【日産 セレナNISMO試乗】さすがはワークス直系!コレはミニバンの形をしたスポーツカーだ!!

■ベースモデルよりも乗り心地がいいNISMO仕様

NISMOといえば、日産自動車のモータースポーツ活動を支えるメーカー直系の組織。メーカー系チームとして“スーパーGT”を始めとするレースに参戦するほか、競技用やサーキット走行用のチューニングパーツを開発・販売するのが主な役割だ。

またそれと並行し、NISMOのブランド名を掲げる、特別な市販車の開発も行っている。その代表格といえば、なんといっても「GT-R NISMO」だろう。世界第一級の走行性能を備えたGT-Rをベースに、さらに走りのパフォーマンスを高めるモデファイを施したスペシャルモデルで、エンジンはペースモデルに対して30馬力アップの600馬力に到達。価格は1500万円を超えるとんでもないスーパーマシンだ。

一方、もう少し手の届きやすい価格帯で「マーチ」や「ノート」などにNISMO仕様を展開。ベース車とは異なるエンジン(排気量を上げている)も用意するなど、その作りは本格的。海外では、日本で販売されていない大型SUVの「パトロール」にまでNISMO仕様を用意し、大人気を集めている。

今回試乗したセレナNISMOは、ミニバンのセレナをベースに、NISMOがカスタマイズを施したモデル。もちろん、全国の日産ディーラーで普通のセレナと同じように購入できるし、保証だって通常どおり付いてくる、セレナのグレードのひとつだ。

ベース車に対するカスタマイズメニューは、エアロパーツ、インテリアパーツ、サスペンション、そして、タイヤ&ホイールと多岐に渡る。また、専用チューニングコンピューターとスポーツマフラーの採用で、アクセル操作に対するエンジンの反応も良くなっている。

実車に接してまず目につくのは、エクステリアだ。専用の前後バンパー、フロントグリル、リアスポイラー、そして、車体側面下部のサイドシルプロテクターにより、NISMOのレーシングカーを想起させるスタイルに変身。単に、見た目をスポーティに仕立てただけでなく、空力抵抗を増やさずにダウンフォースを増大させることにも成功。速度を高めていった際、車体が浮き上がるのを抑えて走りを安定させる、まさに“走りに効くスタイリング”なのである。

インテリアも、ベースモデルとは異なる。アクセントとして、ステッチやシート表皮などに赤の挿し色をプラスしているのに加え、これまたレーシングカーをイメージしたバックスキン調の素材を、インパネやステアリングホイールなどに使用。また、クルマ好きなら「おおっ!」と思わず笑みが出そうになる、ステアリングホイール最上部の赤いマーキングは、競技車両でステアリングの中立位置を瞬時に把握できることを目的としたマークを再現したものだ。そういった細かい演出でも、セレナNISMOはクルマ好きを楽しませてくれる。

しかし、このクルマの最大の魅力は、なんといっても走り。その走りには“想定内”と“想定外”がそれぞれあった。

まずは想定内のこと。いうまでもなく、スポーティなのである。締め上げられたサスペンションは、曲がる時にはベースモデルよりもスッと反応よく向きを変え、旋回中も車体の落ち着きがいい。背の高いミニバンのウィークポイントである、フラフラする感覚が少ないのだ。ベースモデルよりも、ずっとずっと走りを楽しめる味付けで、これこそが、ミニバンの形をしたスポーツカーと感じた所以だ。

一方、想定外だったのは乗り心地の良さ。スポーティな仕立てなので、さぞかし乗り心地は悪いだろうという予測は、あっさり覆された。ベースモデルに比べると、スプリングやショップアブソーバーは絶対的に硬めのセッティングなので、路面の凹凸を超えると車体の上下動を感じるが、その動きの収束が優れているから、不快には感じない。路面の段差や、橋などにある継ぎ目では、ベースモデルよりもしなやかに衝撃を吸収してくれるほどで、はっきりいって、ベースモデルよりも乗り心地がいいのだ。これなら家族や同乗者に怒られる心配はないだろう。

スポーティに走れるのに乗り心地がいい。そんな極上のドライブフィールを実現した秘密は、剛性アップを実現した車体だろう。専用開発のサスペンションを装着するのはもちろん、製造時に、メンバーやブレースなどで車体補強を施すことで、ボディのねじれを抑えるとともに、衝撃をしっかりといなす高剛性ボディを作り上げたのだ。

セレナNISMOは、ミニバンの形をしたスポーツカーだ。しかし、実際に乗ってその上質な乗り心地を体験すると、スポーツカーというよりも、実によくできたファミリーカーであると実感する。クルマの開発において、運動性能の向上と乗り心地の向上はどちらも正義であり、双方の水準がベースモデルと比べて引き上げられていることに、セレナNISMOの真髄を見たような気がする。実に完成度が高いのだ。

ただし、見るからにハデなエアロパーツは、好みが分かれるところかもしれない。もし「走りの良さは魅力だけどハデすぎて買えない」と感じるなら、別シリーズとして用意されている「セレナAUTECH SPORTS SPEC(オーテック スポーツスペック)」を選ぶという手もある。

こちらは、セレナNISMOと同様のボディ補強やサスペンション変更を実施しつつ、よりコンフォートなタイヤを履いて、ひと際快適性を高めたドライブフィールがポイント。内外装がプレミアム仕立ての“オトナ仕様”なのだ。こちらも追ってレポート予定なので、楽しみにしていただきたい。

<SPECIFICATIONS>
☆NISMO
ボディサイズ:L4805×W1740×H1850mm
車重:1720kg
駆動方式:FF
エンジン:1997cc 直列4気筒 DOHC
最高出力:150馬力/6000回転
最大トルク:20.4kg-m/4400回転
トランスミッション:CVT
価格:341万9280円

(文/工藤貴宏 写真/ダン・アオキ)


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