■オンロードもオフロードも楽しめる
実際にワインディングや未舗装の林道で3車種を乗り比べてみましたが、共通するのは圧倒的な快適性と走る楽しさが両立されていることです。見通しがあまり良くない狭い峠道でも不安なく走れるだけでなく、低い速度域で流しているだけでも“バイクを操っている”楽しさが感じられます。

3車種を比較すると「R1300GS」と「R1300GSアドベンチャー」は、どちらかというと快適性が印象に残ります。対して「R12G/S」は“楽しさ”に重きが置かれているようなマシンでした。「R1300GS/アドベンチャー」はフロントにテレレバーというBMW独自のサスペンションシステムが採用されていますが、これは前後のピッチングを抑え路面からのショックもライダーにあまり伝えない構造。対して「R12G/S」は一般的なテレスコピック式のフロントフォークを採用しているので、ブレーキングでフロントを沈み込ませてコンパクトに曲がるようなコーナリングが可能です。

未舗装の林道を走っても「R1300GS/アドベンチャー」は路面の凸凹を乗り越えてもショックがあまり伝わってこなくて快適。結構荒れた路面も走りましたが、緊張することなく通過できました。ただ、少し大きめなギャップを通過すると、ややフロントが振られるシーンもあり、前輪が19インチであることを思い出す感じでした。

対して「R12G/S」は21インチホイールの恩恵で、ギャップの乗り越え性能はオフロードマシン並み。タイヤからの情報もライダーに伝わりやすく、よりオフロードを楽しめるマシンという印象でした。車重が3車種の中で一番軽い(といっても234kgありますが…)のも効いているようです。

シート高は「R12G/S」が860mmで「R1300GS」が850mm、「R1300GSアドベンチャー」は840mmあるので、足付き性にはどれも不安が付きまといますが、「R1300GS」と「R1300GSアドベンチャー」には停止時にシート高が30mm下がる機構が装備されています。「R12G/S」にはそれがないので、オフロードを走るのであれば、ある程度の体格があったほうがいいでしょう。
3車種を乗り比べてみて、BMWの誇る「GS」シリーズの底力を感じることができました。大陸を横断するような長距離ツーリングをするライダーたちが、こぞってこのマシンを選ぶ理由が実感できた気がします。ただ、国内での日帰りや1泊でのツーリングを考えると「R12G/S」の持つ“楽しさ”はかなり魅力的。街中で映えるレトロなデザインも相まって、多くのライダーから支持を集めそうです。
【SPEC】
BMW「R12G/S」
サイズ:2285×900×1240mm
シート高:860mm
車両重量:234kg
エンジン:1169cc空油冷水平対向2気筒
最高出力:109PS/7000rpm
最大トルク:115Nm/6500rpm
価格:245万1000円〜
>> BMW「R12G/S」
<取材・文/増谷茂樹>
増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。
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