峠の火遊びから世界の競技へ。ドリフトの“現在”を体現するGRスープラを高解像度でスケールダウン【model cars】

■日本を代表する1台として自動車文化の本場、イギリスでダイナミックな走りを披露

今回紹介するのは、まさに、ドリフト競技用に、日本のチューニングカー文化のパイオニア的存在、HKSが製作したGRスープラを題材とした1/43スケールのモデルカーである。ベースとなったGRスープラは、ドイツのBMWとトヨタが協業で生み出したスポーツカー。シャシーやエンジンはBMWが主に手掛け、ボディやインテリアはトヨタオリジナルとなる。BMW版はZ4というオープンスポーツカーとして販売されている。

GRスープラは開発当初から、“ユーザーが自分好みにチューニングして楽しむ”ことを前提に設計されている部分もあり、それを推奨するかのように、トヨタサイドも名だたるチューンドパーツメーカーに車両を優先的に納車して、実車の発売から間を置かずに、種々のアフターマーケット部品やコンプリ―トカーが発表されたのも記憶に新しい。

このHKSスープラもまた、実車の発売からたった2か月後に英国はイングランド南部チチェスター郊外にあるグッドウッドサーキットで行われる自動車の祭典、『Goodwood Festival of Speed』でデモランを行うべく製作されたマシーンである。非常に短い開発期間ながら、エンジンを純正のBMW製ではなく、700馬力にまでチューニングされた トヨタの2JZ-GTE型3.4リッター直6ターボに換装。内装も走りに直接関係の無い装備をはぎ取り、カーボン製パネルやアルミパネル、ロールケージで武装したスパルタンな仕上がり。そしてエクステリアは極太の前後タイヤを収めるためにビス留めされたオーバーフェンダーが目を惹く。

モデルではそうした実車の特徴を3Dスキャンで掌握した上で原型を設計。実車に忠実無比なプロポーションとディテールを実現している。ボディはレジン製。ウィングはステンレス製のエッチングパーツ、ホイールは真鍮切削原型をホワイトメタル鋳造部品に置きかえるなど、要所要所で最適なマテリアルを使い分けている。HKSのコーポレーテッドカラーを纏ったボディはブラックの部分は塗装で、グラフィックスはデカールを貼った上にクリアコーティング塗装を施し、鏡面状態にまで1台1台磨き上げている。ドリフト車両らしい、フロントの足回りのネガティブキャンバーの表現もこだわりのひとつ。

『Goodwood Festival of Speed』は名だたる名車や、モータースポーツシーンで活躍した輝かしいヒストリーを持つレースカーを世界中から集めて行われるイベントで、各車がサーキットでデモランやヒルクライム・タイムアタックなど行う。そんな格式のあるイベントで、かつては日本のアウトロー文化のひとつであったローリング族由来のドリフト車両が、タイヤの白煙を巻き上げながら疾駆するというのだから、時代は変わったものである。

>> メイクアップ

<取材・文/モデル・カーズ編集部、写真提供/メイクアップ>

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