時刻を知るだけなら、スマホでいいのかもしれない。それでも僕らが腕時計を身につけるのは、そこに“道具を持つ喜び”があるから。
そんな思いに応えるように、シチズンが新たに生み出したのが、アナログとデジタルが共存する“コンビネーションウオッチ”だ。
■アナログ×デジタルの融合が生んだ“本気仕様”。シチズン「プロマスター」が示す、タフウオッチの現在地
▲「JV2000-51L」(14万3000円)/ケースサイズ:43.0mm、厚み:13.8mm、キャリバー:U830(光発電エコ・ドライブ)、月差±15秒、持続時間:光発電約3年(パワーセーブ作動時)、SSケース、20気圧防水、耐磁1種
コンビネーションウオッチとは、ひと言でいえばアナログの針とデジタル表示、それぞれの強みを一つに融合させた存在。
緻密に組まれたダイヤル構成と、明快な情報を映し出す液晶表示は、その両立を象徴するものであり、合理性と遊び心を兼ね備えた設計こそ、このモデルの真価である。
サングラス 6万8200円/ディータ(オプティカルテーラークレイドル青山店)
▲プロマスター コンビネーションウオッチの変遷。左から1994年モデル、2000年モデル、2011年モデル/シチズン提供
ちなみに、コンビネーションウオッチは今回が初めての取り組みではない。プロマスターの歴史の中で繰り返し採用され、航空やアウトドアなど幅広い分野で信頼を得てきたフォーマットである。
その独自の表示方式と多機能性は、ブランドを象徴する存在として高い評価を集めてきた。
■デジタル機能が、本格パイロットウオッチをさらに“使える道具”に変える
ここで改めて、「プロマスター」というブランドについて触れておきたい。プロマスターは、陸・海・空それぞれのフィールドに特化した時計を展開してきた、シチズンが培ってきた本格ツールウオッチの象徴である。
その中でも空を舞台にした“SKYシリーズ”は、航空機の計器を思わせるデザインを特徴とする代表格。回転ベゼルに搭載された航空計算尺機能は、デザイン上のアクセントであると同時に、飛行距離や燃料消費率などの計算ができる“実用ツール”でもある。
今回の新作「JV2000-51L」も、その系譜に連なる一本。アナログとデジタルを併せ持つダイヤルは、一見複雑ながらも情報が整理されて表示され、道具としての合理性を感じさせる。
また、本作は多機能モデルでありながら、操作は直感的に行える点に注目したい。中央のボタンを押してモード切替状態にした後、上または下のボタンでモードを選び、再び中央のボタンで決定する。
わずか3つのボタン操作だけで、必要な機能に迷わずアクセスできるのが魅力だ。
シャツ 9990円/アンフィーロ(オンワード樫山)
そして、数ある機能の中でも、とりわけ頼もしいのが「ワールドタイム」だ。写真のように、東京とニューヨークを同時に表示できれば、出張や旅行時はもちろん、遠く離れた仲間や家族との時差も一目で把握できる。

さらに、アラーム、クロノグラフ、カウントダウンタイマー、バッテリー残量表示など、さまざまな便利機能を搭載しており、道具としての信頼性を高めている。
そして、新採用のMIP液晶は、従来よりも細かいドット数で表示できるようになったことで、暗所でもくっきりと視認できるうえ、QRコードの表示まで可能にした。必要なときにすぐ取扱説明書にアクセスできるのは、多機能モデルを扱ううえで大きな安心感をもたらす。
視認性と実用性を兼ね備えた、現代的なパイロットウオッチの姿がここにある。
▼見た目以上の本格派。緻密な造形と航空機を思わせる設計が、手元に説得力を与える
盤面にぎっしりと配されたインダイヤルや航空計算尺は、一目で“プロ仕様”を印象づける。
なお、ケース径は43mm。40mm以下のコンパクトなモデルが主流のいまだからこそ、むしろこの存在感が「腕時計を身に着けている」という確かな実感を与えてくれる。
フライトジャケット 5万5000円/アヴィレックス(Avirex 新宿店)、パーカー 7990円、デニムパンツ 1万2980円/ともにアンフィーロ(オンワード樫山)
ケースとブレスレットは、ヘアラインとポリッシュを丁寧に磨き分けることで上質感を生み出し、腕時計として高い完成度を誇っている。
また、ブレスレットは航空機の翼をモチーフにした造形となっており、こうした細部の意匠が日常の気分をさりげなく高めてくれるだろう。
パイロットウオッチらしい機能性を突き詰めつつ、ディテールの完成度が高いため、思いのほか多様なシーンで身につけられるのが「JV2000-51L」の魅力。
そして、先に触れた堅牢な設計や緻密なダイヤルパターンに加え、ボタンを操作するアナログ的な楽しさと、高精細なデジタル表示が融合することで、“使う楽しさ”と“身につける喜び”を同時に味わえる稀有な一本だ。
■同じ中身でも、まとう印象はそれぞれ。選ぶ楽しみはここにもある
▲「JV2006-55H」(14万8500円)/ケースサイズ:43.0mm、厚み:13.8mm、キャリバー:U830(光発電エコ・ドライブ)、月差±15秒、持続時間:光発電約3年(パワーセーブ作動時)、SSケース、20気圧防水、耐磁1種
中身は同じながら、今回のコンビネーションウオッチは全3色を展開。そのひとつが「JV2006-55H」だ。
黒に近いグレーのダイヤルが全体を落ち着いた印象にまとめ、仕上げの妙も相まってシンプルな上質感を引き立てている。
写真のように、シャツジャケットにタートルネックを合わせたスタイルにもすっと馴染み、知的で落ち着いた雰囲気を漂わせる。
ブルーのモデルに比べると控えめな主張だが、そのぶん幅広い装いに合わせやすい万能さを備えているのが魅力。
シャツブルゾン 1万3990円、タートルニット 6990円/ともにアンフィーロ(オンワード樫山)パンツ/スタイリスト私物
▲「JV2005-58E」(15万4000円)/ケースサイズ:43.0mm、厚み:13.8mm、キャリバー:U830(光発電エコ・ドライブ)、月差±15秒、持続時間:光発電約3年(パワーセーブ作動時)、SSケース、20気圧防水、耐磁1種
もうひとつの選択肢が「JV2005-58E」だ。ケースからブレスレットまでをブラックで統一した外装は、シリーズの中でも特にタフな印象を与える。
グレーPVD加工を施した仕上げは落ち着いた質感を持ちながら、光の角度によってわずかな艶を見せ、道具らしい武骨さと奥行きを同時に感じさせる。
ブラック系アウターと合わせれば一体感を生み、シンプルな装いの中で存在感を放つ。カジュアルなシーンでラギッドさを強調する一本である。
ブルゾン 2万2990円、カットソー 6990円、パンツ 1万2980円/すべてアンフィーロ(オンワード樫山)
■この腕時計は使いこなしてこそ。プロマスターが思い出させてくれる、“道具”としての本懐
▲左上:「JV2005-58E」、中央:「JV2000-51L」、右上:「JV2006-55H」
3つのバリエーションが揃う今回のコレクションは、カラーの違いによって表情を変えながらも、“道具としての本質”は共通している。アナログとデジタルの融合、多機能を直感的に操れる操作性、そしてプロマスターらしい堅牢さ。それらが一体となって、日常からフィールドまでを支える一本となる。
いま、改めて腕時計を「使う楽しさ」で選ぶなら。プロマスターのコンビネーションウオッチは、その最良の答えを示している。
<取材・文/若澤 創 写真/村本祥一(BYTHEWAY) スタイリング/宇田川 雄一>







































