【ベンツ Aクラス海外試乗①】進化した走りはクラスNo.1の出来栄え!:河口まなぶの眼

■乗り心地の良さは「Cクラス」を超えた!?

果たして、新型の出来栄えはどんなものか? 大きな期待とともに、国際試乗会が開催されたクロアチアのスプリトに飛んだ。

が、実際に試乗してわずか数分間で、控えめにみても、期待のはるかに上をいっていると感じさせるだけの、強烈なインパクトがあった。なぜなら、走り出してすぐに同乗者と顔を見合わせて「うわ、すごい!」というほどの、乗り心地の良さだったからだ。

メルセデス・ベンツが6年ぶりにフルモデルチェンジした新型Aクラスは、それほどまでに驚きの進化を遂げており、走り出してすぐ、現時点での「このクラスのN0.1」を確信できる仕上がりだった。

最初に試乗したのは「A250 エディション1」という、メルセデス・ベンツが新型車を送り出す時に必ず設定する限定モデル。これは、最上級モデルの「A250」をベースに、いわゆる“全部つき”とした装備充実仕様。

それだけに、タイヤ&ホイールは見た目も華やかな19インチサイズが与えられていた。正直、このクラスに19インチというのは、これまでの常識ならトゥーマッチといえる大きさ。下手すると、これだけで乗り心地が悪化する要素(サイズの大きなタイヤ&ホイールは重く、サスペンションの動きが鈍ったり、突き上げがキツくなったりする)だが、それにも関わらず、走り始めると「Cクラスを超えたかも?」と思えるほどの乗り心地が実現されていたのだから、インパクトは強烈だった。

この乗り心地の良さは、現行モデルで用いられた“MFA”プラットフォームの進化版である“MFA2”が、いかにしっかりと作り込まれたものであるかの証でもある。昨今の衝突安全基準を満たす堅牢さと同時に、走りに効く高剛性をしっかりと導き出したからこそ、そこに取りつけられたサスペンションがよく動き、19インチサイズのタイヤでも履きこなせるわけだ。

ちなみに今回のAクラスには、リアサスペンションが2種類用意されており、16〜17インチサイズにはトーションビーム式を、18〜19インチにはマルチリンク式を、といった具合に使い分けている。理由は、高出力や高性能を支えるべくタイヤを大きくする場合は、マルチリンクを採用することで、運動性能と乗り心地の両立が期待できるからだろう。しかしながら最近では、低コストのトーションビームでも運動性能と乗り心地の両立は可能であるため、おそらく16〜17インチが装着された車両に乗っても、その走りは決して悪くないはずだ(今回の試乗車はリアがマルチリンク式のものだけだった)。

もっともこのA250には、さらに電子制御の可変ダンピングシステムが備わっていたため、乗り心地はノーマルと比べてより優れたものを実現できる。それもあって、先に抱いたような強烈なインパクトのある乗り味を示したわけだ。

一方、エンジンの印象は、相変わらずメルセデス・ベンツらしいもの。つまり、官能性はほぼないものの、扱いやすくしっかりと性能を発揮するタイプだ。

A250に搭載されるのは、2リッターの直列4気筒直噴ターボで、これは現行モデルに搭載されていたものの進化版。最高出力は224馬力、最大トルクは350N・m(約35.7kg-m)となる。

ガソリンエンジンはこのほかに「A200」に搭載される、ルノーとの共同開発による1.4リッター(実際は1332cc)の直列4気筒直噴ターボが新規採用された。こちらは最高出力が163馬力で、最大トルクは250N・m(約25.5kg-m)となる。

そしてこのほかに、本国向けとして1.5リッターのクリーンディーゼルも用意されている。

どのエンジンも“7G-DCT”と呼ばれる7速のデュアルクラッチ式トランスミッションが組み合わされる。ただし、A200の1.4リッターに組み合わせられるものは、新開発でより小型軽量化を実現したものである。

1.4リッター、2リッターともに、軽やかに回って低回転域から太いトルクを発生するため、扱いやすさは抜群。その上で2リッターは、やはり十分以上のパワー&トルク発揮するため、アクセルペダルを踏み込むと、痛快な加速を味わわせてくれるだけのパフォーマンスを発揮してくれる。

一方、1.4リッターを積むA200は、当然、2リッターに比べればパワー&トルクは劣るが、実用上はなんの不満もない。今回は、大人の男性3名でドライブするシーンもあったが、そうした場面でも力不足は感じなかった。

ただし静粛性に関していうと、1.4リッターと2リッターとでは少し差がある。というのも、2リッターエンジン搭載車は、エンジンルームと車室との間にある隔壁(バルクヘッド)の前に、さらにもう1枚、隔壁を設けているため、エンジンのノイズ等をしっかりと遮断しているからだ。

ただし、1.4リッターにはそうしたプラスαの隔壁がないものの、想像以上に騒音振動が抑え込まれていて、逆に好印象だった。というのも新型は、空力特性が徹底的に磨き込まれていて、Cd値(空気抵抗係数)=0.25という優秀な数値を実現。同時に、風切り音等の大幅低減(マイナス30%)が図られているため、走行中の静粛性はとても高く、快適な室内環境が構築される。

こんな具合に新型Aクラスは、同セグメントの名車であるゴルフや1シリーズ、A3と比べても、走りの質は一段上をいく。特にA250エディション1は、たとえ路面が荒れていたり段差があったりしても、実にきれいにならされた路面であるかのようなフラット感を常に実現している。

もっとも、A200で可変ダンピングシステムなしの18インチサイズに乗ると、最初のような強烈なインパクトは感じない。とはいえそれでも、やはりこのクラスをリードする乗り心地を実現しており、好印象は変わらない。

一方でハンドリングも優秀。ステアリングフィールは、A250エディション1では極めて軽いがしっかり芯があり、ハンドル操作をするとロールをほとんど感じさせずにコーナーを駆け抜けていく。

一方のA200は、可変ダンピングシステムのないメカニカルサスペンションのためか、A250エディション1よりハンドルの手応えがしっかりあって好印象だった。

そして、最近のクルマで特に重要なADAS(運転支援)を含んだ安全装備でも、新型Aクラスは同セグメントの頂点といえるだけの内容だ。

実際にADASは「Eクラス」や「Sクラス」と同じ装備が与えられる。例えば、前走車に追従してアクセル/ブレーキ/ハンドルを自動で操作する“アクティブディスタンスアシスト・ディストロニック”は、当然装備する。

また、後側方からの接近車両等があれば警告したり、ハンドル操作を規制したりする機能も備える“ブラインドスポットアシスト”は、今回さらに進化。車両を路肩に停めた際、エンジン停止後でも3分間有効となり、これによりクルマから降りる際、後側方から接近する車両や自転車に対しても反応し、警告を発する。

そして、Eクラスに初搭載されて話題となった、ウインカー操作だけで車線変更する“アクティブレーンチェンジアシスト”機能も採用。複数車線の道路で80~180km/hで作動し、ウインカーを出すと10秒以内に、前方/側方/後方の隣車線に障害がないかを自動で確認し、周辺車両の車速も把握しつつ安全ならば車線を変更する。

こんな具合に、安全装備に関しても、新型Aクラスはライバルを大きく引き離した。この結果、ハードウェアとしては、欧州Cセグメントの中で見ても、現時点では最も充実している。

果たして、強烈なインパクトを与えてくれたA250エディション1が日本に導入されるかどうかは分からない。が、今回一発目にこれをドライブしたことで、僕は改めて「メルセデス・ベンツはすごい!」と感じた。

現行のAクラスも、かなり意欲作だったが、それでも王者のゴルフと比べた時には、今一歩及ばず、の印象があった。しかし新型は、完全にゴルフに並び「このクラスにおける頂点に立ったのでは?」と感じさせた。

もっともこれは、あくまで現時点での話。この先、登場するだろう8世代目のゴルフも、相当気合いを入れて開発されるはず。となると、現在このクラスのリーダーになったといえる新型Aクラスとの真っ向勝負が、今から楽しみだ。

そして、新しいAクラスの登場によって、同カテゴリーの基準はさらに高まった。ここに、日本車のライバルがどこまでついていけるか、非常に興味深く思えるのである(Part.2へ続く)。

(文/河口まなぶ 写真/メルセデス・ベンツ日本)


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