さっそく音質からテストしてみると…驚きました。前世代の「AirPods Pro 2」も所有していますが、まさに別物というほどに音質がアップしています。
▲前世代とは全く別物というほどに音質が向上
Apple Musicで音楽を宇多田ヒカル『BADモード』から聴き始めると…まず圧倒的なまでの音情報の多さ。ボーカル、シンセ、シンバルまでの多層的な音がハッキリと分離して聴き分けられるし、ボーカルは伸びやかさとなめらかな質感を両立。ROSÉ & Bruno Mar『APT.』でも、イントロのROSEの囁くような声からリアルだし、引き締まった低音、そして何よりも曲全体の解像度とダイナミクスが劇的にアップ。女性・男性ボーカルとも声がビビッドに響いて、音楽的にも魅力的なサウンドになりました。
ヘッドトラッキングにも対応した空間オーディオも、もちろん利用可能です。
▲「空間オーディオ」はヘッドトラッキングへの追従が優秀
特に頭の周りに空間が広がる体験は有効で、特に「AirPods Pro 3」では頭を動かしても定位が安定するようになりました。忘れられがちですが、空間オーディオはNetflixなどのネット動画配信にも有効です。DolbyAtmos『ウェンズデー』ではまさに映画級に頭の周りに空間を作るし、マルチチャンネルオーディオ配信の『グラスハート』でも音のライブ感アップと、総合的なエンタメ体験としても満足度は高いですね。
そして「AirPods Pro 3」の目玉アップデートのひとつが“AirPods Pro 2の最大2倍”に性能向上したと謳うアクティブノイズキャンセル。
▲重低音のみならず中域まで強力に働くアクティブノイズキャンセル
外に持ち出してテストしてみると、ノイズキャンセルの性能向上をハッキリと体感できます。低音側の騒音が無音レベルに落ちることに加えて、自宅で試していても、これまで騒音低減効果をあまり感じなかった隣室のテレビの音声までも強力にボリュームダウンしていることに気づきました。
電車内のテストでも、人の話し声に対する効果が極めて強力で、他社製品と比較しても、これは業界トップと呼べるほど。クルマの走行音なども“サー”と高域側の音が残るのみです。ノイズキャンセルに伴う違和感もほぼなくなり、常用しやすい性能になりました。また以前から最も自然という評価だった外部音取り込みモードも音の距離感まで自然になり、装着した状態での自分の声も自然に聞こえるようになりました。
▲外音取り込みも優秀で、装着したまま歩いても全く不安がないほどに
ここまでの進化だけでも、完全ワイヤレスイヤホンとして十分に魅力的なのですが、「AirPods Pro 3」はそれ以外にも、アップルのエコシステムとの統合する付加価値を付けてきました。
まず、ヘルスケアデバイスとしての側面。新たに、赤外線LEDを用いた心拍数センサーを搭載することで、運動中に耳の皮膚から血流を測定。これはApple Watchを持っていない人でも利用できるので、いつの間にかアップルの健康管理の世界に取り込まれることになります。
そして極めつけが、AIとの連携によるライブ翻訳(ベータ版)です。これは機能的にはiOS 26とApple Intelligence対応のiPhoneで実現するものになります。「翻訳」アプリと連動させ、対話相手の言葉をリアルタイムで翻訳し、AirPodsを通して音声で聞けるライブ翻訳に切り替え。翻訳処理はiPhone上のオンデバイスAIで行われます。
▲ライブ翻訳はあらかじめ言語をダウンロードしておくことでオンデバイス実行が可能
9月19日の発売時点では日本語には対応していないため、「英語→スペイン語」の翻訳で試してみました。ただそれ以前に外国語で会話する機会がないな…と思ったのですが、そんな時はネット動画の出番。Netflixで視聴中の『ウェンズデー』を英語音声で見てみると…ワンテンポ遅れではありますが正しく英語のセリフを認識して翻訳していることを確認。音声はSiriの設定のままです。年内に日本語対応予定で、旅行に行かない人でも海外動画の視聴で使えますね。
▲ライブ翻訳でスペイン語に翻訳しながらドラマ視聴
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「AirPods Pro 3」を3日間使い倒してみましたが、まずシンプルに音質・ノイズキャンセル性能だけ見ても3万9800円の価値があるモデルです。音質では同じ4万円クラスのイヤホンと同等以上、そしてノイズキャンセルは業界トップ級。これだけでも十分元が取れる製品なのですが、アップルしかできないヘルスケア、そしてAIといった未来の体験をカバーしてきたところは流石。これだけ揃っているなら3万9800円はアリ。むしろ“コスパがいい”と思えるイヤホンですね。
<取材・文/折原一也>
折原一也|1979年生まれ。PC系出版社の編集職を経て、オーディオ・ビジュアルライター/AV評論家として専門誌、Web、雑誌などで取材・執筆。国内、海外イベント取材によるトレンド解説はもちろん、実機取材による高画質・高音質の評価も行う。2009年によりオーディオビジュアルアワード「VGP」審査員/ライフスタイル分科会副座長。YouTube
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