「僕が選ぶ帆布バッグは、これ一択!」 台湾の帆布バッグ「一帆布包」の優れた素材と「デザインのちょうど良さ」

■衰退した地元の帆布産業を復活させるべく女性2人が立ち上げた「一帆布包」

▲台湾中部の台中・大甲にある「一帆布包」本店

▲店内には複数のバッグの現物を手にとって確認できます

▲その傍らでは、女性職人がミシンを踏み帆布バッグを作っています

 

この「一帆布包」が日本ではまだそう知られていないのも無理はありません。実はまだブランド立ち上げから10年ほどの歴史の浅い帆布バッグブランドだからです。

しかし、歴史は浅くとも、そのルーツは遥か50年ほど前にまで遡ります。聞けば、冒頭で触れた台南同様、かつて「一帆布包」がある台中・大甲もまた帆布素材のカバン製造で賑わった時代がありました。

最盛期の1970年代は「台湾国内向け帆布バッグのほとんどが台中・大甲製だった」という時代もあったほどですが、1980年代以降は、人件費の安い海外への生産移転(アウトソーシング)によって、地元の伝統産業は高度な技術を持ちながらも、徐々に衰退していきました。

それから数十年。長らく、国内外のブランドからのオーダーの帆布バッグの製造業を営んでいた父の背中を見てきた娘と友人の女性2名が、地元に根付く帆布素材・技術の素晴らしさに再注目。そして、新たな息を吹き込むカタチで立ち上げたのが「一帆布包」だったというわけです。

■最盛期のOEM受注の技術経験を「一帆布包」でもそのまま継承

▲「一帆布包」の運営者の女性が赤ちゃんだった頃の写真

ブランドを運営する女性に聞きました。

「今は、低コストでスピード重視のものづくりが主流です。結果的にOEMの発注先は賃金が安く、スピード感もある海外に移転することが多くなりましたが、だからこそ私たちは『台湾』に根付いたバッグにこだわりたかった。そして、歳を重ねた父の背中、少しずつ衰退していった地元の伝統産業にを前に『私たちが何かできることはないだろうか』『伝統産業に貢献できるよう役に立てることはないだろうか』と模索し、ブランドを立ち上げました」(一帆布包・運営者)

▲伝統的な地場産業を、デザインをきっかけに世代を超えた人々へと伝える「一帆布包」。写真は「帆布デイパック(クラシックリュック)」8769円(日本円)

また、元々は国内外のブランドからのオーダーの受注を行ってきただけあり、完成度・品質の高さも継承することができ、そこで前述のような筆者が感じる“全方ヨシ"を実現できるのだとも。

「特に『価格競争の低下』『市場の縮小』によって、優れた帆布という素材と職人の技術が評価される機会、目に留まる機会をも失っていきました。

この点も『デザイン』をきっかけに、世代を超えた人々に届くようにし、帆布と、それを支える職人の技に新しい評価、新しい価値を見出していきたいと思いました。ただ、昔ながらの手法を残しながらも、無理のない範囲での効率化を図ることで、『一帆布包』が成り立っています。

台湾に根付いたモノづくりの魅力を、日本はもちろん多くの国の人たちに届けたい。『台湾にはこんな素敵な技術があるんだ』ということを、『一帆布包』のバッグを通して感じてもらえるよう、今後も挑戦をし続けていきたいです」(一帆布包・運営者)

■世代や地域を問わず「誰が持っても、自然に似合う」を大切に

▲男女年齢問わず使えるデザインが多いのも「一帆布包」の魅力です。写真は「帆布3way ブリーフケース」1万2745円(日本円)

▲日常にそっと寄り添う存在を目指すという「一帆布包」。写真は「帆布手作りメッセンジャーバッグ(Lサイズ)」8068円(日本円)

最後に、筆者が「一帆布包」に感じ得る「デザインされすぎていないちょうど良さ」についても聞いてみました。

「帆布という素材の良さや実用性を大切にしながら『デザイン性』『多様性』は当然意識しています。さまざまな商品ラインを展開しながら、デザインの中に台湾らしい文化のエッセンスも取り入れ、世代や地域を問わず『誰が持っても、自然に似合う』ことを大切にしています。そのため、ほとんどのアイテムはユニセックスで、シンプルだけど、上質な素材感や細やかなデザインを施しています。

日本の男性の皆さんにも、ぜひ一度私たちのバッグを手に取っていただきたいです。あなたの日常に、そっと寄り添う存在になれたらうれしいです」(一帆布包・運営者)

見るだけでもカッコ良く、かわいらしい「一帆布包」の帆布バッグ群。ですが、実際に使ってみると「帆布バッグはもうこれしか持ちたくない」と思えるほどでもあります。ぜひ「Pinkoi」または台湾の各店でチェックしてみてください。

<取材・文/松田義人(deco)>

松田義人|編集プロダクション・deco代表。趣味は旅行、酒、料理(調理・食べる)、キャンプ、温泉、クルマ・バイクなど。クルマ・バイクはちょっと足りないような小型のものが好き。台湾に詳しく『台北以外の台湾ガイド』(亜紀書房)、『パワースポット・オブ・台湾』(玄光社)をはじめ著書多数

 

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