新しい「ノア」「ヴォクシー」はココがスゴい!トヨタ初が目白押しの先進の飛び道具が満載

■飛び道具的アイテムをトヨタ車として初めて採用

日本のミニバンマーケットにおいて最大のボリュームゾーンとなる“Mクラスハイト系ミニバン”。そのトップセラーであるトヨタのノアとヴォクシーが新型へと生まれ変わったのだが、その中身は知れば知るほど驚きが満載だ。「このクラスで?」とか「そんなことまで盛り込んだの?」と衝撃を受けるほどの進化を遂げている。

その代表例といえるのが、車外からのスマホ操作による駐車&車庫出し機能や、高速道路の渋滞時(40km/h以下)にハンドルから手を放して運転できる“半自動運転”ともいえる仕掛け。前者はレクサスの新型「NX」に採用例があるものの、トヨタブランドとしては採用第1号。後者は、周囲の状況確認のための高度なセンサーや高精度地図を使わない普及タイプとしては、まだレクサスにも採用例がない。

そういった先進機能は高級車から採用されるのが一般的で、トヨタのミニバンでいえば「アルファード」から、というのなら分かる。しかし、そんな飛び道具的アイテムをノアとヴォクシーにトヨタ初採用としてきたことに、まず驚かされるのだ。

しかし、大きく進化したのはそうした先進装備だけにとどまらない。新しいノアとヴォクシーはプラットフォームもパワートレーンも新設計されており、クルマとしての伸び代もかなり大きい。今回はまず、そこからチェックしていこう。

■プラットフォームと心臓部は全面的に刷新

車体の骨格となるプラットフォームは、“GA-C”と呼ばれる現行型「プリウス」でデビューしたものをミニバン用に最適化している。

従来のノアとヴォクシーは、デビュー時に新規プラットフォームを採用したものの、そのリアフロアの一部は先々代から継承されたものであり、全面刷新されるのは「ノアがデビューしてから初めて」という。これにより、走りのポテンシャルが大きく高まっているのはいうまでもない。今から試乗するのが楽しみだ。

走りといえば、パワートレーンも世代交代となった。2リッターのガソリンエンジンと1.8リッターエンジンにモーターをプラスしたハイブリッドというラインナップは従来モデルと変わらないが、どちらも最新フェーズのものが採用されている。

2リッターガソリンエンジンは“ダイナミックフォース”と呼ばれるトヨタの最新世代で、新しいノアとヴォクシーは“2ZR-FXE”型を搭載。組み合わされるCVTも“ダイレクトシフトCVT”と呼ばれる最新タイプに進化した。これらは現行の「RAV4」や「ハリアー」にも搭載されるもので、燃焼効率に優れることで燃費を高めつつ、アクセル操作に対する反応などドライバビリティに優れるのも特徴だ。

ガソリンエンジンも進化が著しいが、やはり新しいノアとヴォクシーで注目したいのはハイブリッドだろう。

1.8リッターエンジンを核としたハイブリッドシステムといえば、「プリウスと同じユニットね」と思うのが自然な反応だろう。しかし、そうではない。

開発者いわく「ユニット自体はバッテリー、パワーコントロールユニット、そしてモーターを含めたトランスアクスルが最新設計となり、“エンジン以外は全面刷新”といえる新世代タイプを用意した」という。

セルの置き方を変えたバッテリーは、従来比30%の小型化を図りつつ出力は15%向上(つまり密度が高い)、トランスアクスルは、15%の軽量化とダウンサイズを図りつつモーター出力は16%アップ、そしてパワーコントロールユニットは、29%も損失を低減した。こうして並ぶ数字を見ただけでも、この最新ユニットがハード的に格段の進化を遂げていることが理解できる。

現行プリウスの登場時に“第4世代”と呼ばれたトヨタのハイブリッドシステムは、ドライバビリティが大きく進化した現行の「ヤリス ハイブリッド」や同「アクア」で通称“4.5世代”へと進化した。しかし、新しいノアとヴォクシーで“第5世代”になったと聞けば、システム全体がいかに大きく進化しているかイメージできるのではないだろうか。

加速力はもちろん、アクセルペダルの踏み込みに対する反応といったドライバビリティも高まっている。

■ハイブリッド4WDのリアモーターは出力は5.6倍に!

また、ハイブリッド車といえば気になるのは燃費だが、それも従来モデルに対して約2割アップと、常識では考えられないほどの向上を果たしている。

これについて開発担当者は「カタログ上の数値だけを見れば、ヤリスなどのように大きく目立つものはありません。でも、燃費性能で不利なミニバンの燃費をここまで引き上げたということは、ユーザーの方はもちろん、社会に対しても大きな意味があると考えています」と胸を張る。

ちなみにハイブリッド車といえば、加速時に「キーン」という高い音が発生するのが特徴だ。これはインバーター音と呼ばれるものだが、新しいノアとヴォクシーはその音も目立たなくしたという。その方法が「周波数を倍くらいまで上げ、人の耳に聞こえないほどの音域にした」(開発者)というから面白いアイデアだ。動力性能やドライバビリティの進化と合わせ、こうした作動音も実際の試乗で確認するのが楽しみだ。

ちなみに新しいノアとヴォクシーは、従来モデルにはなかったハイブリッド4WDも設定されている。モーターとギヤを収める4WD用のリアトランクアクスルは最新設計のもので、現行プリウスから「カローラ クロス」まで幅広く使われている従来型ユニットに対し、モーター出力はなんと5.6倍! さらに作動領域も、従来タイプが上限70km/h(実際に効くのは30km/h程度まで)なのに対し、新ユニットは150km/hまで対応する。

開発者は従来ユニットとの違いを「プリウスなどの従来タイプは“燃費最重視の4WD”で、新しいノアとヴォクシーが搭載する新ユニットは“走りの4WD”」(開発者)だと解説する。

雪道で効果を発揮するのはもちろんだが、従来のモーター4WDではメリットになり得ていなかった、高速安定性(特に雨の日など悪条件時)やドライ路面での旋回性能など、幅広い領域で性能を発揮できる4WDに仕上がっていることに注目したい。ちなみに開発者によると「前輪駆動と4WDの燃費差が小さいのも美点」というから、燃費重視派も安心して欲しい。

■リーズナブルにハンズオフアシストを提供

新しいノアとヴォクシーにおける驚きといえば、先進安全装備の進化もものスゴい。

従来モデルは衝突被害軽減ブレーキこそ備わっていたが、検知できるのは車両と昼間の歩行者に限られていた。しかし、センサーの検知範囲を約2倍に拡大した新型は、夜間の歩行者や自転車、昼間の自動二輪も検知。さらに交差点での衝突回避支援、緊急時のハンドル操作支援、発進時などに左右から近づくクルマがあると音とブザーで注意喚起し、左右が見えにくい場所で効果を発揮する“フロントクロストラフィックアラート”など、トヨタ車としては最高水準となる先進安全装備を盛り込んでいる。

その上、全車速追従機能付きのACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)に加え、高速道路ではドライバーがウインカー操作と周囲の安全確認をするだけで車両が自らレーンチェンジする機能や、冒頭でも触れたように高速道路の渋滞時(40km/h以下)にハンドルから手を放して運転できる“ハンズオフアシスト”まで採用しているのだから驚くばかりだ。

中でもハンズオフアシストは、これまでBMWや日産「スカイライン」、スバルの「レヴォーグ」と「WRX」、ホンダ「レジェンド」、そしてトヨタの「ミライ」やレクサス「LS」など、高額モデルへの採用にとどまっていた。最も安いレヴォーグでも、装着車の価格は約350万円だ。

一方、新しいノアとヴォクシーの場合、オプション価格は9万3500円〜14万3000円と手頃。最も安いグレードなら装着しても310万円ほどで収まるのだから、敷居を一気に下げてくれたといえる。また、ノアとヴォクシーに採用されたということは、この先登場する新しいトヨタ車の多くにも搭載されることが期待できるため、新しいノアとヴォクシーがこの装備を広く普及させるきっかけとなったことは間違いない。

このほか新しいノアとヴォクシーは、後方から車両や自転車が近づいているとリアの電動スライドドアが開かない(開いている途中でも操作を停止する)機能を搭載。

同様のシーンでフロントのドアを開けようとする場合にも、アラームだけでなく音声で教えてくれるなど、乗員の安全性向上にも注力されている。

■強い意気込みで開発したトヨタで最も先進的なハイテク装備

しかし新しいノアとヴォクシーは、なぜこれほどまでにハイテク装備が満載されているのだろう?

開発責任者である水澗英紀氏によると、従来モデルは「先進機能が何も付いていない」というユーザーの不満が多かったという。確かに、従来モデルが誕生したタイミングは衝突被害軽減ブレーキといった先進安全装備などが普及する直前で、基本設計の古い従来モデルは、最後までACCさえ搭載することが叶わなかった。その結果、ライバルに対して後れをとってしまった感は否めない。

それだけに新型は「どんどん先へ行く、クラスを超える、という意気込みで開発した」(水間氏)という。その強い思いが、トヨタで最も先進的なハイテク装備の満載につながったようである。

新しいノアとヴォクシーには、クラス初どころかトヨタ初の技術や装備がたくさん詰まっている。それが「クラウンから」とか「ハリアーから」とか「アルファードから」ではなく、「ノアとヴォクシーから」というところに大きな意味がある。それにしても、新しいノアとヴォクシーがこれほどまでに先進機能を盛り込んでくるとは。筆者にとって全く予想外だった。

<SPECIFICATIONS>
☆ノア ハイブリッド S-Z E-Four(7人乗り)
ボディサイズ:L1695×W1730×H1925mm
車重:1710kg
駆動方式:E-Four(電気式4輪駆動方式)
エンジン:1797cc 直列4気筒 DOHC+モーター
トランスミッション:電気式無段変速機
エンジン最高出力:98馬力/5200回転
エンジン最大トルク:14.5kgf-m/3600回転
フロントモーター最高出力:95馬力
フロントモーター最大トルク:18.9kgf-m
リアモーター最高出力:41馬力
リアモーター最大トルク:8.6kgf-m
価格:389万円

<SPECIFICATIONS>
☆ノア S-G 2WD(8人乗り)
ボディサイズ:L1695×W1730×H1895mm
車重:1600kg
駆動方式:FWD
エンジン:1986cc 直列4気筒 DOHC
トランスミッション:CVT
最高出力:170馬力/6600回転
最大トルク:20.6kgf-m/4900回転
価格:304万円

<SPECIFICATIONS>
☆ヴォクシー ハイブリッド S-Z 2WD(7人乗り)
ボディサイズ:L1695×W1730×H1895mm
車重:1670kg
駆動方式:FWD
エンジン:1797cc 直列4気筒 DOHC+モーター
トランスミッション:電気式無段変速機
エンジン最高出力:98馬力/5200回転
エンジン最大トルク:14.5kgf-m/3600回転
モーター最高出力:95馬力
モーター最大トルク:18.9kgf-m
価格:374万円

>>トヨタ「ノア」
>>トヨタ「ヴォクシー」

文/工藤貴宏

工藤貴宏|自動車専門誌の編集部員として活動後、フリーランスの自動車ライターとして独立。使い勝手やバイヤーズガイドを軸とする新車の紹介・解説を得意とし、『&GP』を始め、幅広いWebメディアや雑誌に寄稿している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

 

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