■荷室の大きな段差は思ったほど不便じゃない
ノマドをオーダーする際に気になっていたこと。それが荷室空間でした。
ホイールベースが延長されてボディが拡大したとはいえ、全長3890×全幅1645×全高1725mmというミニマムサイズのSUV。荷室は決して広くはありません。
▲荷室は後席使用時で奥行きが590mm。1〜2泊程度の旅行なら4人分の荷物を余裕で積めそうだ
▲これが後席格納時の段差。座面が床下に沈み込まないのでそれなりの高さがある
そのため後席を格納して荷物を積む機会が多いことが予想されたのですが、後席の座面と背もたれを厚くしたノマドは後席格納時に床面に10cmほどの段差ができてしまうのです。これが不便かどうかは使ってみないとわからない。スズキはディーラーオプションで段差を埋める(荷室の床面を高くする)ラゲッジボックスを用意しています。実際に使ってあまりにも不便だったらラゲッジボックスを導入しようと考えました。
▲後席に座った人は結構圧迫感がありそうだが、3人分のゴルフバッグを積めた
しかし今のところ、大きな不便は感じていません。ゴルフバッグも後席片側を格納すれば3セット積めます(奥行きはギリギリですが)。むしろラゲッジボックスを積むことで荷室のフロア高が高くなってしまい、特に重い荷物を積む際に苦労しそうです。テントやクーラーボックス、コンテナなどを積んでキャンプに行くとまた評価は変わってくると思いますが、まずは素の状態で使ってみて、自分が積みたい荷物が段差に干渉するようならラゲッジボックスの導入を考えても十分に間に合うはずです。
▲インパネのデザイン・レイアウトはジムニーと共通なので、ジムニー用の社外品をそのまま利用できる
ジムニーシリーズは軽自動車のジムニーと普通車のシエラでボディは基本的に共有されています。ノマドも全長を延長してその分室内長も広げられていますが、室内幅と室内高は軽のジムニーと同じ(だから定員は4名です)。インパネデザインやスイッチ・メーター類などの配置もジムニーと変わりません。そのため、ジムニーやシエラからの乗り換えでもまったく違和感がないのと同時に、すでに数多く販売されているジムニーに合わせて作られた社外パーツをそのまま使えます。
車内が狭いジムニーにはドリンクホルダー問題(運転席の後ろに配置されているので使いづらい)とスマホ問題(ちょうどいい置き場がない)が存在するため、さまざまなアフターパーツが販売されています。
▲APIOのドリンクホルダー
▲槌屋ヤックのスマホホルダー。どちらもスッキリしたデザインで使い勝手も良好
私はGoods Press Webの記事で複数を試した結果、ドリンクホルダーはAPIO、スマホホルダーは槌屋ヤックのものがベストという結論に至りました。ノマドにもこのドリンクホルダーとスマホホルダーを装着。スッキリしたデザインなのに便利に使えて気に入っています。
■ジムニーの特殊性が適度に抑えられて日常使いがかなり楽に
▲K15B型エンジンはパワーに余裕があるのと同時に自然な吹き上がりで扱いやすい
ノマドのエンジンはシエラと同じ1460ccのK15B型。最高出力はシエラより1kWだけ大きい75kWで、最大トルクはどちらも130N・mになります。私はMTのノマドを購入したためAT車には乗っていません。以前乗っていたジムニーもMTだったので、MT同士の比較になります。
ジムニーに乗っていた約1年半は、ジムニー以外にもう一台「普通のクルマ」が手元にありました。そのため仕事で出かける際は「普通のクルマ」を使うことが多く、ジムニーはどちらかというと趣味的要素の強いクルマとして楽しんでいました。理由はジムニーのMT車の特殊な走りにあります。
▲延長されたラダーフレーム。左の四角い部分はノマドで追加されたサイドフレームリーンフォース
言うまでもなくジムニーは、軽自動車でありながら屈強な悪路走破性を得るため、一般的なクルマとは違う設計がされています。有名なものではラダーフレーム構造に3リンクリジットアクスル式サスペンション、FRベースのパートタイム式4WDなどが挙げられますが、他にも1速:5.809、2速:3.433という強烈な変速比やボール・ナット式ステアリングなどがあります。
この変速比のために信号待ちからの発進では2速まで入れても20km/h出るか出ないかくらいしか前に進まず、常に素早いシフトアップが求められます。ボール・ナット式ステアリングはオフロードで路面の凹凸によるキックバックが少ないというメリットがあるものの、日常使いではどうしても遊びが大きくなり中立性に欠けるという特徴があります。しかもリジットアクスルならではのふらつきやすさもあります(JB23の頃に比べるとかなり改善されていると感じましたが)。そのため、高速道路で80km/hを超えてくるとふらつき感が顕著に現れます。だからいつも一番左の車線を80km/h程度で走っていました。
▲地味に便利なのが、ノマドのルームミラーにジムニーにはなかった防眩機能がついた
ノマドはシエラ同様に1.5Lエンジンを搭載。パワーに余裕がある分、変速比はジムニーより抑えめに設計されています。普通に変速していっても自然に周囲のクルマの流れに乗れるため、日常でのストレスはほとんど感じません。
ボール・ナットとリジットアクスルという機構はジムニー同様なものの、オーバーフェンダーを装着してトレッドが広げられ、ホイールベースも拡大されています。さらに増加した車重を受け止めるためにサスペンションチューニングもシエラとは変更されていて、これらがうまく作用し、高速走行時の安定感がジムニーよりも格段にアップしています。
とはいえ100km/h程度で高速道路を走っていると常に修正舵を当てる必要があるため、納車直後は運転を終えると身体の緊張を感じていたのですが、今は修正舵の当て感に慣れたのか、ロングドライブでもそれほど疲れを感じていません。
▲ジムニーに比べてMT操作が楽。今のところストレスを感じていないので、オフロードでの楽しさも味わいたい人にはMTをおすすめしたい
MTの操作も、ジムニーの時はそれなりにふかしてあげてから繋いでいましたが、ノマドはパワーがある分ジムニーよりも発進がかなり楽なので、日常使いでもMTでダルさを感じていません。通勤や買物などにも使う人に相談された場合、ジムニーなら「ATのほうが楽だと思うよ」と言いますが、ノマドは「MTでもそこまで大変じゃないよ」と話すと思います。
▲ジムニーが持つ非日常と、日常での使いやすさをほどよく両立したノマド
もちろんノマドは楽といっても、あくまでジムニーと比べた時の話。基本的にはオフロード走行に特化した設計なので、高速走行などはどちらかというと不得意分野になると思います。
もし家族でロングドライブを超快適に楽しめるものを探しているなら、クロスオーバータイプのコンパクトSUVを選ぶことをおすすめします。でもオフローダーとしての色を残しつつネガティブな部分が適度に抑えられているので、ジムニーシリーズならではの「非日常感」を気軽に味わいながら、日常でも便利に使うことができる。ノマドはジムニーシリーズの中でもっともバランスのいいモデルだと感じています。これは長い付き合いになりそうです。
<取材・文/高橋 満(ブリッジマン)>

高橋 満|求人誌、中古車雑誌の編集部を経て、1999年からフリーの編集者/ライターとして活動。自動車、音楽、アウトドアなどジャンルを問わず執筆。人物インタビューも得意としている。コンテンツ制作会社「ブリッジマン」の代表として、さまざまな企業のPRも担当。
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