アップル「HomePod(第2世代)」レビュー。アマゾン「Echo Studio」と機能・音質比較も

■スマートスピーカーは音楽リスニングが主役

そもそも「スマートスピーカーって、みんな何を目的に買うの?」と思う人もいるかもしれません。

「ヘイ、Siri」で話しかけていろいろとコントロールできるアップル「HomePod(第2世代)」は、初代の国内販売から数えて4年となるスマートスピーカーです。またライバル製品として用意したAmazon「Echo Studio」もスマートスピーカーになります。どちらの製品も踏まえつつ考えてみると、スマートスピーカーの機能は次の3つに集約できます。

1. 部屋で音楽リスニングをするホームスピーカー

2. 自社のTV系デバイスと連携してサラウンド化

3. 照明やスマートホームの連携

とはいえ、スマートスピーカーの利用シーンで圧倒的に多いのが1の音楽リスニング。2は、2台購入が必要だったりとハードルが上がる発展的機能。3は所有している家電次第になります。

そこでまずは、シンプルな音楽リスニング面で「HomePod(第2世代)」を1台で見ていきます。

直径14.2cm、高さ16.8cmとワイヤレススピーカーとしては大柄ですが、アップル製らしい美しいデザイン。バッテリーは入っていないので、ポータブルではなく据え置きです。

▲アップルらしさを感じる網目のファブリック素材

内蔵スピーカーは、カスタム設計の高偏位ウーファー、振動板を20mmで振動させるパワフルなモーター、低音イコライザーのマイク内蔵、基部に配置された5つのビームフォーミングツイーターのアレイを搭載。S7チップとソフトウエアによる音響補正も全面的に取り入れていて、設置した環境に応じた音響最適化と、IT企業のアップルらしい技術志向。空間オーディオにも対応します。

初期設定は「HomePod(第2世代)」を箱から出して電源を繋ぎiPhoneを近づけるだけ。自動でApple IDもWi-Fi設定も全部コピーしてセットアップが完了。簡単過ぎてビックリです。

▲iPhoneを近づけると設定の画面が現れて自動で設定が進みます

そして「HomePod(第2世代)」で音楽を再生する手段は2通りあります。

ひとつは「ヘイSiri、○○を流して」と音声で操作する方法。この使い方はApple Music契約者向けですが、スマホなどの操作が必要なく使えるので、部屋でBGMとして流す用途では結構便利です。

▲「ヘイSiri、○○を流して」と音声認識で選曲。意外と便利

もうひとつはアップル製品の連携です。iPhoneやMacを操作してAirPlay経由で再生します。これならSpotifyやAmazon Musicなど他社サブスク音楽配信、YouTubeなどの音声まで、すべて再生できます。

▲iPhoneのAirPlay画面から「HomePod」を選択できる

アップル製品の連携としては他にも、U1チップ搭載のiPhone(iPhone 11以降)であれば、iPhoneを「HomePod(第2世代)」に近づけてハンドオフで引き継ぎ再生も可能です。

▲ハンズオフによる再生。iPhoneを近づけると再生を引き継げます

ちなみに、ライバルのAmazon「Echo Studio」の場合、音楽再生は「アレクサ」と呼びかけて音声操作もできるし、Amazon Music以外にApple Music、AWA、dヒッツなども登録可能。また、Amazon Musicのアプリを使えばiPhone/Android問わず「Echo Studio」を再生先に指定できます。これはあくまでアプリ上の連携なので、アップル製のOSレベルの連携ほどの完成度はありません。

そして、音楽リスニングで気になる音質を。

▲「HomePod(第2世代)」と「Echo Studio」の音質をチェック

「HomePod(第2世代)」は、引き締まったパワフルな低音のリズムの刻みを効かせた、やや洋楽志向のサウンド。中高域はクリアかつ伸びやかで、J-POPなど歌声も空間に浮かび意外とオールラウンダーな音質です。

同じ楽曲を「Echo Studio」で聴いてみると、低音のパワフルさは「HomePod(第2世代)」の方が上で、空間表現の上手さは「Echo Studio」の方がよくできています。ボーカル曲は「HomePod(第2世代)」の方がクリアで聴きやすいですね。総合的には同レベル。個人的には「HomePod(第2世代)」のサウンドの方が好きかなという程度です。

▲「HomePod(第2世代)」をステレオペアで設定

なお「HomePod(第2世代)」は、2台購入してステレオペア再生が可能です(「Echo Studio」も可能)。ステレオペア再生した際の音質の上がり幅は大きく、素晴らしく高音質なのですが…当然ながら予算も2倍になり総額約9万円と手を出しにくいが本音です。

▲Macなどと接続時する際にはステレオ購入も要検討

そして、さらなる発展的機能も。「Apple TV 4K」を繋いだデバイスと「HomePod(第2世代)」2台を接続すると、Dolby Atmos対応のホームシアター化が実現します。アップルデバイスで固めれば、最高の映像・音楽体験ができるセットが完成するわけです。ちなみに、Amazonも同社の「FireTV」シリーズと「Echo Studio」の2台を組合わせてDolby Atmos対応になるので、目指すところは同じですね。

そしてスマートスピーカーで忘れてはならないスマートホーム関連のコントロール機能。「HomePod(第2世代)」ではアップルが主導するHomeKitの他に、新たにスマートホーム各社が規格化したMatterにも対応。一方、Amazon Alexaも対応機種を増やしていて、「Echo Studio」は近距離無線のホームネットワークZigbeeにも対応しています。またEchoシリーズもMatterに対応予定です。

では、どちらが使っていて便利かという点ですが、市場の対応機器でいうとアップルのHomeKit対応機器はかなり限られていて、iPhoneユーザーでも一度も使ったことがない人がほとんどでしょう。Alexaは薄型テレビなど黒物家電にも対応機器があり、Zigbee対応機器も含めると、スマートホーム機能は「Echo Studio」の方が活用できそうです。

▲ちなみに「HomePod(第2世代)」は温度計と湿度計を搭載している

*  *  *

アップルによるスマートスピーカー「HomePod(第2世代)」。音楽リスニング向けの音質も作り込まれているし、アップルデバイスとの連携も充実して扱いやすい。ただ直販価格4万4800円に対して、ライバルの「Echo Studio」は2万9800円、かつプライムデーでさらに安くなるので、悩みどころです。

それでもアップルファンなら欲しくなるのが「HomePod(第2世代)」。最初は1台からスタートしても、2台購入して「Apple TV 4K」まで揃えた総額約11万円のセットに行き着く前提なのかも…なんて思ってしまいました。

>> Apple「HomePod(第2世代)」

 

<取材・文/折原一也

折原一也|1979年生まれ。PC系出版社の編集職を経て、オーディオ・ビジュアルライター/AV評論家として専門誌、Web、雑誌などで取材・執筆。国内、海外イベント取材によるトレンド解説はもちろん、実機取材による高画質・高音質の評価も行う。2009年によりオーディオビジュアルアワード「VGP」審査員/ライフスタイル分科会副座長。YouTube

 

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