2025年4月16日、ロボット掃除機ルンバの新製品発表会が開催されました。「ルンバ史上最大の新製品発表」と銘打たれたとおり、発表された新製品は6機種・9モデルと過去最多。かつ新たなカテゴリー区分・価格設定・機能ともにこれまでになかった刷新ぶりです。長年ルンバの新製品を見続けてきましたが、正直言って“過去イチ”驚いた発表会ですよ。

発表会には、2024年5月に就任したゲイリー・コーエン新CEOも来日。経営に関しての懸念を払拭するとともに、「開発、製造方法の一新」「消費者にフォーカスし、全ての価格、機能の見直し」「市場投入スピードの向上」など、製品についての改善を発表しました。
家電ライター・コラムニスト/小口覺さん
日本では2003 年に発売されたルンバ初代モデルから使用。自慢できる家電「ドヤ家電」の名付け親。著書に『ちょいバカ戦略−意識低い系マーケティングのすすめ−』など。
■カテゴリーは3つでよりわかりやすく

大幅に刷新されたラインナップは、ターゲットごとに3つのカテゴリーに区分けされました。
まずは普及価格帯の「Roomba」で、主に単身世帯や、シンプルな間取りの家庭、コスト重視のユーザをターゲットにしています。「無印ルンバ」とでも呼べばいいでしょうか。
ミドルレンジの「Roomba Plus」は、子育てファミリーや複数の間取りの家庭が主なターゲット。
そして、フラッグシップの「Roomba Max」は、史上最高の吸引力と清掃力を謳い、ペットオーナーやカーペットが多い家庭をターゲットにしています。
無印、Plus、Maxと、どこかのスマートフォン製品を彷彿とさせますが(笑)、理解しやすく覚えやすいのではないでしょうか。
技術的な注目点としては、今回の新製品は、全機種がレーザー光を使用して物体までの距離や形状を計測するLiDAR(ライダー)センサー(ClearView LiDAR)を採用。これにより、部屋の間取りを認識するマッピングの速度が著しく高速化。マップの精度も向上し、AIによってリビングや寝室といった部屋の種類も自動で判別してくれます。では、それぞれのカテゴリーごとに製品を見ていきましょう。
■無印「Roomba」は全モデル拭き掃除対応の2in1
無印の「Roomba」カテゴリーは、最も手頃な「Roomba 105 Combo ロボット」(3万9400円)と、ゴミ収集ステーション付属のオンライン限定モデル「Roomba 105 Combo ロボット + AutoEmpty 充電ステーション」(5万9200円)、ゴミ圧縮機能搭載の「Roomba 205 DustCompactor Combo ロボット」(5万9200円)の3機種。
▲「Roomba 105 Combo ロボット + AutoEmpty 充電ステーション」
全機種とも、モップパッドによる拭き掃除に対応した2in1モデル。最も安いモデルは3万円台と、なかなかの価格競争力です。また、ホワイトとブラックのカラーが用意されています。見た目で選べるのも、エントリーカテゴリーとして必要な条件ではないでしょうか。
▲「Roomba 205 DustCompactor Combo ロボット」
無印「Roomba」の中でも、特に注目したいのが「Roomba 205 DustCompactor Combo ロボット」(以下、Combo 205)。本体内部に約60日分のゴミを貯め置ける、世界初の機械式ゴミ圧縮機能「DustCompactor」を搭載しています。もう、掃除が終わるごとにダストボックスを空にする必要はありません。
▲中央が「Combo 205」のダストボックス。緑色のパーツが左右に動くことでゴミを圧縮。右にある綿がすべて収まりきるという
充電ステーション側にもゴミを収集する機能を必要としないので、非常にコンパクト。設置の自由度が増すメリットもあります。例えば、家具の下などに設置することが可能ですし、廊下などに設置しても邪魔になりにくい。また、充電ステーションがゴミを吸引する際の音もありません。日本の住環境ではありがたい機能です。
■拭き掃除能力の高い全部入り「Roomba Plus」
ミドルクラスの「Roomba Plus」は、「Roomba Plus 405 Combo + AutoWash 充電ステーション」(9万8800円)と、「Roomba Plus 505 Combo ロボット+ AutoWash 充電ステーション」(12万8400円)の2機種。

これまでのルンバにはなかった回転式のモップパッドを搭載し、ゴミの回収はもちろん、モップパッドの洗浄と乾燥、自動給水を自動化した充電ステーションも付属しています。ゴミの収集は最大75日分。充電ステーション内にゴミが溜まるのを防ぎ、清潔さを保つ「セルフクリーニングサイクル」機能も搭載されています。
▲大判で厚手のモップパッドは、いかにもパワフル。床面の状況にもよるが、これまでの全てのモデルの中で最大の拭き掃除能力を持つという。じゅうたんやラグを検知すると、モップを1cmほど浮かせて汚れを回避する機能も備える
Plusと言いながら、ロボット掃除機に求められている機能がほぼ入っている、“全部入り”モデルです。

ちなみに、「Combo 405」と「Combo 505」の違いですが、「Combo 405」はオンライン販売専用。「Combo 505」は、モップパッドが必要に応じて外側に移動し、壁の際まで掃除する「PerfectEdge」を搭載し、充電ステーションの乾燥機能も温風でより短時間で完了します(「Combo 405」は送風乾燥)。
■掃除能力を究極に高めた「Roomba Max」
フラッグシップの「Roomba Max」は、新製品「Roomba Max 705 Vac ロボット + AutoEmpty 充電ステーション」(9万8800円)。モップがけ機能はなく、吸引に特化したモデルです。いわば、従来のルンバの正常進化版といった趣です。

ルンバ史上最高の清掃力(最大180倍)を実現。とにかく、ゴミやホコリ、ペットの毛や毛髪などを床から取り除きたいユーザーに向けています。

充電ステーションは従来のモデルに比べてコンパクト化され、設置のしやすさや見た目のスマートさが向上しています。しかも、フラッグシップモデルながら、価格は10万円を切っています。
▲最上位モデルなので、ゴム製デュアルアクションブラシは外せない
■アイロボットの“本気”が伝わってきた
以上、ざっくりとルンバ最新モデルラインナップを紹介してきましたが、これまでのルンバとはかなり異なる印象を持たれた人も多いのではないでしょうか。
▲あまりの刷新ぶりに、聞きたいことが山ほど出た取材だった
その背景には、競争が激化しているロボット掃除機の市場環境があるでしょう。価格はもちろん、エントリーモデルから水拭き機能を備えるなど、ライバルに対して真っ向勝負する現実的な進化となっています。さらに、充電ステーションの小型化や、ルンバ内部にゴミを圧縮する機能など、日本の家庭でも好意的に受け入れられるような進化も見られます。かなり本気の刷新で、これまで様々な理由で、ロボット掃除機の導入に否定的だった人にも興味を持ってもらえるラインナップになっているのではないでしょうか。
>> アイロボット
<取材・文/小口 覺 写真/逢坂 聡>



























