世界最強の長靴について。Dubarry「Galwayカントリーブーツ」 映画監督・平野勝之「暮らしのアナログ物語」【20】

■世界最強。

このブーツとデュバリーというアイルランドのメーカーについてご存知の方はどのぐらいいるだろう?

このブーツは一見、革のお洒落なブーツに見えるだろう。しかしとんでもない間違いだ。なんとこれは長靴なのである。

つまり完全防水。革なのに、雨だろうが、川だろうが、池だろうが、そのままザブザブ行ける。

革は、かのイギリス軍用のピタードの革を使用している(この防水の革は、筆者も長年愛用している、老舗登山靴店「ゴロー」のブゥーティLという低山用トレッキングシューズに使用されていた革だ)。しかも、インナーにゴアテックスが使用され、ムレ知らず。

つまり、アイルランドやイギリスで、狩猟や乗馬、その他アウトドアスポーツなどに使用される、知られざる世界最強のアウトドア用カントリーブーツなのである。

 

■ Dubally(デュバリー)

デュバリーというアイルランドのメーカーは、1930年代にアイルランドの西海岸、Galway(ゴールウエイ)という地で、手縫いモカシンの専門メーカーとして産声を上げたそうだ。カントリーブーツを主に製作しているが、同時にヨット用のマリンシューズも手掛ける。日本ではこちらのデッキシューズのメーカーとして有名なようだ。
日本では乗馬や狩猟などが一般的でないせいか、このカントリーブーツの存在を知る者は少ないだろう。

そして、完全防水&ゴアテックスという機能が着いたこのブーツには「Galway」と、デュバリー創業地の名前が付けられている。

 

■雨国「日本」

僕はめったに傘はささない。

傘があまり好きではないのもあるが、この連載の中でも何度も言っているように、通常、僕は自転車生活者であり、雨の日でも自転車で出かける場合が多く、雨具には真剣なのだ。

快適さはもちろん、軽さや性能、耐久力、また見栄えも重要だった。

僕の自転車はランドナー系に統一されているため、それに合った服装、雨具が望ましいのである。

クラシカルなものが理想だが、あまりコスプレにならず、機能を犠牲にしないものが良いが、意外とこういうものは少ない。だから、アウトドア用品など常にアンテナをたてて、専門のものでなくても、使えるものがないか、いつも目を光らせている。

そんな中、僕の御用達の店になっている新宿のBLUE DUNに行った。

ここはバブアーやブレディ、デンツなど、昔から変わらないイギリスの服や小物などを中心にフィルソンなどのアメリカのオイルド系や釣具なども扱う専門ショップで、昔ながらのアウトドア系のものが多く、自分好みを考えるとイギリス系のものとなり、この店にはよくお世話になっている。

6年ほど前、この店にいわゆる長靴を探しに行った。

長靴というものを持っていなかったし、ポンチョなどと組み合わせるのに良いと思ったからだった。

最初は、ハンターにしょうと思った。エーグルも候補に入っていて、いろいろ見てみようと思った。

その時にこの店でデュバリーのこのカントリーブーツと出会ってしまったのだ。

僕もそれまではデュバリーというメーカーは知らなかった。初めて見るそのカントリーブーツにひどく魅せられた。全部革なのに完全防水! イギリス軍用のピタードの革はゴローの靴に使用されていたので知っていたが、中もゴローの靴同様、ゴアテックスである。

俄然、欲しくなったが、いかんせん値段も7万円強で、さすがにたじろいだ。完全に予算オーバーすぎた。しかし、機能や造りを考えると、納得のいく値段だ。

店で悩んでいたら、店員が一言。

「このブーツは最強やで」(なぜか関西弁だった)

結局、この日は買えず、すごすごと帰ったのだが、もう頭の中はこのブーツの事で頭がいっぱいだった。

冷静に考えてみると、他のレインブーツは長靴にしか見えず、雨の日しか使えないが、このブーツの場合はいわゆる長靴には見えず、通常のお洒落な革ブーツに見える。まさかこれがゴアテックス内蔵の完全防水ブーツだとは誰も思わないだろう。
つまり、雨の日以外でも通常の靴同様に使用できるのだ。

そう考えると、値段以上の価値があると思った。

その後、意を決して、このブーツを購入。

現在まで6年ほど使用しているが、まさに大正解の買い物となったのである。

 

■冬の冷たい雨の中

基本的に雨用として購入したこのブーツだが、意外にも冬の防寒ブーツとしての使用が主となった。

冬に厚手のロングソックスと組み合わせると、東京程度の寒さでは無敵だった。

乗馬にも使われるブーツなので、クラシカルなスタイルのランドナーにも合うようだ。

一度だけ、新潟と長野の県境にある南小谷へ、真冬の大豪雪の中、自転車ツーリングにも使用したが、足がひどく冷える事もなく快適だった。

以前、記事にも書いたが、バブアーのオイルドジャケットとの組み合わせは相性抜群である。(>> 都市の野生「Barbour(バブアー)のオイルドジャケット」映画監督・平野勝之「暮らしのアナログ物語」【16】

見栄え、機能、造りなど、ここまで完璧で満足度の高いものは少ない。

唯一の欠点はソールの取り替えができないという事なのだが、これを履きつぶしたとしても、自分はまた同じものを購入するだろう。

今やアルプスの自転車、ライカやニコンのフィルムカメラと同様、自分にとっては重要なアイテムのひとつとなっている。

冬の冷たい夕方の雨の中、このブーツをいつものリバーサルフィルムで撮影した。

このブーツとバブアーのジャケット、フィルソンのオイルドハットがあれば、冷たい雨でもへっちゃらだった。

アイルランドやイギリスもこんなに冷たく寒いのだろうか?

傘の風情も良いけれど、都心ではいろいろなものを洗い流してくれそうな冷たい雨を直接浴びたくなる。

そんな時、僕はこのブーツを身につけて、今日も自転車で雨に濡れながら都心をウロウロするのである。

>> BLUE DUN

 


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(文・写真/平野勝之)

ひらのかつゆき/映画監督、作家

1964年生まれ。16歳『ある事件簿』でマンガ家デビュー。18歳から自主映画制作を始める。20歳の時に長編8ミリ映画『狂った触覚』で1985年度ぴあフィルムフェスティバル」初入選以降、3年連続入選。AV監督としても話題作を手掛ける。代表的な映画監督作品として『監督失格』(2011)『青春100キロ』(2016)など。