――辰野社長の愛犬・コロについて、迎えた経緯などを教えてください。
辰野 僕自身が犬を飼うのは初めてと言っていいのですが、実は幼稚園の頃、捨て犬を拾ってきて自宅で飼ったんです。犬種もわからない雑種でした。でも20年以上生きてくれて、最後は目も見えなくなってしまい…。そんな光景が今も脳裏に焼き付いています。
コロを飼うきっかけになったのは、娘が犬を飼いたいとずっと言っていたからというのが直接的な理由です。飼っている犬が死んだ時の悲しさや辛さなどを経験していたので正直迷いました。ただ、それも娘にとって一つの人生経験になりますし、亡くなる瞬間までに愛犬と一緒に暮らす時間はおそらく大切なものになるだろうと考えて飼う決意をしたんです。
――なぜゴールデン・レトリーバーだったのでしょうか?
アメリカで開催されているアウトドア用品の展示会「アウトドアリテーラーショー」を訪れる機会があったのですが、割と普通に犬連れの参加者を多く見かけるんですね。犬種を見ると、ラブラドール・レトリーバーやゴールデン・レトリーバーなど比較的大型の犬種が多くて。後は、ラブラドールやゴールデンって比較的大人しいのではないかなと思っていたんです。だから飼いやすいのかなと思いゴールデン・レトリーバーに決めました。でも実際に飼ってみると、大変だったのですが(笑)
――大型犬は散歩をはじめ面倒を見るのが大変ですよね
そうですね。今は毎朝欠かさず、近所の公園を約1時間かけて散歩に連れて行っています。出張の時などは早朝3時に起きて散歩することも(笑) ただ、苦にはなっていません。仕事の時ってずっと頭を働かせているじゃないですか。でも散歩に集中して歩いている時は無心になれるというか、頭のリラックスができていると思うんです。そんな時に仕事に活かせるアイデアが浮かんだりすることもあります。そういう意味ではむしろ、非常にいい“きっかけ”を与えてもらっているのだと感謝しています。
――コロとの日常が仕事にもプラスの影響を与えていると?
そうですね。本来、アウトドアシーンにおいて犬はパートナーとしての歴史も長く、フィールドに愛犬を連れて行くというのはごく自然でした。こうした経緯もあり、弊社のドッグギア事業もごく自然に始まったのです。
かく言う私自身、犬を飼っていない時には今ひとつ分かっていなかった部分も多いのですが。実際に犬を飼うことで、弊社のドッグギアの方向性がさらに明確になったなと感じています。
――なるほど。具体的に教えていただいてもよろしいでしょうか?
例えば、よく愛犬に服を着せるじゃないですか。犬を飼うまでは飼い主の趣味嗜好なのかなと漠然に考えていたのですが、犬種によってシングルコート、ダブルコートなど毛の生え方などが違っているんです。要は犬の生息域が違うんですね。コロを飼ったことでこうしたことに改めて気づきました。単なるドレスアップではなく、ファンクショナルな意味合いで服を着せているんだと実感できたんです。機能性という部分で、弊社が貢献できる部分は大きいなと確信しました。
そういったリアルな経験こそが、モノづくりに活かされてくると信じています。
――ご自身が犬と暮らすことで、貴社のドッグギアに対する理解はもちろん、さらなる展開に拍車がかかったということですね。
そうですね。「アウトドアフィールドを愛犬と一緒に楽しむために必要なものは何だろう」という命題は常に掲げています。これは弊社のモノづくりの根幹でもあるのですが、実際に自分たちがアウトドアで体験する中で「こうした機能があればいいな」「ここはもう少し改善したほうがいい」など、実体験に基づいた意見というか経験値はとても大切にしていて、そうした声は早急に製品づくりに活かすように心がけています。
――アウトドアシーンにおける貴社ブランドに対する絶大な信頼の理由はそこにあるわけですね。
一般的な企業さんだと、まずは市場マーケティングを行い、効率的に商品展開を行うのが通例だと思いますが、弊社の場合は我々が実際にフィールドで遊んで、その中で必要だと思うに至った機能を備えたモノを製品化しています。それは人間向けの製品もドッグギアも同じです。
――個人的に辰野社長が気に入っている製品などありますか?
もちろんハーネスなどは愛用しているのですが、お気に入りは「ドッグウォーカー ショルダー」です。これは毎朝の散歩の際に水や犬用のお菓子、トイレグッズなどを収納するために必要なバッグなのですが、実際に使っていく中で自ら使いにくさを感じた箇所などをフィードバックして現在の製品に至っています。
――辰野社長以下、社員が実際に使っているからこその製品づくりであることがモンベル製品の魅力にもつながっているワケですね。最後に愛犬・コロに対する想いをお聞かせください!
犬って、人のことをよく見ていますよね。ふとした時にコロに見られていると思うと我に返ることがあるんです。それで落ち着きを取り戻したり、リラックスできたりします。スパイスというと刺激的ですが(笑)、家庭の中での調味料と言えば良いでしょうか。いい意味で家庭を上手く、スムーズにしてくれる、そんな大切な存在だと感じています。
今年、創業50周年を迎えるモンベル。その企業哲学はアウトドアシーンにおいて「自分たちが実際に必要と感じたものを製品化する」という一貫したモノづくりの姿勢にあります。それはドッグギアも例外ではありません。辰野社長と愛犬・コロとのステキな関係。ここからどんな新しい画期的なギアが生まれるのか、目が離せそうにありません。
>> モンベル
<構成/小出健太郎、撮影/小澤義人>
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