2017年度に標準装備化が図られるのは、事故の防止と被害軽減を狙った“衝突被害軽減ブレーキ”、AT車のペダル踏み間違いによる事故を抑制する“AT誤発進抑制制御”、走行中に死角から他車が接近すると警告する“BSM(ブラインド・スポット・モニタリング)”、そして、駐車場からバックで出ようとした際に、近づいてくる他車の存在を警告する“RCTA(リア・クロス・トラフィック・アラート)”の4種類です。
「なぁ〜んだ、他ブランドのモデルでもよく耳にする、例の機能か…」と拍子抜けした人や、「結局、パーツメーカーからの提案次第でしょ」と冷めた見方をする方がいるかもしれません(←いずれもワタシです)。でも、安全性向上にかかわるマツダのエンジニアの方たちと話をして、「ちょっと違うかも…」と認識を改めました。安全機能をまとめたユニットを“ポン付け”すれば、「一気に安全性が高まる!」わけではないのです。
先進安全技術が機能を十二分に発揮するためには、ベースとなるクルマの基本性能が充実していなければいけません。その基本性能とは、“良好な前方視界”、“適正なドライビングポジション”、“そのための自然なペダルレイアウト”、“意のままと感じる操縦安定性”などです。
こうした“運転環境”が土台にあり、その上にi-ACTIVSENSEが載り、最後に“パッシブセイフティ”が乗員の安全をできる限り守る…。それが、マツダが考える安全性能であり、またまた難しげな名前が出てきてナンですが“MAZDA PROACTIVE SAFETY”と呼ばれる安全哲学です。
では、安全運転の「基本の“キ”」たるドライビングポジションについて、クルマ側からは何ができるのか? 復習してみましょう。
ご存じのように、マツダは、右足を自然に伸ばした先にアクセルペダルがあるように、その位置に心を配っています。
ごく当たり前のことのようですが、右ハンドル車の場合、右側からタイヤハウスが張り出すので、どうしてもアクセルペダルが左側に押されがち。すると、アクセルとブレーキが必要以上に接近しがち。結果、ブレーキのつもりでアクセルペダルを踏んでしまう間違えが起こりがち…。
不適正なペダルレイアウトは、最近とみにニュースになる“高齢者ドライバーのペダルの踏み間違い事故”の、ひとつの原因といえるかもしれません。ただし! 確認事項があります。実は、ペダルの踏み間違い事故は、体の自由が制限される世代だけではなく、29歳以下のドライバーによるものも多い。いや、むしろ70歳以上の事故数を上まわっているのです! ペダル踏み間違い事故は、高齢者だけを対象に対策すれば済む問題ではないのですね。
ペダルに関して、自然なレイアウトに加え、マツダがこだわっていることがもうひとつあります。そう、床からペダルが生える“オルガン式のアクセルペダル”です。オルガン式ペダルは、足先の動きに自然に添いますので、“意のままと感じるハンドリング”を得る一助となります。
さらに! “アクセル←→ブレーキ”間のペダルの踏み替えが、吊り下げ式ペダルのそれよりも楽なのです。実は、吊り下げ式のアクセルペダルの場合、走っているうちに、つまりペダルを踏んでいるうちに、足先全体が前に進む傾向があります。結果的に、“アクセル←→ブレーキ”間の段差が大きくなる。一方、オルガン式では、基本的にカカトの位置が動かないので、素直にペダルの踏み替えができる…。意外な利点があるものです。
ブレーキのつもりでアクセルペダルを踏んでしまい、焦ってパニックになっている時。この踏み替え時のスムーズさの違いが、大きな差となって表れます。ちなみにマツダでは、アクセルペダルを吊り下げ式からオルガン式に変更したところ、(デミオ、アクセラ、アテンザによる)ペダル踏み間違い死傷事故の発生件数は、なんと86%も減少したといいます!
正しいドライビングポジションを取るために必要な、自然なペダルレイアウトやペダル形態は、クルマの開発初期からよく意識してこそ、実現できるのです。「Be a driver.」のためだけでなく、安全のための基本的な要件でもあるのですね。