギは「トリプル遊環」

──本プロジェクトは従来の製造工程とは全く違うということですが、具体的には?

丸さん(以下、敬称略):このサービス用に開発したECサイトから、オーダーのデータを工場に転送して、この組み合わせを1本1本作り上げていくという仕組みを今回新たに起こしています。

▲EC上のカスタム画面でパーツカラーや素材を指定していく

弊社もこれまで、“ワン・トゥー・ワン マーケティング”といったお客さま一人一人に沿ったサービスということに関しては弱い部分ではあったんですが、デザインから製造、そしてお客様のご自宅まで配送するところまで、全てを繋ぐ仕組みを今回フルで新しく作りました。

──各セクションから100名以上がプロジェクトに参加されたとのことですが。

:最初は「そんなサービスが本当にできるのかなあ?」というところで、関わってもらったのも数人だったんですが、企画、デザイン、資材調達、配送と、いろんな部署や仲間を増やしていって、最終的にすごい人数で押し進んでいくことになりました。

──プロジェクトが進む上で苦労された点や、これまでなかった試みとして得られたフィードバックは?

池津:当初予定していたカラーは、実は半分以下だったんですよ。でも限られた数で組んでしまうと、想像を超えないというか、ごくごく当たり前のカラー、安心のカラーが揃ってしまうので、やってる自分たちも盛り上がらないよねってことになってきて。やっぱり楽しい方がいいよねということと、あとはG-SHOCKの歴史上のカラーも入れようということになって、どんどん数を増やしていきました。

:企画とデザインは自由な発想で意見を出してくれるんですが、開発に携わる身としては制御をかけざるを得なくて(笑)。10月に始めたいという強い思いを持って、カットさせていただいた部分もあるんですが、そこは今後の拡張性ということですね。──レギュラーラインだけでもかなり豊富だと思いますが、SPECIALラインと差別化した基準はどこにありますか?

:開発のきっかけになった5600系は初号機のDW5000Cの系譜になっていて、そこで最初に出したファーストカラーとして、3色を再現しました。ここにG-SHOCKの歴史の系譜を合わせ込んで、ストーリーをつけていきました。

▲上記3色は5600ファーストカラーの限定復刻パーツとして登場

池津:ここでは何十年も使ってなかった色を復活させているんですが、オリジンのカラーをしっかり再現するために、本物を手に入れるというところから始めました。当時のものが残っていない部分では、紙図面を引っ張り出したり、大先輩のところに行って記憶を辿ってもらったりといった作業もありました。

──デザイナーさんを中心に、特にこだわられたパーツを教えて下さい。

池津:やはり“トリプル遊環”ですね。通常のラインナップですと、ケースやベゼルと同じ色を並べてしまうところがあるんですが、楽しく自分だけのG-SHOCKを作るためには、差し色として入れたい色というのが必ずあると考えたんですよね。あと、開発段階で「あの国のカラーが作れない」「駅伝のあの大学のカラーがない」という声が出て、増えたところがあります(笑)。

:池津さん、いろんなスポーツのユニフォームをメッチャ調べてましたよね(笑)。今回の大きなテーマがワン・トゥー・ワンで共創したいというところなので、このトリプル遊環では特に、「自分とカシオとで一緒に作るG-SHOCKの醍醐味」が味わっていただけると思います。

▲「遊環の数を増やしすぎるときりがないんです(笑)」と丸さん

:ここも「3連を5連にしよう」とか、いろんなアイデアが出たんですよね。話してると、いろいろ広がって楽しいんですけど、その後のことを考えると、いろいろと……(笑)。

──カラーの組み合わせを選べる専用ECサイトが、使い勝手もよくて楽しいですね。

:お客様とサービスを繋ぐ役割として非常に重要だと思っています。ここもPCで見た場合と携帯で見た場合に色が合うのかとか、現物がお手元に届いた時にイメージと違うカラーだったら本末転倒ですから、検査体制も含めて様々なシナリオを考えて、非常に慎重に対応しています。

▲「デザイナーズレコメンド」など、ある程度組み上がったモデルからもカスタム可能だ

──今後、このサービスはどのように展開されていくのでしょうか。

:今回、G-SHOCKのコアである品質、耐衝撃、防水といったコアは全然揺るがないようにした上で、選ぶところからの楽しさや、本当に自分だけ、1本だけのG-SHOCKが届いたぞという、オーダーしてから届いて、その先使うところまでを新しい体験として味わっていただけるかなと。

逆にこれから、お客様からいろんな声が出てくると思うんですよね。「何でこれができないの」とか「もっとモデル増やして」とか。そういった意見交換がどんどんできるサービスかなと思っていますので、これからどんどん成長させていきたいですね。

■どんなモデルを作る?

さて、せっかくサンプルが揃っている場所での取材なので、実際にみんなで思い思いのG-SHOCKを作ってみました。

出身地に合わせた「なまはげ」モデル

:私は秋田の出身なので、『なまはげ』を表現してみました。開発の段階から、これは絶対やりたいと思っていたんです(笑)。ベゼルをHEART RED、バンドをDESERT SANDにして、トリプル遊環に差し色を入れて。このように、郷土愛や所属愛を表現するのも楽しいと思います。

▲泉さんセレクト「なまはげ」モデル

趣味を意識した「スキー」モデル

池津:私は趣味のスキーを表現してみました。ベゼルはARCTIC WHITEで雪面を表し、ロング・バンドはFOG MATEで綺麗なシュプールを、ショート・バンドはSTORM GREYで夜のゲレンデを表しています。そこにトリプル遊環のカクテル光線で、ゲレンデに自分の影が映ったようなイメージを演出してみました。このようにストーリーを出してみるのも面白いですよね。

▲池津さんセレクト「スキー」モデル

フォーマルに遊びゴコロをプラスした「アスファルト」モデル

:クルマが好きなので、アスファルトをイメージした“TIRE BLACK”で全体をまとめ、そこにトリプル遊環で信号機の3色を入れています。これならパッと見はシックなのでフォーマルな場でも使えて、なおかつ遊環の部分に遊び心も表現できていいのではないかと。

▲丸さんセレクト「アスファルト」イメージモデル

編集部・三宅は「釣りとキャンプ」イメージモデル

編集部・三宅は愛してやまないアウトドアを表現してみたくなり、バンドはFOREST GREENとDESERT SANDのアースカラーでキャンプを表現。そこにトリプル遊環のSTRATO BLUE、MIST BLUE、TIDE BLUEの「青三兄弟」で釣りを入れてみました。さらにベゼルのQUARTZ CLEARで水場での透明感をアピール。

「専用サイトは直感的な操作で簡単にカラーの組み合わせを変えられて、リアルタイムで10アングルから確認することができるので、画面を操作しているだけでもすぐに時間が経ってしまいます(笑)」

ああでもない、こうでもないと一人で試すのも楽しいし、仲間とワイワイやるともっと楽しい。しかもこれが世界に一本だけのG-SHOCKとして手元に届くとなると、ワクワクするなと言っても無理というものです。

>> MY G-SHOCK

<取材・文/高崎計三 写真/田口陽介>

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