■車体剛性が高くてコーナリング性能も上々
少し慣れてきたところで、森の中のコースも走ってみます。

車体が軽量で扱いやすいので、木々の間を抜けていくようなルートも恐怖心なく走れました。乗っている感じはエンジン付きのバイクよりもe-Bikeと呼ばれる電動アシストのマウンテンバイクに近い感覚です。

そしてエンジン音がないので、森の中でも自然の音が耳に入ってきます(この日は主に雨の音でしたが)。これはエンジン付きの乗り物では真似のできないことなので、自然をより身近に楽しみたいという人には大きな魅力でしょう。

軽量な車体なのですが、路面をしっかりとグリップする感覚も伝わってきて滑りやすい路面でもコーナリングを楽しめました。特にフロント周りの剛性感があって、前輪への荷重をしっかり受け止めてくれるので安心感があります。オフロード向けの電動バイクの中でもサスペンションの性能が高く、路面追従性が良いのも安心感に繋がっています。減衰力やプリロードの調整も可能なので、体格や乗り方に合わせて設定できます。

ブレーキは前後とも4ポッドキャリパーの油圧ディスク式。マウンテンバイク向けのパーツのようですが、制動力・コントロール性ともに十分以上のものでした。ホイール径は試乗車はフロント18、リア16インチでしたが、フロント21インチ、リア18インチのいわゆるフルサイズも選べるとのこと。シートは高くなりますが、走破性はこちらの方が高くなります。
このマシンでレースにも参戦している「Ridge Cycle」の馬庭隼人代表によると、スタートでの加速は2スト250ccに匹敵するほどだとか。その割には扱いやすい特性に驚かされました。過酷なダカール・ラリーを走り切るには、こうした乗りやすさが有効なのだということでしょう。
■大容量バッテリーで航続距離は135km

バッテリーの容量は3960Wh(72V 55Ah)と大容量。航続距離は135kmですが、これは時速50kmでの定速走行での値です。実際に坂の多いルートなどを通ると、短くなることでしょう。馬庭代表によると「90分のレースは余裕を持って走り切れるが120分だとバッテリーの残量を気にしないといけない」とのこと。ハードな登りなどもあるレースでのことなので、遊びで走る分にはもっと余裕がありそうです。
長距離のツーリングを考えると、やや心細くなる数字ですが、ベースが競技用車両なのでシートは硬めで長時間乗るには向いていない作り。遠くまで行くというよりは、今回試乗したようなコースで走る、あるいはあまり遠くない林道などまで出掛けるという楽しみ方の方が合っているように感じます。

充電はポータブル電源でもできるので、クルマに積んで走りにいくのであればポータブル電源も併せて持っていけば休憩時間に充電することも可能。オフロードコースで120分以上走り続けるのは人間の体力的にも厳しいので、休憩時に充電をしながらであれば1日遊ぶことができそう。個人的には、電動バイクはそうした楽しみ方が一番合っているように感じました。

用途的には配達などの業務用やコミューターから普及の始まっている電動バイク。今回、実際に乗ってみると趣味の乗り物としてのポテンシャルも十分以上に持っていることが感じられました。ただ、長距離ツーリングを楽しむには、もっと大容量のバッテリーが必要で、そうなると車体も重くなってしまうというジレンマに陥ります。ひと昔前に比べるとバッテリーの技術は日進月歩で進化していますが、より幅広い層が楽しめるようになるためにはさらなる進化が必要でしょう。電動バイクの普及はバッテリーの進化にかかっているといえそうです。
>> Ridge Cycle
<取材・文/増谷茂樹 写真/松川 忍>
増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。
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