開発リーダーが明かす!ロードスター30周年記念車“レーシングオレンジ”採用の秘密

■次期モデルは、より軽く、より小さく、より低く…

ーーロードスターといえば“走り”も重要な要素ですが、初代との共通点や、開発に当たって重視されていることなどはありますか? 今回の記念車も、かなり走りを意識したセットアップのようですが。

中山さん:もちろん走りは、ロードスターが最もこだわっている部分です。ドライバーとクルマが“人馬一体”の状態となり、走る歓びを感じられるというのは、初代から共通する美点。近年、この“人馬一体”はすべてのマツダ車に共通するテーマとなり、ロードスター特有のものではなくなってしまいしたが、強いて挙げるなら、ロードスターはクルマが軽いことがファクターとなり、“人馬一体”を表現しているクルマ、といえるでしょう。

“意のままの走り”という点については、モーターなどの電気デバイスに頼っても実現できるとは思うのですが、現状のままでも、軽さによってそれを体現できているのが、ロードスターならではの美点だと思います。電子デバイスに頼らなくてもいいというのは、まさにロードスターらしい生き方、ですよね。

また、走りの基本的な部分は変えず、グレードによって少しずつキャラクター分けができる点も、初代から現在まで続くコンセプトです。初代にも、ビルシュタイン製のショックアブソーバーを採用するモデルを用意していましたし、2代目からは、モータースポーツ向けのベース車両である「NR-A」というグレードを設定しています。ロードスターというしっかりとしたベースがあった上で、「このグレードはこういった方向性にしよう」というアレンジができるのも、現行モデルにまで受け継がれるロードスターのDNAでしょうね。

ーー中山さんといえば、初代と現行モデルの双方を所有されているロードスター愛好家、という一面もありますが、開発に当たって感銘を受けられたクルマや、意識されたクルマというのはありますか?

中山さん:私がロードスターの開発に携わるようになったきっかけは、デザイナーとしてでしたから、デザイナー視点からになりますが、まずはいい訳なしにカッコいい、美しいクルマを作りたいと思っていました。理由は、カッコ良さや美しさというのは、時の流れでは風化しないと思うからです。食べ物で例えれば、甘いとか辛い、濃いとか薄いといった“味の状況説明”ではなく、「美味しい!」という人類共通の価値の尺度で表現したい、といった感じでしょうか。クルマにおいても、「好き!」とか「欲しい!」という動詞で表現できるデザインを、カタチにしたいと考えていました。そういった視点で考えるなら、初代ロードスターには感銘を受けましたし、意識したクルマともいえるでしょうね。

また、クルマ好きの視点から見た場合に意識した1台といえば、ランボルギーニ「ミウラ」でしょうか。社内のとあるエクステリアデザイナーと初めて仕事をした時、彼も「ミウラのようなクルマを作りたいんです!」といっていたのですが、いつの時代も、皆が美しい、カッコいいと思うモノには、やはり理由があるのです。変わらない価値や、永遠の美とでもいいましょうか。本当にいいモノというのは、皆さんやはり、いいとおっしゃるはずです。なのでこれからも、そういったクルマを作っていきたいと考えています。

ーーちなみにロードスターには、歴代の開発者やデザイナーから継承されている“禁じ手”のようなもの、「コレはやってはいけない!」という決め事みたいなものはあるのでしょうか? また、中山さんご自身が「コレは絶対にやらない」と決めていることはありますか?

中山さん:そういったものは、特にありませんね。むしろ「ロードスターのデザインはかくあるべし」と皆さんが思っているものがあるならば、ND型ではそれを裏切っているかもしれません。

例えば、細かいことですが、歴代モデルのサイドマーカーは丸い形をしていましたが、ND型では三角形にしています。もちろん「ロードスターのサイドマーカーは丸に限る」というルールはありません。初代が丸形を選んだのは、当然、理由があってのことでしょう。現行モデルの場合、デザイン的に三角にする理由があったので、三角にしています。そういう意味では、一般的に“禁じ手”と思われていることを、ND型では結構、実践しているかもしれませんね。でも、工業デザインの基本として、カタチには意味があるわけです。必要があるから変えるわけで、歴代の開発者にも、そういった部分を指摘されたことはありません。まあもし、いわれていたとしても、やっていたかもしれませんけどね(笑)。

ただし、色に関していえば、現行モデルは立体的で深い造形なので、光の当たり方で極端に色味が変わるボディカラーは、不要だと思っています。彫りが深ければ自然に陰影がつきますから、光の角度で陰影がついたり、色味が変化したりすると不自然に見えてしまいます。なので、エフェクトが強過ぎるカラーは必要ないと思っています。

ーーさて、30周年記念車の開発テーマにある“決意”というキーワードからも、ロードスターの未来を感じることができますが、今後、ロードスターはどういう方向へ進むのでしょうか? また、中山さんにとって理想のロードスターとは、どんなクルマですか?

中山さん:次のロードスターをどのようにするか、というのは、難しい課題ですね。何しろ、ND型の出来がいいですから(笑)。

でも、真面目にお答えすると、いいクルマの次というのは、本当に難しいというのが本音です。もしも奇跡を起こせるならば、もうちょっと軽く、もう少し小さく、より低くしたい…とは思っていますね。

ND型よりも低く、軽くとなると、運転しづらいと思われるかもしれませんが、ゴーカートって低くて軽いじゃないですか。それが走る楽しさに結びついていると思うんです。現行モデルより低くて、前にエンジンがあって…いや、モーターでもいいかな。次はそういうクルマにできるのが理想ですね。

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(文/村田尚之 写真/村田尚之、マツダ)


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