【新Eクラス試乗】その実力は驚異的。最新のベンツは自動運転に本気!

今回ドライブしたE200 アバンギャルド スポーツのドアを開ければ、ダッシュボードには12.3インチのワイドディスプレイがふたつも! そのさまは、いかにも21世紀のメルセデス。

メルセデス・ベンツ Eクラス

もうPC画面みたいなもので、さまざまな意匠のメータ類、車両情報、エンターテインメント関係、そして地図などが自在に映し出されます。

メルセデス・ベンツ Eクラス

メルセデス・ベンツ Eクラス

試乗車は、大きな液晶画面にマットなウッドパネル(ブラックアッシュウッド)を組み合わせ、さらに、オプションのナッパレザーパッケージ(45万円)をおごって、“プレミアム”な室内を演出していました。“サイエンスとネイチャーの高次元な調和”といったところでしょうか。Eクラスは、標準仕様でレザー内装ですから、豪華なものです。パネル類には、より一般的なアルミパネルやウォールナットのウッドパネルも用意されます。

E200に搭載される2リッターターボは、贅沢な9速ATと組み合わされ、1700kgのボディを過不足なく運びます。

メルセデス・ベンツ Eクラス

4気筒モデルには“アジリティ コントロール サスペンション”が標準装備されます(V6モデルはエアサスペンション)。これは“セレクティブダンピングシステム”と呼ばれるバイパスチャンネルを備えたダンパーを持つサスペンションで、細かい凹凸はバイパスチャンネルで吸収し、ハードなコーナリング時などにはメインバルブが働き、しっかりロールを抑えてくれます。乗り心地と良好なハンドリングを両立させる仕組みです。

…といったトラディショナルなハードウェアの進化に加えて、新型Eクラスにはもっと大きな(!?)目玉があります。“自動運転”…というと、まだいい過ぎなので、“運転支援システム”の拡充が大きなトピックです。

今回、新しいEクラスを試乗して痛感したのが「いよいよクルマもPCみたいになってきたな…」ということ。PCやスマホと同様、これからもハードウェアは着実に良くなっていくでしょうが、それ以上に、ハードウェア(=クルマ)を動かすソフトウェアの進化が重要になってくるのです。

従来から、1台のクルマには無数のマイクロコンピュータが搭載され、ネットワークを結んで機能してきましたが、自動運転の実用化に向け、にわかに黒子からステージの中央でスポットライトを浴びる存在になった、そんな印象を受けました。

試乗に先立って行われた説明会では、メルセデスの目指す方向として、クルマが「自分で周囲を監視」、「交通状況を判断」して、「自立的に走る」ことが示されました。新型Eクラスに搭載された“ドライブパイロット”は、先行車に従って自車の速度を調整し、自動でステアリングを切り、渋滞時には、やはり自動でストップ&ゴーをこなします。さらに! 運転者がターンシグナルライト(ウインカー)を2秒以上点灯させると、周囲の安全を確かめてから、勝手に(!?)車線変更をして、そのまま走り続けるのです!!

メルセデス・ベンツ Eクラス

「Eクラスは自動運転に本気だ!」と感じさせる新しい装備として、“アクティブエマージェンシーストップアシスト”が挙げられます。これは、ドライバーがなんらかの理由で意識を失って運転操作を行わなくなった(行えなくなった)場合、自動的に車線を維持しながら、穏やかに減速、停止するシステムです。“安全”と“自動運転”は、必ずペアで語られるべき事柄ですから、自動運転ならではの危険性にひとつの解決策を提示した同システムは、自動運転の実現に向けた象徴的な新機能といえます。

もうひとつ、本国から来たメルセデスのエンジニアの説明を聞いて、個人的にショックを受けたのが、自動運転技術を活用した“カーシェアリング”のアイデア。直接Eクラスには関わらない将来的な構想に過ぎないのですが、こんな感じです。

個人でクルマを所有するのが合理的でない都市部においては、皆でクルマを共有→その場合、問題となるのが駐車場の位置→自宅から遠すぎると使いづらい→そこで、合図ひとつでシェアされているクルマが、自動運転の技術を活かして自動的に玄関前までやってくる、というもの。その上、限られた場所しか走らないコミューターとして使うのなら(一定の安全確保が現実的なので)完全な自動運転も夢ではない、と。

ビックリしました! メルセデス・ベンツといえば“20世紀の恋人”たるクルマを、名実ともに生み、育て、熟成させてきたメーカーです。19世紀末に、ベルタ・ベンツ(カール・ベンツの妻)が、マンハイムからプファルツまでのドライブを敢行してから21世紀の今日に至るまで、クルマといえば「個人(家族)が所有して」「自分で運転して」「好きなように走る」ことが当たり前。また、それがクルマの存在意義でもありました。

もし自動運転を活用したカーシェアシステムが実現し、普及したなら、これまでクルマと思っていたモノが、全く違う存在になるかもしれません。馬とクルマとの距離に劣らず、現在のクルマと近未来のクルマが違った存在になる可能性があります。なんだか大袈裟なハナシになって恐縮ですが、そんな感想を抱かされた新型Eクラスの説明会でした。

 ■ベンツの基幹らしい今後の熟成に期待

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