未来を見据えたシェーバーの新しいカタチ デザイナーと設計者への取材で紐解くラムダッシュ パームイン大解剖

画期的なデザイン性と確かな実力で、発売以来注目を集め続ける「ラムダッシュ パームイン」。従来のシェーバー像を大きく覆した本機は、いかにして誕生したのか。デザイン、設計の両担当者への取材から、その開発秘話とこれからのものづくりの未来を探る。

パナソニック
ラムダッシュ パームイン ES-PV6A
オープン価格

まるでインテリアのようなコロンとした佇まいが目を惹くシェーバー。手のひらサイズのコンパクト性もさることながら、ヘッドにはラムダッシュ史上最速の高速リニアモーターやあらゆるヒゲを捉える5 枚刃を搭載しており、高い剃り味を実現している。なでるように剃れる新感覚の剃り心地も、持ち手がない本機だからこそ実現した魅力のひとつだ。IPX7 基準(※)の防水設計でバスルームでも使用可能。約W72×H57×D45mm、約145g

*パナソニックのシェーバー ラムダッシュにおいて。2023年7月24日現在

■デザイン性・機能性ともに秀でたシェーバーの“新常識”

▲丸みを帯びたシルエットは手に取ったときに持ちやすい。また、ハイグレードモデルのES-PV6Aにはイノベーティブ複合材「NAGORI」を採用。自然石のようにあらゆる空間にも馴染む見た目と柔らかな質感が特徴だ

▲従来のラムダッシュPROと同じ5枚刃を搭載しつつも、持ち手をなくし半分以下のサイズに。旅先や出張先へ携行しやすいのはもちろん、一般的なモバイルシェーバー以上の確かな剃り味を実現した

▲1回のフル充電で約14日間の使用が可能(1日1回、約3分間使用の場合)。また、充電端子はPCやスマホなど各種ガジェットにも多いUSB Type-Cを採用しているので、旅行時には荷物削減にもつながる

 

■「引き算のデザイン」が直感的なシェービング体験を叶えた

パナソニック株式会社
くらしアプライアンス社 ビューティ・パーソナルケア事業部
パーソナルビジネスユニット パーソナル商品部
村木健一さん

 

 

パナソニック株式会社
くらしアプライアンス社 くらしプロダクト
イノベーション本部 デザインセンター
別所 潮さん

 

 

近年の電動シェーバーといえば、剃り性能ばかりが重視されデザイン面で革新的な変化は少なかった。そんな一種の“成熟感”があった市場に新たな風を吹き込んだのが、パナソニックの「ラムダッシュ パームイン」だ。シェーバーの持ち手をなくすという大胆な発想はコンパクト性や撫でるような使用感を叶え、自然石のようで中性的な佇まいは、あらゆるシーンや令和の時代に馴染むようデザインされている。この製品が生まれた背景には、ユーザー調査から得た気づきがあるとデザインを担当した別所さんは話す。

▲「持ち手をなくす」という着想は2017年に技術部門が作った試作品から。このプロトタイプをもとに、「引き算のデザイン」を実践したアイコニックな製品が生まれた(画像提供:Make New Magazine)

「これまでのシェーバー開発は、機能を積み上げていく、いわば“足し算のデザイン”でした。しかし、今一度原点に立ち返り数多く行われたユーザー調査を見ると、従来機にはグリップや首振り機能があるにもかかわらず、ヘッドを直接持って剃っているユーザーが一定数いることが判りました。その気づきから、グリップをなくす“引き算のデザイン”が始まり、パームインの最大の特徴である直感的なシェービング体験につながっています」(別所さん)

デザイン起点で生まれたパームインの企画はその後、社内の検討会議で提案、製品化へと進んだ。設計を担当した村木さんは「この大きさでは必要な機構が入らないと思いました」とデザイン案を受け取ったときの印象を振り返る。

「ただ、これまでにないデザインで『何としても実現したい!』とも思いましたね。設計上の課題は大きくふたつで、ひとつは剃り性能の確保と大きさの両立。これは剃り機能以外の絞り込み(引き算の設計)、基板三分割による効率的なスペース活用などにより解決しました」(村木さん)

▲「パームイン」の内部構造が分かる断面サンプル。基盤を三分割することで限られたスペースを有効活用している(画像提供:Make New Magazine)

「ラムダッシュのコア技術は、研ぎ澄まされた“日本製の鍛造刃”と、パワフルさを保ちつつも小型化を達成してきた“リニアモーター”です。これらの技術がすべてヘッドに集中していたため、ヘッドを自由かつ柔軟に動かし、肌に追従する首振り機構を実現できたんです。今回はこのアプローチを逆手に取り、コア技術を手のひらサイズに収めることで、指先の微細な動きでも確実に剃れるシェーバーを開発できました」(別所さん)

これは言い換えれば、性能が確保されていないと成り立たない剃り方を、パームインは実現しているということ。サイズこそコンパクトだが、その実力はむしろハイエンドモデルに近いと言える。

▲日本製の鍛造刃や小型化されたリニアモーターなど、ラムダッシュの“強み”がヘッドに集中していたからこそ、かつて無いコンパクトさとパワフルな剃り味が両立できた(画像提供:Make New Magazine)

「ふたつめの課題は石目調デザイン(見た目、質感)の実現です。これは新材料『NAGORI』が解決してくれました。そのほかにも材料や工法を何種類か検討しましたが、質感と品質を高いレベルで実現できたのは『NAGORI』だけでしたね。狙いの模様を出すため、デザイン、設計、金型、成形部門が一丸となり、素材の配合、成形条件を何度もトライ&エラーしてようやく実現しました」(村木さん)

この自然石のような模様は性質上ひとつとして同じものが存在しない。マスプロダクトである以上、安定した外観品質を提供すべく半年以上ものあいだ配合の最適解を追求したという。そのこだわりがあったからこそ、パームインは名実ともに唯一無二の価値を見出せたのだ。パナソニックが68年培った技術を注ぎ込んだ最新のパームインは、開発チームが目指すシェーバーの「未来の定番」の先駆けになるのは間違いない。ぜひ手にとって、他にはない使い心地を体験してみてほしい。

 

■新たに採用した陶器のような素材「NAGORI」とは?

「パームイン」に使用している「NAGORI」は、三井化学によって作られた新規複合材料。海水由来のミネラル成分を、独自のコンパウンド技術を用いて樹脂と混合することで作られる。樹脂でありながら陶器のような質感と熱伝導性を持ち、それでいて陶器では難しい複雑な形状を作ることが可能だ。「実現したかった“石”のようなひんやりとした質感がありつつ、通常の家電と同じように射出成形で加工できることに感銘を受けました」(別所さん)

▲海洋ミネラルを配合し作られる「NAGORI」のペレット。もともとは真っ白な素材だが、「パームイン」では大理石のような模様を表現するため、ほかに色のついたペレットを独自に配合し、使用している(画像提供:Make New Magazine)

▲「パームイン」は素材の特性上、一つひとつの模様に個体差が生まれる。特徴的な模様をきれいに見せるため、いくつもの成形試作品を大理石のサンプルと比較。試行錯誤を繰り返し、品質や統一感を担保できるようこだわり抜いた(画像提供:Make New Magazine)

※:IPX7基準(水深1メートルに30分間水に浸けても有害な影響を生じる量の水の浸入がない)検査をクリアしています。

>> パナソニック ラムダッシュ パームイン ES-PV6A

 

<撮影/湯浅立志(Y2)>

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