[再現!文学ごはん]エミール・ゾラ『居酒屋』の「仔牛のブランケット」

今回は海外文学から。ピックアップするのは1877年に書かれたゾラの『居酒屋』です。

もちろん完全にタイトルで選んだわけですが、決して、とりあえずで生ビールと冷やしトマトを頼んだり、タコブツで冷酒をやったりする小説ではありません。

フランス自然主義の巨頭エミール・ゾラの『居酒屋』は、パリに暮らす貧しい人たちのリアルが、これでもか! これでもか! と描写され続ける小説です。

大まかな筋書はというと、若く可憐な主人公のジェルヴェーズが貧乏のズンドコから浮かび上がりささやかな幸せを手にするものの、最終的に絶望的に堕落してしまう。そんなお話です。

現代の日本でも、多重債務者を描いた漫画作品などが人気を集めていますが、この『居酒屋』に出てくる人々も、その姿にちょっと似ています。

宵越しの銭を持たないどころか、すぐに小金を借ります。

小金を借りると調子に乗ります。

酒に溺れます。

浮気します。

女房を他人と共有したりもします。

やっぱり体を壊します。

不衛生でしどけなく残酷、身持ちが悪くみじめで猥雑。ああもう苦しい。なんとも言えない閉塞感!

そんな若干ムナクソ悪めな小説ではあるのですが、それと同時にやっぱり素晴らしいのです。

洗濯女やブリキ職人、パリの街の底を生きる人たちが隣人のように立体感を持って感じられ、まるでドキュメンタリーを見るような複雑な心の動きを誘います。

さて前置きが長くなりましたが、お料理です。

『居酒屋』には実は明るいシーンも多々あります。貧乏と背中合わせの陽気さで、集まり、酒を飲み、腹一杯食べる「長屋の花見」的パーティーがいくつか出てきて、パリの庶民食や酒飲み食がたくさん描かれます。

今回はその中からフランスの定番ご馳走「仔牛のブランケット」を作ってみました。

 

■さすがフランス!これはワインが進むぞ!

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