スティーブ・ジョブズの名言である“Design is not just what it looks like and feels like. Design is how it works.” (デザインとは、単なる見た目や手触りのことではない。どう機能するかだ)という一節を引用しつつ、2025年9月のApple Eventにて発表された「iPhone Air」。Air(エアー)の名を冠する通り、これまでにない薄型の筐体を実現した新しいiPhoneであり、カメラやバッテリー容量など削ぎ落とされた部分こそあるものの、久しぶりに尖った個性に内心ワクワクした人も少なくないことでしょう。

一方、そんな突き詰めた「薄さ」によって、ユーザーの体験はどこまで変わるものなのかは未知数。先の引用によって、単なる耽美的な変化ではないことも強調された気がしますが、「じゃあ、薄さによる恩恵はなんなの?」という疑問は付きまといます。
そこで、iPhone Airを実際に触って、気になっていたポイントをチェック。“手のひらに乗ったiPhone Air”としての実像に迫ってみます。
■そういえば、仕様の5.64mmってどこの厚さ?
iPhone Airにおける最大の看板は、やはりその「薄さ」。スタンダードモデルの「iPhone 17」が厚さ7.95mmであるのに対して、iPhone Airは5.64mm。2.31mmの差というのは、手に持つとしっかりと差を認識できるものでした。この新モデルには確かに「削ぎ落とした美」を感じます。
▲iPhone Airの外観は、個人的には結構好み
ちなみに、実機を手に取るまで、「この5.64mmというのは、どの部分の厚さなのだろうか?」と気になっていましたが、本体機能を司る部材を集約しているカメラ周りは、やはり分厚い。特にレンズは突き出ていますので(厚さは仕様表には記載がないものの、ざっくり10mm前後)、いわゆる最厚部と最薄部の差が結構大きい印象です。
とはいえ、筐体のほとんどが最薄部の5.64mmですので、全体的にスリムな印象であることに変わりありません。こうなると、なるべく“裸”のまま使いたくなるところ。
ちなみに、端末の薄さとトレードオフになりがちなのが手で握ったときの安定感ですが、iPhone Airでは側面のフレーム部がフラットであり、アルミニウムのメタリックな質感だからこそ、薄いながらも指の腹の皮脂が効いてしっかりグリップできた印象です。背面も前面も、丈夫で耐擦傷性能の高い仕上げになっていますし、下取りを想定せずに、家のなかで使う分には、まぁ裸のままでもさほど問題はないかな、とは思いました。
▲指が乾燥していなければそんなに滑らないかな、という印象。って、あれ…USB Type-Cポートが中心からズレてるのは、なんだかAppleらしくない。けど、まぁ別にいいか、このくらい
ただし、カメラを下向きに置くと、どうしてもグラつきますし、レンズの傷も心配。実際に購入する場合には、保護ケースやバンパーを駆使しながら、画面側を下にして置くのが正解なのかな、とは思います。
また、冬に指先が乾燥していたら、滑る可能性がないわけでもありません。ポケットから慌ててiPhoneを取り出したときに、万が一ツルんっと落ちてしまったら洒落にならないので、外出時には、端末を保護したり落下を予防したりする類のアクセサリーが必須となるでしょう。この辺りの“作法”は、普通のiPhoneと変わりませんね。
■スマホとしての扱いやすさは?
今年は「Plus」シリーズが発売されず、そこに置き換わるようにiPhone Airが発売されました。2024年モデルの「iPhone 16 Plus」が6.7インチだったのに対して、iPhone Airは6.5インチ。そして、スタンダードな「iPhone 17」が少し小さい6.3インチ。ちょうど中間でございます。
▲miniシリーズ以外のiPhoneを使ってきた人なら、違和感なく使えると思う。あと、やっぱり画面サイズの割に軽やか
では、実際に手に持った印象はどうだろうか、とチェックしてみると、普段iPhone 15 Pro(6.1インチ)を使っている筆者でも、そこまで違和感なく乗り換えられそうな雰囲気。正直「次はこの画面サイズでも良いな」と思えました。iOS 26で、UIの多くが画面下部に集約されてきたタイミングでもあるので、片手でも扱いやすいシーンが増えていることも背中を押してくれます。
ちなみに、服のポケットに入るかどうかを試してみると、少なくともメンズのスーツなど含め、筆者の普段着なら問題なさそうでした。保護ケース等、アクセサリの選択次第ではタイトなパンツのポケットにも入れやすいかな。まぁ、流石にバックポケットに入れるのは、うっかり下敷きにしそうなので気が引けますが…。
使用感に関連したところでは、内蔵スピーカーがステレオではないことを心配していたのですが、いざ動画を再生してみると、意外と気にならなかったというのが正直なところ。もちろん音の定位感とか音圧とか、細かい部分に突っ込むことはいくらでもできますが、ダラダラYouTubeを観るくらいなら全然気になりません。
結局iPhoneでじっくり動画観る時ってワイヤレスイヤホンを使うことが多いし、音楽はHomePod miniで再生しますし…。意外とこれで十分かも、と思いました。
■周辺機器はどうするのが良い?
そう。手にしたiPhone Airの実機をじっくり眺めていて、湧き上がってくる感情はアレですね。お店に展示された宝石とかちょっと高めの革製品を眺めているときのようなアレ。
ふと横に置いていた私用の「iPhone 15 Pro」(純正の保護ケースもすでにボロボロ)に目を移すと、「はい、僕はガジェットです!」と自己主張してきたのが、なおさらiPhone Airの洗練度合いを際立たせてきます。
特に、今回試用した「ホワイト」のiPhone Airについては、アルミニウム筐体のメタリックなフレームと、サラサラした手触りでマットかつ軽やかな背面のバランスが良いなと感じました。例えば、服やバッグ、アクセサリーにスマートフォンまで合わせてシックにコーディネートしたい、という感覚がある方ならば、選ぶ価値はあると思います。
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