難しい、けど楽しい。キャンプの焚き火で「焼き芋」をおいしく作る方法を模索してみた

■強火の遠火でじっくり…が大変だった

まず、焼き芋が甘くなるその理由を確認しましょう。

焼き芋の甘みは、β-アミラーゼと言う酵素が活性化してデンプンを麦芽糖に分解したため。この酵素が元気に働くのが60〜65℃と言われていて、75℃以上になるとうまく働かないんだそうです。

甘味を引き出すにはわずか5℃幅の超ピンポイントな温度管理が必要という、風で温度が変わりやすいアウトドアでは絶望的な条件ですが、これを踏まえていざ実践!

▲濡らしたサツマイモを水を含ませた新聞紙で包む。ちなみにイモの種類はホクホク系の紅あずま

▲全体をアルミホイルで巻く。新聞紙なしでアルミホイルを巻くだけでもいい

▲熾きの中ではなく周囲でじっくり焼く

家庭用オーブンを用いる焼き芋レシピでは「160℃で90分」ですが、今回は甘味を引き出すために低温・じっくりを目指します。

低温調理器を使った焼き芋レシピでは「90℃90分+180℃30分」の2段階加熱が推奨されているのでこれを参考にしましたが、問題は90℃程度の温度をどうやってキープするか?

バーベキューで知られるミシシッピテストでは、焼き網から20cmほど上に手をかざし、何回ミシシッピを数えられるかで温度を判断する方法で、10ミシシッピ以上数えられたら140℃以下とされています。

そして酵素が働く温度=65℃の場合、お湯だと、やけどをしないまでも指をつけると"熱っ"とすぐに引っ込めるくらい。

そこで13〜14ミシシッピの場所に置いて、しばらくしてからアルミホイルの表面を触り、熱くなっているか確かめながら加熱することに。

ちなみにカボチャや栗にもサツマイモと同じ酵素によって甘味が増すと言われており、ここまで手をかけるなら…と、いっしょにカボチャと栗も焚き火で焼いてみました。

▲カボチャは種を取ってアルミホイルで包む

▲水に浸けておいた栗の鬼皮に切り込みをいれる。こうしないと熱で弾ける

▲栗は包まなくてOK。網がなかったのでアルミホイルに載せてゴトクに置いたり、熾きの脇に寄せたり…

風向きによって状況が変わるので、気が抜けません。たまに温度を確認しながら加熱すること2時間…。

 

■結局スキレットがいちばん!?

どんなものかと試食してみました。

焚き火のそばにいたものの、ほかの作業をしながらだったので風向きが変わっていたのに気づかなかった時間があったためでしょう、時間をかけた割にまだ硬く、ホクホク焼き芋にはほど遠い状態。

少しだけ熾きに近づけてさらに30分加熱してみました。

今度は紅あずまらしいホクホクになっています。

素朴な甘さは安定のおいしさで、ミルクといっしょに食べれば疲れが吹き飛ぶ! 最後に熾きに近づけたときに微妙に焦げたところがあり、それが焚き火っぽくて格別な味になりました。

カボチャはいい感じのぽくぽくで種に近い部分はトロトロ。大きいので一部が焦げ、一部は少し硬さが残っていましたが甘みが濃い。バターを一片落とせば塩っぱさとの対比でペロリと食べられます。

栗は切れ目が大きく開き、簡単に皮をむけるようなら完成です。ゆで栗よりも香ばしく、ほくほく。無心に皮をむいて食べ進めてしまいます。

焚き火で作る焼き芋・焼き栗・焼きカボチャ、60〜65℃という温度にとらわれると風向きを考慮する必要があり手間がかかります。

正直、風に左右される焚き火を熱源としても安定した温度で焼けるダッチオーブンやスキレットを使うほうが簡単で確実。けれども焚き火とアルミホイルだけで焼き上げようと思うと、熾きを増やそう・いや散らしたほうがいいなど実験気分で夢中になれます。

甘味を引き出すためだけに焚き火と向き合い、失敗しても次こそは…と解決策を考える。一筋縄ではいかないところも焚き火焼き芋のおもしろさです。

<取材・文/大森弘恵 写真/逢坂聡>

大森弘恵|フリーランスのライター、編集者。記事のテーマはアウトドア、旅行、ときどき料理。X

 

 

 

 

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