【ゴルフ オールトラック試乗】新しいワーゲンはマルチタレントぶりが“ゴキゲン♫”

あれは、1990年頃のことだったと思います。

上京したばかりで友達もおらず、ひとり「東京輸入車ショウ」だったか「東京外車ショウ」だかへ行きました。コンセプトカーなどは展示されておらず、市販されているクルマが平置きで並んでいるだけ。それだけなのに、相当にワクワクしたのを覚えています。今よりもっと輸入車が憧れだった時代です。

中でも記憶に残っているのが、フォルクスワーゲン「ゴルフ カントリー」。2世代目ゴルフの車高を上げて、リアにスペアタイヤを背負わせたモデルです。駆動系は「ゴルフ シンクロ」と同様、フルタイム4WDでした。これがワタシにとって、クロスオーバースタイルのクルマとの初めての出合い。こんなのに乗って、週末、友達とキャンプ道具を積んでドライブへ行きたい! と思ったものです。友達、いませんでしたが(涙)。

そんなわけで、新しい「ゴルフ オールトラック」を見た瞬間、アウディやボルボ、スバルのクロスオーバーモデルと比べたくなる前に、ゴルフカントリーのインパクトが甦ってきたのです。5ドアハッチバックのカントリーに対して、オールトラックはヴァリアントと呼ばれるステーションワゴンがベース、という違いはありますが…。

 日常からしっかり機能する4WD=4モーション

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オールトラックが搭載する4WD機構“4モーション”は、電子制御の油圧式“ハルデックスカップリング”を採用したフルタイム方式です。基本は前輪で駆動しつつ、必要に応じて後輪にも駆動力を送ります。オールトラックのハルデックスカップリングは第5世代に当たるもので、なんと、前輪がスリップし始める前から反応して後輪へトルクを送り出す、という仕組み。しかも前後輪とも、左右輪へのトルク配分を電子制御でコントロールすることで、走行中の安定性を高めています。つまり、4モーションは不整地に踏み入れた時だけに限らず、日常の中で機能する、ということ。普段使いでも有効な4WDなのです。

ベースとなるワゴンのヴァリアントが、トレーリングアーム方式のリアサスペンションを採用するのに対し、オールトラックではスタビライザー付きの4リンク方式にアップグレード。後輪を駆動するドライブシャフトを通すための措置でもあるのですが、結果的に走りのドッシリ感もアップ。駆動力が後輪へ送り出されている否かに関わらず、4輪で路面をガシッと捉えてくれる印象があります。

それを明確に感じられるのは高速道路です。ベースのヴァリアントに対し、車高がわずかにアップしているにもかかわらず、加速しながらのレーンチェンジなどでは、背が高くなったネガを感じさせません。個人的に、クロスオーバータイプの4WDに期待することのひとつは、高速巡航の快適さです。キャンプサイトやスノーゲレンデ、サーフポイントまでの道のりは、8〜9割が高速道路、なんてことも珍しくありません。その区間を快適に移動できると、到着してからアクティビティに集中できますからね。この点、オールトラックは優秀です。

オールトラックに搭載されるエンジンは、1.8リッターの直噴ガソリンターボ。ヴァリアントの上級グレード、TSIハイラインに積まれる1.4リッター直噴ガソリンターボは、最高出力140馬力、最大トルク25.5kg-mなので、スペック上はもちろん、実際に走らせても排気量アップの元が取れているように思います。

なんでも、ヴァリアントへ乗り換えるオーナーのうち、ミニバンからの乗り換えが3割を占めているのだとか。そんなオーナーたちを中心に「もう少しパワーが欲しい」という要望が少なからずあったといいます。ミニバンからだとステーションワゴンはサイズ的にダウンサイジングしているとはいえ、前後シートに人が座って荷物を満載した状態だと、ヴァリアントの1.2リッター、1.4リッターではやや荷が重いシーンもあったのでしょう。その点、1.8リッターのオールトラックは、そういった要望や期待に対して、真正面から応える力強さがあります。

一方、車両重量のアップなどもあって、燃費はリッター当たり14.7 km(JC08モード)にとどまります。しかし、1540kgと車両重量が同じで、1.4リッターの直噴ガソリンターボを積む「ティグアン」ラウンジエディション(FF)は、最高出力160馬力、最大トルク24.5kg-mでありながら、燃費はオールトラックとほぼ同じリッター当たり14.6km。なのでオールトラックは、案外エコロジーの面でも良好と言えるかもしれません。

さて、オールトラックの走行モードをアレンジできる“ドライビングプロファイル機能”には、通常の「ノーマル」「エコ」「スポーツ」「カスタム」に加え、「オフロード」モードも選べます。未舗装路での制動距離を短くするためにABSのセッティングが変わるほか、アクセルペダルのレスポンスが緻密になります。目的地までの途上で頼りになる4モーションは、キャンプサイト近くの不整地やスノーロードでも真価を発揮してくれそうです。

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実はクロスオーバーモデルの元祖を輩出していたゴルフですが、当時から25年以上を経た今、カントリーとは次元の異なるパフォーマンスを従えて、オールトラックをリリースしてきました。かつ、クロスオーバーモデルとしての魅力はもちろんのこと、ヴァリアントのパワフルな上級グレードが欲しいという人々の要望にも、オールトラックは応えてくれます。そういったマルチタレントなところも、オールトラックならではの美味しさではないかと思うのです。

<SPECIFICATIONS>
☆オールトラック TSI 4モーション アップグレードパッケージ
ボディサイズ:L4585×W1800×H1510mm
車重:1540kg
駆動方式:フルタイム4WD
エンジン:1798cc 直列4気筒 直噴ターボ
最高出力:180馬力/4500〜6200回転
最大トルク:28.6kg-m/1350〜4500回転
トランスミッション:6速DSG
価格:367万円

(文・写真/ブンタ)