フロントとリアの“表情”で親しみやすさを演出!クルマを使う「すべての人」に向けた新型ピュアEV「ID.EVERY1」お披露目

■「フェラーリP4」のエッジを応用したボディデザイン

デュッセルドルフの会場では、ランウェイのようなしつらえの場が作られ、イベントが始まると、まず、ID.3からID.7にいたる現行のBEVが音もなく、しかしいかにも軽快に、参列者の前を縦横無尽という感じで走り回りました。

そのあと、鳴り物入りでID.EVERY1が登場。先に触れたとおり、全長はコンパクトですが、全幅が1.8m、全高は1.5m近くあり、かつ19インチの大径ホイールと組み合わせた扁平率40パーセントのタイヤが四隅に配されたプロポーションが、かなり力強い印象を与えました。

デザインの見どころについて、VWでヘッドオブデザインを務めるアンドレアス・ミント氏に尋ねると、「クオリティ感です」と答えが返ってきました。

▲デザインを統括するアンドレアス・ミント氏

「デザイン上意識したのは初代ゴルフにも通じる太いリアクォーターピラーです。ゴルフはそのあとの世代では、ピラー下部にショルダー(ふくらみ)を設けてきましたが、やはりジュジャーロが手がけた初代のようにボディと面がきれいにつながるほうがクリーンで、かつ力強いと思います。そこで、ゴルフも(先代の)第7世代以降、今回のID.EVERY1のようにピラーとボディをつなげています」

ID.EVERY1のボディはキャラクターラインがなく、面の表情を強調。かつボディのエッジはやたらクリスピーとはせず、あえて丸みを持たせています。クリスピーとはデザイン用語で、角を立たせることをいったりします。

ミント氏は「フェラーリP4(1966年に開発されたレーシングプロトタイプ)のあのエッジの感じがいいと思って、それを自分たちなりに応用しました」と、インタビューで教えてくれました。

「ID.2allとID.EVERY1が似ているかと問われると、まったく違うクルマです、と答えます。ID.EVERY1は乗る人との関係性。スマイルを意識したフロントとリアの”表情”で親しみやすさを演出しました」

ID.2allが車名のとおり「クルマ好き全員」という意味を「all」に込めているのに対して、「EVERY1」はその名のとおりクルマを使う「すべての人」が対象と考えていいですか、と私がミント氏に確認したところ、「そのとおりです」との答えてくれました。

価格は、ID.2allが2万5000ユーロ(1ユーロ=160円として約400万円)であるのに対して、ID.EVERY1は2万ユーロとされています。いまの為替レートでは320万円ですが、仮にあちらの感覚で1ユーロ=100円ぐらいとしてみると、200万円。当面欧州での販売に限られるのが残念です。日本に導入されることを願いたいものです。

【Specifications】
Volkswagen ID Every1
全長×全幅×全高:3880×1816×1490mm
ホイールベース:2539mm
動力:バッテリー駆動電気モーター
駆動:前輪駆動
最高出力:70kWと95kW(2モデル想定)
一充電走行距離:250km以上

<文/小川フミオ、写真提供/フォルクスワーゲン>

オガワ・フミオ|自動車雑誌、グルメ誌、ライフスタイル誌の編集長を歴任。現在フリーランスのジャーナリストとして、自動車を中心にさまざまな分野の事柄について、幅広いメディアで執筆中

 

 

【関連記事】
◆利便性が高くパワフルな全輪駆動!フォルクスワーゲン「ID.BUZZ GTX」は大きな荷室のピュアEV“カーゴ”
◆フォルクスワーゲンがピュアEVの“ID”シリーズに魅力的な新作「ID.2 all」を投入する目的と意義
◆フォルクスワーゲン「ID.4」の なめらかな走りと快適な乗り心地にEVの進化を見た

トップページヘ

この記事のタイトルとURLをコピーする