映画監督・平野勝之「暮らしのアナログ物語」【6】お守りになった手拭い

■手拭いという何気ない優秀で万能の道具

手拭いを使いだしたのはいつごろだろうか?

あまりハッキリは憶えていないのだけど、二十歳ぐらいの頃から頻繁に使いだした気がする。そう思うと、その付き合いはすでに30年ほどだ。

自分の場合、すでに生活の一部になりすぎていて、ほとんど意識する事がなくなっている。出かけるときは必ず一枚はカバンの中に入れているし、自宅でもとにかくいろいろ使う。

歴史も当然のように古いのだろう。

両端が縫われてないのは水切れを良くして清潔を保つためらしい。

タオルのようにかさ張らないし、軽量。また速乾性もあるから、アウトドアなどにも必需品だと思う。値段も安く、加えて今は色々な柄があるので選び放題。使い方によってはお洒落な小物にも変身可能だ。僕は昔ながらの矢絣や市松模様などシンプルなものが好みだけど、「いいな」と思ったものを見つけたら気分によってたまに購入するのでいつのまにかたくさん集まってしまった。

古いものは雑巾にするから、無駄が無いのも良い。

これほど何気なくて万能の道具はちょっと見当たらない。

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■旅のお供に最適

僕の場合、自転車が日常であり、たまに旅に出る。

必ず持って行くのが手拭いだ。

夏は汗を大量にかくので常に首に巻いている。服や小物との色合わせ、柄合わせをするのも、旅の準備の時の楽しみのひとつ。

そして、最も楽しいのは旅に行く時の季節を考えて季節柄の手拭いをいくつか忍ばせる時なのだ。

春なら桜、初夏なら蛍、夏のお盆時期ならお化け柄、秋なら名月のお月様柄、冬なら雪の柄、と、いった具合。

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■日本の季節と手拭いの関係

そんな僕でも旅に行けるのは少ない。

だから、普段の生活に季節の手拭いを取り込んでいる。

キッカケは20年以上前、確か何かのお店の人に「普段使う手拭いの季節柄は、昔からその季節の少し前から使う習慣がある」と教えてもらった事による。

昔ながらの日本人らしいその習慣にすごく惹かれてしまった。

以来、部屋のどこかに手拭いを設置して、季節によって変えるようになった。

外に行く時も、その季節の柄を持って行く事があるけれど、今は台所の手拭きが季節柄を使うメインとなっている。

写真は、ちょっとヨレヨレの手拭いが多くて恥ずかしいけど、普段のまんまをあえて出してみた。

こんな感じで慣例に従い、その季節の少し前から手拭いを合わせて変えるようにしている。

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■お守りとなった手拭い

昔、アメリカ人3人組と僕が道先案内人となって共に山梨から白川郷まで、一週間ほど自転車旅をした事がある。

旅はそれなりにいろいろあったわけだけど、無事に予定通り目的地の白川郷まで到着した。

3人に記念に何かプレゼントしようと思ったが、気の利くものが思いつかず、咄嗟に僕の使っていた日本の伝統的な柄の手拭いをプレゼントした。

3人は喜びすぎて、汗付いてるから洗ってから使ってくれ、と言ったにも関わらず手渡した瞬間から、ずっと首に巻いていた。3人とも僕とお別れするまで首につけたままだった。

今度は3人からお礼に白川郷で買った一枚の手拭いをプレゼントされた。

3人のサイン入りだった。

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旅の無事と面白い旅になるのをお祈りするとメッセージももらった。

今でも僕は旅に出る時、その手拭いを必ずお守りとして持っていく。

なんと、手拭いは「お守り」としての役割も可能だったのだ。

以来、僕は旅で気に入った人に出会った時のため、プレゼント用の手拭いも密かに荷物に忍ばせている。

 


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(文・写真/平野勝之)

ひらのかつゆき/映画監督、作家

1964年生まれ。16歳『ある事件簿』でマンガ家デビュー。18歳から自主映画制作を始める。20歳の時に長編8ミリ映画『狂った触覚』で1985年度ぴあフィルムフェスティバル」初入選以降、3年連続入選。AV監督としても話題作を手掛ける。代表的な映画監督作品として『監督失格』(2011)『青春100キロ』(2016)など。

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