【シトロエンC4試乗】エンジンも足回りも進化した熟成の“後期型”

新たに搭載されたのは、PSA=プジョー・シトロエン・グループが総力を挙げて作った新世代エンジン“PureTech(ピュアテック)”の1.2リッターガソリンターボ。インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー2015を受賞したユニットで、しかも1.0〜1.4リッター部門という、各社の開発競争が熾烈を極める激戦区において…、というから立派です。

などと前口上を聞いてしまうと、プラシーボ効果(一種の暗示)をガッツリと受けやすい性格のワタクシは、ニュートラルな気持ちどころか、多少辛目の視点から入るように心掛けているのですが、このエンジンは辛口で見ても、甘く見ても、発進直後からモリモリとパワーが湧き出る、美味しいエンジンに仕上がっていました。

なにせ、わずか1750回転で最大トルクの23.5kg-mを発生するのです。正直、排気量がたった1.2リッターなんて、信じられませんでしたね。全くターボの存在を感じさせません…とまではいいませんが、アクセルを踏んで加速が始まるを待たされたり、待たされた挙句、急にテンションを上げられたりするような、躾のワルさもないのです。オーディオをオフにしていると、ターボが頑張って過給しているサウンドや、アクセルオフでプシューというブローオフのサウンドが聞こえてくることはあるものの、むしろ臨場感があって楽しいくらい。とても元気のいいエンジンなのです。

しかも、このエンジンは3気筒なのです。4気筒といわれても「ですよね〜」といってしまいそうなくらい、気筒数減によるノイズや振動が気になりませんでした。一般的には多気筒=スムーズというのが常識ですから。一方、3気筒にすると部品点数が少なくなってコストダウンできるのに加え、部品が少ない=動いたり接触したりするものが少ないので、フリクションロスが抑えられて、燃費も向上するといったメリットがあります。

また、エンジンがコンパクトになって、クルマ全体の運動性能がアップするといった可能性も秘めています。このPureTechエンジンは、それらすべてをアドバンテージとして取り込んでいる印象です。他社に先駆けて、シトロエンが積極的に取り組んだストップ&スタート機能(アイドリングストップ)を採用していることもあり、燃費はJC08モードでリッター当たり16.3km。従来の1.6リッターエンジンは同13.5kmでしたので、2割くらい良くなっている計算です。

このエンジンにEAT6と呼ばれる6速ATを組み合わせることで、パワートレインの重量が実は約30kgも減っているとのこと。C4は、フロントにエンジンを積んで前輪で駆動する、いわゆるFFなのですが、フロントノーズに積まれるパワートレインが30kgも軽くなったことで、ハンドリングがとってもクリア。重いものを突っ張って支えているフィーリングが少なく、ドライブしていてもクルマが軽やかなのです。

試乗ルートの一部は首都高でした。大黒パーキングエリアに続くジャンクションは螺旋状になっていて、長いコーナーが続きます。コーナーの外側にあるタイヤにグーッと荷重がかかるような走り方をしても、前輪もしくは後輪からズルズルと滑り出すのでは…と不安になるようなことはありませんでした。むしろ、ガッチリと路面とタイヤが接触している感じがあって、安心してステアリングを握っていられます。まるで運転が上達した気分になります。もともとのサスペンションの良さも当然あるのでしょうが、クルマの前後バランスがとても良いのでは…、という印象でした。

さて、素晴らしい運転体験をもたらしてくれる新C4は、外観もブラッシュアップしています。ヘッドライトの一部にLEDを組み込んで、ウインカーと連動して点滅するようにしています。これだけでも一気にモダンな印象になりました。同時に、リアのコンビネーションランプのデザインにも立体的な視覚効果を採り入れるなど、新しさをシッカリとアピールしています。

存在もフレッシュに、走りもパワフルになったシトロエンC4は、目下、“セダクション”と呼ばれるモノグレードで価格は276万円。これにパノラミックガラスルーフや17インチアルミホイールなどを組み合わせたパッケージオプション“アップグレードパッケージ”を選ぶと296万円になります。

新しいC4の核心は、間違いなく新パワートレインの搭載。力強い走りがアドバンテージになっているのと同時に、そのパワートレインの軽量化が走り全体に好影響をもたらしていました。

同じC4ではあっても“シトロエンC4 後期型”“シトロエンC4 S”など、なんと呼ぶかは別にして、マイナーチェンジ前とはハッキリと区別したくなる、華麗なる変身ぶりにビックリさせられました。マイナーチェンジでも大幅な変更になると“ビッグマイナーチェンジ”と呼ぶこともありますが、これはもうビックリマイナーチェンジ、もしくはメジャーチェンジの領域です!

<SPECIFICATIONS>
C4 セダクション アップグレードパッケージ
ボディサイズ:L4330×W1790×H1490mm
車重:1330kg
駆動方式:FF
エンジン:1199cc 直列3気筒DOHC ガソリンターボ
トランスミッション:6速AT
最高出力:130馬力/5500回転
最大トルク:23.5kg-m/1750回転
価格:296万円

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