これは速いぞ!日産「オーラNISMO」はe-POWERチューンで刺激的な加速を手に入れた

■先代の「ノートe-POWER NISMO」が支持された理由とは

先代のノートをベースとした「ノートNISMO」と「ノートe-POWER NISMO」は、ノート全体の販売台数に対するシェアが、ライフ全体で約7%に達するほどの人気グレードでした。特にノートe-POWER NISMOの登場直後は、10%以上のシェアをマークすることも。と同時に、日産の「NISMOロードカー」シリーズの販売も大きく飛躍させたのです。それだけに新型は、ユーザーはもちろんのこと、日産自動車にとっても待望のモデルだったといえるでしょう。

新型のNISMO仕様はオーラをベースとしており、気になるパワートレーンはe-POWERのみとなっています。エンジンを発電専用に動かし、駆動はEV(電気自動車)と同じくモーターのみで行うe-POWERは、メーカー純正のチューニングカーともいうべきNISMO仕様にふさわしい心臓部なのか? 実はそんな思いがドライブする前にはありました。しかし、実際にドライブしてみると、先代のノートe-POWER NISMOが支持された理由が見えてきました。

新型のNISMO仕様を開発するに当たって、ノートではなくオーラに白羽の矢が立った理由は、ボディと心臓部にありました。40mmワイド化されたオーラのボディは運動性能を高める上で圧倒的に有利であり、しかも、オーラはノート比で最高出力が18%、最大トルクは同7%もアップしています。それらを考えると、オーラがNISMO仕様のベースに選ばれたのは必然といえるでしょう。

■お飾りではないNISMO専用エアロパーツ

オーラNISMOのルックスは、コンパクトカーとは思えないほど上質なオーラのそれに、NISMO仕様らしいアグレッシブさをプラスしたもの。車高は20mmローダウンされ、前後バンパー、サイドシル、リアスポイラーにはNISMO専用のパーツを採用しています。これらの相乗効果で、ロー&ワイドな印象が強調された、迫力あるルックスに仕上がっています。

当然、NISMO専用パーツはただのお飾りではありません。例えば前後バンパーには、レーシングフィールドで編み出されたNISMO独自の“レイヤードダブルウイング”を進化させて採用。これらのエアロパーツにより、Cd値(空気抵抗係数)はベースモデルと同じ0.31のままですが、Cl値(揚力係数)は0.14低減された0.03となり、走行中のダウンフォースがアップしています。

NISMOのアイデンティティを示す赤のアクセントやロゴは、新型から新世代のものへと置き換えられました。赤のアクセントの色調はやや明るいものへと変更。また、ロゴはブラックに塗られたエアロパーツ部に配置されるようになったほか、左右の位置がセンターに改められたことで、ボディカラーに関わらずNISMO仕様であることがひと目で分かるようになりました。

リアバンパーの中央に位置するリアフォグランプのデザインは、日産自動車が参戦中であるフォーミュラEのマシンにインスパイアされたもの。点灯時には赤いドットパターンが浮かび上がるため、悪天候時にこのクルマを見分けるアイコンとなりそうです。

サスペンションは当然、NISMO専用品。コイルスプリングのバネ定数は約20%アップしているほか、ショックアブソーバーにもNISMO専用の減衰力チューニングが施されています。またリアのショックアブソーバーは、小さな衝撃にも対応しやすいツインチューブ式から、より速い減衰に対応するモノチューブ式へと変更されています。

またホイールとタイヤもNISMO専用品で、ホイールはオーラの6.5Jから7Jへとワイド化されています。ちなみにタイヤには、ミシュランのスポーツタイヤ「パイロットスポーツ4」がおごられています。

キャビンは、上質さを感じさせるオーラのクオリティを維持したまま、NISMOならではのスポーツマインドをかき立てる空間へと変貌を遂げています。

インパネ各部にはNISMOのロゴが配されるとともに、レッドとグレーのステッチも施されていて、ピリッとした刺激的な仕立てに。ハンドルも人工スエードのアルカンターラが巻かれていて、赤いセンターマークとあいまってドライバーを盛り上げます。

■3リッター自然吸気エンジン車に匹敵する強力なトルク

新しいNISMO仕様のアウトラインを押さえたところで、早速試乗へとまいりましょう。

オプションのレカロ社製シートにカラダを滑り込ませて赤いシートベルトを締めると、気分が一気に高揚します。そして、こちらも専用デザインとなるスタータースイッチを押すと、e-POWERのシステムが静かに目覚めます。この時、排気音が聞こえてこないことに少々物足りなさを覚えますが、アクセルペダルを踏み込むとそんな思いも消し飛びます。

レスポンスに優れる電気モーターで駆動するだけあって、その加速フィールは実に爽快。ゆっくりとアクセルペダルを踏み込めば静かにスタートしますし、少し大きめに踏み込めばエンジンも目覚め、エキゾーストノートが耳に届くという演出で気分を高めてくれます。

モーターのスペックは、最高出力が136馬力、最大トルクは30.6kgf-mとベースとなったオーラと変わりませんが、アクセルペダルを踏んだ時に感じる強力な加速感はオーラとは全く異なります。開発陣によると、起動時に選択されるデフォルトの「ECO」モードは、オーラの「SPORT」モードに相当するのだとか。「ECOの意味がないのでは?」なんて疑問も感じますが、加速の気持ち良さにそんな思いは霧消していきます。

この加速フィールこそ、実はオーラNISMOが最もこだわった部分だといいます。最高出力や最大トルクはオーラと同じということは、チューニングは”味つけ”の部分に限られるわけですが、モーターを動力とするe-POWERでは、この味つけの違いが大きな走り味の違いにつながるのだとか。

実際、走行モードをよりスポーティな「SPORT」モードや、最も加速が鋭い「NISMO」モードに切り替えると、オーラNISMOはアクセルペダルを踏み込んだ瞬間から圧倒的なダッシュ力を発揮します。

30.6kgf-mという最大トルクは、内燃機関に置き換えると3リッターの自然吸気エンジンに匹敵する数値であることを改めて実感させられました。

■チューニングe-POWERは走り味もイケる

モーター駆動車は、出だしの加速こそ鋭いものの、モーターの回転数が高まるに連れて加速力が弱まっていくというのが一般的でした。しかしオーラNISMOは、モーターの回転数が高まってもドライバーが感じる加速度が弱まらないよう、モーターの制御をチューニングしているのだとか。確かに加速感だけでなく、高速での”伸び”も感じられるスポーティカーらしい乗り味に仕上がっています。

この加速の”伸び”を体感する上で、重要な意味を持つのがエンジン音です。従来のe-POWERは、モーターによる瞬発力こそ定評があったものの、その際のエンジン音の変化が乏しく、まるで“発電機が回っている”かのように感じられるシーンが多々ありました。ところがオーラNISMOでは、加速の伸びとともにエンジン回転数も高まっていくようセッティングされているので、モーターの高回転域でも加速が続いていくかのような感覚を味わえます。

さらに圧巻だったのは、コーナーリング中にアクセルペダルを踏み込んだ際の挙動です。今回、小刻みにアクセルをオン/オフするスラローム走行を試してみましたが、オーラNISMOはアクセルを踏む量に合わせてレスポンス良く加速し、さらにエンジン音でも「ブォンブォン」と応えてくれます。アクセル開度に伴って高まっていくエンジン音はまるでガソリン車のようであり、アクセルペダルによって駆動力を微妙にコントロールできる点は、モーターで駆動するe-POWERならではの美点といえるでしょう。

「e-POWERはエンジン音の盛り上がりに欠ける分、スポーティカーの心臓部には不向き」と感じていた人も少なくないでしょう。しかしオーラNISMOは、そうした不満を見事に解消。モーター駆動ならではの圧倒的なレスポンスと鋭い加速に加え、高回転域でも“タレない”伸びの良さと刺激的な排気音を味わわせてくれます。NISMOチューニングが施されたe-POWERは、これからのスポーティカーにとって理想的なパワートレーンなのかもしれません。

<SPECIFICATIONS>
☆NISMO
ボディサイズ:L4125×W1735×H1505mm
車重:1270kg
駆動方式:FWD
エンジン:1198cc 直列3気筒 DOHC
エンジン最高出力:82馬力/6000回転
エンジン最大トルク:10.5kgf-m/4800回転
モーター最高出力:136馬力/3183〜8500回転
モーター最大トルク:30.6kgf-m/0〜3183回転
価格:286万9900円

>>日産「ノート オーラNISMO」

文/増谷茂樹

増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。

 

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