総所有台数130台以上!鉄スクーター・旧式ベスパのマニアのガレージ拝見。その目的は転売や投資目的ではなく…

■最も思い入れのある所蔵ベスパ5選

ここで、「関根さんにとっての思い入れあるモデル」あるいは「日本におけるベスパの歴史」において、特に重要な所蔵モデルを紹介してもらいました。

◆関根さんが高校生の頃に初めて購入したベスパ50S

▲関根さんが初めて購入したベスパ50S

▲無数のミラーやライトが綺麗にデコレーションされています

50ccのいわゆるスモールボディモデル。関根さんが高校生だった90年代前後の新車価格は34万円ほど。このバックミラー、ライトなどのデコレーションは、1960年代のイギリスの若者の間で広まったモッズカルチャーのスタイルを踏襲したもの。

「この車両から始まり、今の私があります」(関根さん)

◆日本に渡来した初期のベスパ(フランスA.C.M.A.社製のベスパ)

▲戦後、進駐軍が持ち込んだ時代のフランスのA.C.M.A社製のライセンス生産ベスパ

関根さんによれば「日本におけるベスパの始まりは、進駐軍が持ち込んだベスパを日本人が譲り受け、乗り始めたことが始まりと言われています」とのことですが、そんな同時代の日本に持ち込まれた車両もガレージに大切に保管されていました。

◆日本で初めて新車輸入販売された頃のベスパ150GS(vs5)

▲日本で初めて新車輸入された記念すべきベスパ150GS(vs5)

1958年頃にイタリアから初めて日本に新車のベスパを輸入販売した芙蓉貿易という会社が実際に販売したモデル、150GS(vs5)。こんなヒストリックなレアモデルもかなり綺麗な状態で保管されていました。

「当時のオリジナルコンディションを維持した車両です」(関根さん)

◆ベスパでの世界一周を目指したツアラーが、計画を変更し日本に置いていったベスパ160GTサイドカー(スペイン製モトベスパ)

▲ベスパでの世界一周を目指したツアラーが計画を変更し、日本に置いていったベスパ

▲日本に滞在していた際の写真。車両脇のサイドカーは、ヤマハRD400に移設され、そのままツアラーは無事に旅を終えたそうです

ベスパで世界一周を目指したとあるツアラーが、日本に立ち寄った際、当初の予定から計画を変更。その際に日本において言った160GTサイドカー(スペイン製モトベスパ)も所蔵しています。

「ツアラーは、『このままでは旅を続けるのが大変だ』として、ヤマハのバイクRD400に日本で乗り換え、ベスパにつけていたサイドカーを移設し、そのまま旅を続けて無事に世界一周を達成した車両です」(関根さん)

◆ベスパの輸入元だった成川商会・社長が所有していたベスパV31

▲ベスパの輸入元だった成川商会の社長が所有していたベスパV31

▲成川商会の社長から、関根さんが車両を譲り受けた際に残してくれたサイン

ベスパの輸入元だった成川商会の社長が所有していたモデル・V31。映画『ローマの休日』に登場するものと同じモデルです。

「成川商会はモーターショーに展示するために、社長自ら会社で塗装を行い仕上げた1台です。この車両は社長のために、ピアジオがイタリアから車両を送ってくれたというたまらないストーリーもあります」(関根さん)

■「ベスパに乗る方とたくさんの楽しい思い出を共有したい」

とかくマニアックな世界になると「どれだけレアなモデルを所有しているか」「どれだけ他人が知らない知識があるか」ばかりが競われがちで、門外漢からすれば、ある種の閉鎖的な印象を感じることもあります。

しかし、関根さんにはそういった印象はまったくなく、むしろ開放的で「日本のベスパをもっと広めたい、盛り上げたい」という思いのほうを、強く感じました。

その上で「まだ旧式ベスパに乗ったことがない」「旧式ベスパに興味があるけれど、大変そうだ」といった初心者に対しても優しいアドバイスをくれました。

「ベスパは他にない魅力ある乗りものですが、だからこそ『合う・合わない』はあるかもしれません。しかし、情熱があれば苦労を苦労と感じなかったり、その苦労自体も楽しめる物ですよ。

もし『まだ乗ったことがないけど、ベスパに興味がある』という方がいたら、まずは『どんな乗りものか』『どんな歴史があるのか』『世界中でベスパが愛され続けている理由は何故なのか』などをネットなどで調べてみると良いと思います。

また、これは個人的な話ですが、ベスパに乗り続ける上で『仲間』との出会いは大切だと思います。僕も仲間に本当に救われてきましたので、長く乗りたいと思うのであれば、積極的に他のベスパファンと交流を持つと良いと思います」(関根さん)

▲ガレージ内にある子ども用のベスパ群。こんなふうに世界中でベスパは老若男女に愛されてきました

最後に関根さんは、「非力ではありますが」と前置きしながらも、こんなふうに結んでくれました。

「日本におけるベスパの歴史を、納得できるカタチでまとめて出し、世界中の人たちに伝え、後世にも伝え残せるのが一番の夢です。そして、これからも日本におけるベスパの世界を楽しく盛り上げるような活動をしていきたいです。ベスパと出会った人、ベスパに乗る方々とたくさんの楽しい思い出を共有していければ良いなと思っています」(関根さん)

世界中の多くの人々を魅了し、今日まで愛され続ける乗りものはそう多くないですが、それもこれもベスパの独特の個性と愛らしさによるものでしょう。いつか関根さんの夢がカタチになり、日本発のベスパシーンが世界に伝わり、世界中のベスパファンの活動と思いが一つになる日が来ると良いなと思いました。

<取材・文/松田義人(deco)>

松田義人|編集プロダクション・deco代表。趣味は旅行、酒、料理(調理・食べる)、キャンプ、温泉、クルマ・バイクなど。クルマ・バイクはちょっと足りないような小型のものが好き。台湾に詳しく『台北以外の台湾ガイド』(亜紀書房)、『パワースポット・オブ・台湾』(玄光社)をはじめ著書多数

 

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