独自の哲学で音へのこだわりを貫き通す気鋭ブランド「final」の真価【CRAFTSMANSHIP】

■自社工場だからこそ作れる最高峰のヘッドホン

ここ数年、オーディオ関連の専門家や愛好家から高い支持を集めているfinal。その歴史が始まるのは今から40年以上前のことで、当初はハイエンドのオーディオショップとして創業した。

ブランド初の製品はレコードカートリッジで、以降、ハイエンドオーディオのフルセット販売や業務用機器の音のチューニングなど、音作りに関わるさまざまな事業を手掛けてきた。

▲ヘッドホンのハイエンドモデルは、川崎市の自社工場で製造。専門スタッフが手作業で緻密な調整を繰り返し、組み立てていく

本格的にイヤホンやヘッドホンを展開し始めたのは、つい最近のことだ。日本モレックスの子会社として設立されたS'NEXTが2014年に独立。この時から徐々にfinalブランドでのイヤホンやヘッドホンが増えていった。

▲熟練のスタッフがひとつひとつのパーツを丁寧に組み立てる

そのものづくりの特徴は、音響工学的に正しい音を追求すること。マーケティング的な観点でトレンドに沿った製品を作るのではなく、音響工学に基づいた理論をベースに開発し、実証実験を繰り返して、製品化するというものだ。

▲組み立て途中の「D8000」。パーツの接着工程後、乾燥させて、イヤーパッドなどを装着する

この考え方を実践すべく、川崎市の本社に自社工場を併設し、ここで開発や設計を行なっている。ハイエンドのヘッドホンについては、製造も自社工場で手がけ、振動板を独自開発した機械で1枚ずつ作り、コイルも自分たちで巻くというこだわりようだ。

▲自社工場は研究所のような雰囲気

こうした音作りに対する徹底した姿勢は、エントリーモデルのイヤホンにも反映されている。2017年に登場した「E3000」は5000円ほどという価格に見合わない音の良さでたちまち話題となり、幅広い層の支持を集めた。2018年にはさらに低価格の「E1000」も発売。

▲工場内には音質の検証用機器も設置している

「いい音をより多くの人に届けたい」という思いとものづくりに対する真摯な姿勢が、多彩な製品を通して着実に広まりつつある。

 

■finalが生み出してきた傑作5モデル

▼艶やかな筐体が引き出すプレステージサウンド

「SONOROUS X」(62万9000円)

ヘッドホンの頂点を目指したモデル。振動板にはチタンを使い、ドライバーユニットのハウジングは無垢のアルミから削り出したもの。妥協のない明瞭な音と美しさを高次元で実現した。

 

▼ホールで聴く余韻を美しいフォルムで再現

「Piano Forte X」(25万3500円)

ライブ会場やホールの臨場感をイヤホンで再現。イヤーピースがない仕様だが、音の余韻までも表現できるクロム銅筐体や大口径ドライバーにより、美しい響きを堪能できる。

 

▼外観もエージングして経年変化を楽しむ

「Heaven V aging」(3万7800円)

筐体のエージングも楽しめるモデル。ボーカルを自然な音で響かせる真鍮を無垢のまま使い、バレル研磨を施してザラつきがある質感を再現。年月を経ると独特の味わいが生まれる。

 

▼共振を分散させる煌びやかな凹凸模様

「Heaven VⅢ」(7万8600円)

シングルタイプのBAドライバーを採用。金属微粉末とバインダーを金型で整形し、焼結して形状を整える技法で、背面に独特な凹凸模様を施した。これは共振を分散させ、音を安定させる働きがある。

 

▼広大な音場を生み出す異形デザイン

「LAB Ⅱ」(生産終了)

今までにない製品を作るべく、独特な形状を3Dプリンタを用いて緻密に造形。複雑かつ理想的な二重メッシュ構造と、フルオープンの背面により、広大な音場を再現できる。

【次ページ】finalが目指すものとは?

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